2024年10月の衆院選で国民民主党が躍進。
自民党と公明党で過半数割れしたため、国民民主党がキャスティングボードを握るような状態に。
その国民民主党が掲げていた公約の一つである「年収の壁」の引き上げに注目が集まっています。
私たち庶民の手取りが増えることはありがたいことですが、批判が出ているのも事実。
そこで今回の記事では「年収の壁」引き上げの是非について解説します。
手取りを増やして欲しいと考えている方は参考にしてください。
国民民主党の公約「103万円の壁」の引き上げとは?
国民民主党は衆院選の公約で「令和の所得倍増計画」を掲げ「減税・社会保険料の軽減・生活費の引き下げ」で手取りを増やすとしています。
賃上げされても手取りが増える実感がなければ消費は活性化しません。
日本のGDPは個人消費が5割超。
個人消費が活性化すれば、日本経済も活性化します。
公約の減税部分に所得税減税として基礎控除等を103万円から178万円に拡大するとしています。
「103万円の壁」とは、所得税が課税される“ボーダーライン”のこと。
年収が基礎控除の48万円と給与所得控除の55万円の合計103万円を超えると、超えた額に所得税が課税されます。
178万円の根拠は、1995年からの最低賃金上昇率 1.73倍に基づくもの。
1995年から基礎控除等は103万円から引き上げられていません。
一方、最低賃金は1995年の全国平均611円から1.73倍の1055円に上昇。
最低賃金の上昇に合わせて基礎控除等を引き上げるというのが国民民主党の公約の1つです。
最低賃金を上げても「年収の壁」を引き上げないと働き控え発生
自民党は2020年代に最低賃金を1500円に引き上げるという公約を掲げていましたが、実現するには毎年7%超の賃金上昇が必要。
実現はかなり難しいでしょう。
賃上げは企業の業績も関連する事なので、国民の手取りを増やすのであれば控除を引き上げる方が手っ取り早い。
また、仮に最低賃金を1500円に引き上げられたとしても「年収の壁」を引き上げなければ、パート勤務の方などは働ける時間数が減ることに。
働き控えがひどくなってしまい、人手不足に逆行。
賃上しても「年収の壁」が低いと、働き控えで労働者の手取りは増えないし、企業側は人手不足が更に深刻化することになります。
社会保険の壁も引き上げるべき
103万円は「税金の壁」ですが、その先には「社会保険の壁」があります。
社会保険については、106万円と130万円に壁があります。
106万円の壁
まずは106万円の壁。
勤務時間や日数が一般社員の4分の3未満である短時間労働者(パート・アルバイト等)の場合、現在は下記のような条件で厚生年金・健康保険に加入する必要があります。
- 1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であること
- 1カ月当たりの賃金が88,000円以上であること
- 雇用期間の見込みが2ヶ月以上であること
- 学生でないこと
- 従業員数が常時50人超の事業所(特定適用事業所)で働いている
130万円の壁
次に130万円の壁。
上記以外の企業などで働いている場合に 国民健康保険や国民年金の保険料の支払いが発生する年収が130万円。
税金だけでなく、社会保険の壁も引き上げなければ、パート主婦(夫)層などでは働き控えが発生します。
国民民主党の公約には「社会保険の壁」については言及がありませんが、国民全体の手取りを増やすのであれば「社会保険の壁」も引き上げが必須。
特に106万円の壁を引き上げないと手取りの増え方が抑えられます。
例えば、東京都で月の賃金が88,000円の場合だと、厚生年金と健康保険(介護保険含む)で月に約13,000円も保険料が差し引かれ、年間では15.6万も手取りが減ることに。
国民民主党は公約は、税金や社会保険の壁を超えて働いている人の手取りを増やすことを目指しているので、一気に「税金の壁」と「社会保険の壁」の両方を引き上げるのは難しいでしょう。
しかし、「税金の壁」だけでも178万円に引き上げることができれば、学生バイトや103万円を超えて働いている正社員などにとっては減税になり、意義があります。
まずは30年間不動だった基礎控除などを178万円まで引き上げていく。
ぜひ、「税金の壁」引き上げ後に「社会保険の壁」の引き上げまで実現してほしいところです。
106万円の壁は撤廃される?
