先日、日経平均株価は4451円安と過去最大の下落幅を記録。
日経平均株価だけでなく、新NISAで人気の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の基準価額も大きく下落しました。
周りの人が始めたから自分も新NISAで投資を始めたという方には辛い経験だったでしょう。
最近では優良なインデックス型の投資信託が増えるなど、投資を始めやすい環境が広がっています。
しかし、投資は始めるよりも難しいのが続けること。
オルカンやS&P500に投資し始めたとしても、続かなければ利益は出せません。
運用を続けるためには今回のような株価下落を乗り越える必要があります。
そこで今回の記事では、「オルカンやS&P500はリスクが低く暴落しないのか?」について解説します。
新NISAでの資産運用に不安を感じている方は参考にしてください。
オルカンやS&P500はリスクが低くて暴落しない?
「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」への投資は初心者向きでリスクが低いと勘違いしている方も少なくないでしょう。
オルカンやS&P500などのインデックス型の投資信託も株式へ投資しているわけですから、リスクが低いわけはなく暴落する可能性もあります。
実際、2024年8月には米国株安と円高のダブルパンチでオルカンやS&P500の基準価額は急落しました。
下図の通り、オルカンは直近高値の基準価額27,282円(7月11日)から、22,688円(8月6日)へと4,594円(約17%)下落。
8月21日時点では24,587円と半値近く戻しました。
一方、S&P500は下図の通り、直近高値の基準価額32,813円(7月11日)から、27,091円(8月6日)へと5,722円(約17%)下落。
8月21日時点では29,382円と半値近く戻しました。
今回のような株価の暴落を正確に予想することは誰にもできません。
インデックス投資は投資期間が長期になるので、何度も株価暴落に遭遇することになるでしょう。
今回の暴落は新NISAをきっかけに投資を始めた方にとっては、資産額も積み上がっていなかったのでキズが浅かったケースが多いと思います。
しかし、投資期間が長くなれば資産も積み上がるので暴落時の影響は大きくなります。
利益を出すためには暴落に耐え乗り越える必要があります。
暴落が深く停滞が長引く可能性もある
今回の基準価額下落は20%にも満たず、短期間で下落の半値程度を回復しましたが、もっと大きく基準価額が下がることもあります。
また、基準価額の停滞が長引くこともあります。
実際、リーマンショック時に米国株式は2007年の高値から50%下落し、回復するまでに5年を要しました。
停滞が長引くことがあっても、「資本主義経済が続く限りはインデックス投資は長期でプラスになる」ということを信じて乗り越えるしかありません。
資本主義社会が続く限りは投資をすべき理由とは?
オルカンやS&P500への投資は初心者向きでリスクが低いと思っていたのに暴落があるのであれば、新NISAを止めたいと考えた方も少なくないでしょう。
しかし、資本主義社会が続く限り投資はすべきだと私は考えます。
その理由は、労働の対価である賃金は上がりにくい傾向があるから。
トマ・ピケティの著書『21世紀の資本』で「r > g」と表現されていますが、歴史的に見て資本の収益率(r)は経済成長率(g)を上回る傾向があります。
つまり、資本を持つ人々(資本家)が労働者よりも速いペースで富を増やすことができるということ。
「r > g」を簡潔に表現すると下記の通り。
- 資本家はますます富を蓄積し、富の集中が進む
- 労働者は相対的に貧しくなり、経済的不平等が拡大する
資本家が労働者よりも豊かになりやすい理由は株主資本主義という考え方に現れています。
最近、日本でも株主資本主義が盛んに謳われています。
株主資本主義とは、企業が株主(会社の所有者)の利益を最優先に考える経済モデルのこと。
労働者の給与や設備投資などをけ削ってでも利益を搾り出し、株主へ還元(配当や自社株買い)することが正義だとされています。
日本でも株主資本主義の傾向が強くなっているので、収入が給与のみだと豊かになれない世の中になってきています。
資本主義社会の負の側面|自己責任社会は格差が拡大して生き辛くなる
先述の通り、資本主義社会では投資をするのがベター。
しかし、誰もが投資で成功できるわけではありません。
性格が資産運用に向かないという方も一定数存在します。
国(政府)は「自分の老後は自分で面倒を見る」というような自己責任社会の方向にアクセルを強く踏んでいる状態。
国(政府)が国民に自己責任を強要すると貧富の格差が開きます。
このままでは、投資をしない人、投資に失敗した人は自己責任と切り捨てられる生きづらい世の中になってしまいます。
投資はより豊かになるためにすべきもので、最低限の老後資金を準備するためには投資が必須という社会は異常だと思いませんか。
資本主義社会は世の中を豊かにしましたが、格差拡大という負の側面が強くなり過ぎています。
先述のピケティは、資本主義社会の不平等を是正するために累進的な資本税の導入を提案しています。
これは、資本を多く持つ人々に対して高い税率を課すことで、富の再分配を図るもの。
格差が拡大した社会は勝ち組の人間にとっても生き辛いものになります。
経済が停滞する日本で必要な政策は、ピケティが提唱するような富の再分配です。
これまで以下の記事でも書いてきましたが、現状の日本に必要な政策は『資産所得倍増』ではなく『所得倍増』です!
投資をすることも重要ですが、賃金が上がり可処分所得が増える状態を作り出す政策を国(政府)に求めていく必要があります。
このまま資本主義の負の側面を無視して自己責任社会を突き進めれば、日本の衰退は止まらなくなるでしょう。
まとめ
オルカンやS&P500などのインデックス型の投資信託も株式へ投資しているわけですから、リスクが低いわけはなく暴落する可能性もあります。
株価の暴落を正確に予想することは誰にもできません。
株価の暴落後に停滞が長引く可能性もあります。
資本主義社会が続く限りは、労働者の給与は上がりにくい傾向があるので、給与収入のみに頼るのではなく暴落に耐え抜き投資を続けていくことが重要。
ただし、現在の資本主義は格差拡大という負の側面が強くなり過ぎています。
このまま資本主義の負の側面を無視して自己責任社会を突き進めれば、日本は一部の勝ち組にとっても生き辛い国になるでしょう。
投資をすることも重要ですが、現状の日本に必要な政策は『資産所得倍増』ではなく『所得倍増』だと国(政府)に求めていく必要があります。