新NISAでは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)が、たった一本で全世界の株式に分散投資できると人気があります。
SNSなどですすめられることが多いのでオルカンに投資している方も多いでしょう。
しかし、投資はしているけど、どのような投資信託なのか詳しく知らないという方も少なくないはず。
オルカンは初心者向けで安心という勘違いしている方もいるようです。
実際は株式型の投資信託なので元本保証はなく、元本割れすることもあり得ます。
よく理解せずに投資していると「こんなはずじゃなかった」と後悔する可能性もあります。
そこで今回は、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)に対するよくある3つの勘違いについて解説します。
オルカンはリスクが低くて初心者向きと考えて投資している方は参考にしてください。
オルカンとは?
まず簡単に「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)について解説します。
オルカンが連動している指数は、『MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)』です。
『MSCI All Country World Index(ACWI)』は、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が算出・公表する指数。
MSCI社が算出・公表している指数には『MSCIコクサイ・インデックス』などもあり、総称して「MSCI指数」と呼ばれています。
『MSCI ACWI』は下図のような先進国23ヵ国・新興国24ヵ国の株式で構成されていて、大型株及び中型株を含む指数です。
(出典:三菱UFJアセットマネジメント)
投資可能な全世界株式のカバー率は85%(2023年9月末時点)。
まさしく、当指数に連動するファンド(投資信託)を購入すれば、全世界の株式にまるっと投資できる状態。
なお、全世界といっても米国が6割以上を占めています。
オルカンの組入銘柄は?
オルカンの主な組入通貨と組入銘柄は下図の通り。
(出典:三菱UFJアセットマネジメント)
『MSCI ACWI』の組入銘柄数は約2900社で、上位10社は全て米国企業。
オルカンに投資することにより、今を時めくアップルやグーグルの株主になることができます。
指数の見直し頻度は?
MSCIは2月、5月、8月、11月の年4回、構成銘柄の定期見直しを実施。特に5月と11月は大規模な見直しが行われます。
定期的な見直しにより不振な企業は指数から外れ、成長が期待できる企業が組み入れられるような形で構成銘柄が入れ替わるので、保有銘柄の管理という煩わしさを感じることなくファンドを長期保有することができます。
なお、『MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)』に連動する投資信託には「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)以外に、「楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド」(楽天オルカン)や「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」(トレカン)などもあります。
次項以降でオルカンに対するよくある勘違いについて解説します。
勘違い①オルカンはリスクが低い?
オルカンは初心者向きでリスクが低いと勘違いしている方がいますが、オルカンのリスクは決して低くありません。
全世界の株式に投資しているので、全世界の経済状況や市場の変動に影響を受け、基準価額が大きく下落することもあります。
実際、今年(2024年)8月には大きく基準価額が下落しました。
よって、オルカンへの投資でも、リスクに対する理解が不可欠です。
投資においてリスクとは危険ではなく、価格の変動幅のこと。
不確実性などともいわれますが、株価が上がることもあれば、下がることもあるという意味。
ノーリスク・ノーリターンで、価格の変動幅があるからこそオルカンは年率5~7%程度のリターンが狙えるわけです。
なお、オルカンは世界に分散投資しているから米国株式のS&P500よりリスクが低いと思っている方がいますが、実はオルカンとS&P500のリスクは変わりません。
過去30年で比較すると、オルカンの連動する『MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)』のリスクは18%、S&P500のリスクは18.4%となっています。
勘違い②オルカンに為替リスクはない?
オルカンは日本円で購入することができるので、為替リスクがないと思っている方がいます。
実は、オルカン(全世界株式)への投資でも為替リスクは避けられません。
オルカンの資産の9割超が米ドルなどの外国通貨建てで運用されているため、為替相場の変動の影響をモロに受けます。
特に資産の6割超が米ドル建てなので、円高ドル安が進行すると米ドル建ての資産の価値が円ベースで減少することに。
実際、今年(2024年)8月の基準価額の下落時には、株価の下落だけでなく円高ドル安の影響も受けました。
よって、為替リスクは無視できないことを認識する必要があります。
勘違い③オルカンは暴落しない?
オルカンでも暴落の可能性は避けられません。
全世界に分散投資していても、グローバルな経済危機などが発生すれば、全世界の株式市場が下落する可能性もあります。
例えば、リーマンショックのような大規模な金融危機がその典型例。
実際、リーマンショック時にはオルカンの連動する『MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス』は50%以上下落しました。
よって、オルカンも大きく下落するリスクを排除できません。
また、どんなに積立投資をしても株式市場が大きく下落すれば元本割れが防げないケースも発生し得ます。
インデックス投資は、元本割れする時期があっても長期で右肩上がりを期待する投資法。
オルカンへの投資は、長期の視点を持つことが必要です。
まとめ
オルカンは初心者向けと紹介されることが多いですが、株式型の投資信託であることを認識する必要があります。
オルカン対するよくある勘違いは下記3つ。
- オルカンはリスクが低い
- オルカンに為替リスクはない
- オルカンは暴落しない
オルカンはリスクが低いわけではなく、為替リスクもあります。また、暴落する可能性もゼロではありません。
オルカンに対して勘違いした認識を持っていると、世界的に株式市場が暴落した時にオルカンを投げ売りしてしまうなど資産運用を継続するのが難しくなる可能性があります。
オルカンに対する正しい認識を持ち、長期で運用する視点を持つことが成功の鍵です。