「税金の壁」の引き上げ内容の詳細が決まっていない中、厚生労働省が会社員に扶養されるパートら短時間労働者が厚生年金に加入する年収要件(106万円以上)を撤廃する方向で最終調整に入ったと報道されました。
一瞬、106万円の壁を引き上げるのかと勘違いしましたが、その全く逆。
勤務先の従業員数を51人以上とする企業規模の要件もなくし、週の労働時間が20時間以上あれば、年収を問わず社会保険への加入を必要とするとのこと。
最低賃金の引き上げに伴い、週20時間以上の労働時間があれば年収106万円を上回る地域が増えていて、厚労省は実態に合わせて撤廃すべきだと判断したとの報道。
(出典:東京新聞)
厚生労働省は来年の通常国会に関連法案提出を目指すそうで、要件の見直し全体で新たに200万人が社会保険に加入する見通し。
今回の報道は、国民民主党の公約に水を差すタイミングで悪意を感じます。
厚生労働省の官僚がこの改悪を本気で必要と考えているとしたら国民を豊かにするという大局観がないと言わざるを得ません。
官僚に大局観がないのは仕方ないとして、政治家である厚生労働大臣は持っているべき。
この一事を考えても自民党の国会議員は国民の方を向いて政治を行っていないことがよく分かります。
年収の壁引き上げのデメリットは?
年収の壁を引き上げることに対して批判も出ていますが、どのようなデメリットがあるのでしょうか?
7.6兆円の税収減
年収の壁を引き上げると、7.6兆円(うち4兆円が住民税)の税収減という報道が大々的にされました。
プライマリーバランス(PB)の黒字化も遠のくと批判されています。
ザイム真理教によるネガキャンがすごい。
この程度の税収減であれば、国債を発行すれば済む話。
財源としては当面、国債で補填すればいいでしょう。
また、PB黒字化という日本国民の貧困化を助長する目標は即刻撤回すべき。
国民民主党代表の玉木さんの発言にある通り、政治の役割は「国のふところ」を豊かにすることではなく、「国民のふところ」を豊かにすること。
PB黒字化は全く逆の発想で、「国のふところ」を豊かにして「国民のふところ」を寒くすることにつながります。
国民の手取りが増えて経済が回復すれば、税収も社会保険料も上がります。
また、経済が活性化すれば企業の収益も上がるので法人税収が上がることも期待できます。
金持ち優遇?
先述の通り、控除の引き上げで恩恵を受けるのはアルバイトやパート従業員だけではありません。
玉木さんのTwitterにもあるように、年収300万円で11.3万円、年収500万円で13.2万円、年収800万円で22.8万円の減税効果を生み、幅広い働き手が潤うことになります。
【拡散希望】
— 玉木雄一郎(国民民主党代表) (@tamakiyuichiro) October 22, 2024
国民民主党の公約である所得税の控除(基礎控除+給与所得控除)を103万円→178万円に引き上げる政策は、学生アルバイトやパートの皆さんだけに恩恵のある政策ではありません。… pic.twitter.com/6t1gamdZBJ
減税額だけ見ると高所得者ほど恩恵が大きく、金持ち優遇だと批判が出ています。
しかし、年収額に対する減税額の割合としては、下記の通り低所得者の方が高くなります。
- 年収200万円:減税額8.6万円=年収の4.3%
- 年収300万円:減税額11.3万円=年収の3.8%
- 年収500万円:減税額13.2万円=年収の2.6%
- 年収1000万円:減税額22.8万円=年収の2.3%
税金をとって補助金などでバラまくのは非効率
国(政府)が税金を国民から吸い上げ、それを補助金などでバラまくのは非効率なので止めるべきです。
まず、税金を徴収するのにコストがかかる。
また、補助金などでバラまくのにもコストがかかるし、そこで特定の業者などによる中抜きが生じることに。
つまり、今のシステムを続ける限り、多くの国民は税や社会保険料負担で疲弊する一方で特定の人達だけが豊かになる状態が継続します。
税金や社会保険料を必要以上に取らなければコストを削減しつつ、中抜きも防げる。
また、ザイム真理教の信者達は住民税非課税世帯など弱者に絞った支援をしたがりますが、効果は限定的。
現状の日本で必要なのは税金や社会保険料を取って配るのではなく、一律で減税して多くの国民のふところを豊かにすること。
弱者支援は必要ですが、それだけでは日本経済全体が活性化しないことは証明済です。
まとめ
2024年10月の衆院選で国民民主党が躍進した一方で、自公で過半数割れしました。
そのため、国民民主党の公約である「年収の壁」の引き上げが注目されています。
「年収の壁」を引き上げると税収が減ると批判が出ていますが、政治の役割は「国のふところ」を豊かにすることではなく、「国民のふところ」を豊かにすること。
国(政府)が税金や社会保険を国民から吸い上げ、それを補助金などでバラまく仕組みが継続する限り、庶民の生活が向上することはありません。
現状の日本で必要なのは税金や社会保険料を取って配るのではなく、一律で減税して多くの国民のふところを豊かにすること。
私たち国民が減税を支持する世論を形成することが必要となるでしょう。