年金制度改革関連法案が衆議院本会議で賛成多数で可決され、参院で審議に入りました。
当法案には、「遺族年金の改悪(5年で打ち切り)」「106万円の壁撤廃」「基礎年金の底上げ」と負担増と給付減という改正案が複数盛り込まれています。
その中で、在職老齢年金の見直しは年金を受け取りながら働く方にとってはありがたい改正。
しかし、この改正は国民のためではなく官僚のためのもの。
なぜ、在職老齢年金の見直しが官僚のためと言えるのでしょうか?
今回の記事では、森永卓郎さんの著書をもとに在職老齢年金見直しのカラクリを解説したいと思います。
『保身の経済学――われわれはどう行動すべきか? (森永卓郎シリーズ)』
「国民の負担を減らせ!」と激怒している方は参考にしてください。
在職老齢年金制度の見直しとは?
在職老齢年金制度とは、60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら働く場合、給与と老齢厚生年金の合計額が一定の基準額を超えると年金の一部が支給停止となる制度。
2024年度の基準額は50万円です。
具体的な支給停止額は下記の通り(現行)。
支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)×1/2
今回の改正案で基準額を50万から62万に引き上げます(2026年4月から)。
改正案での支給停止額は下記の通り。
支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-62万円)×1/2
下図の通り、月給45万円で厚生年金受給額が月10万円の場合、現行は年金が2.5万円支給停止になります。
しかし、基準額が62万円に引き上げられれば年金は減額されずに受け取れます。
(出典:厚生労働省)
在職老齢年金制度の見直しは誰のため?
厚生労働省の資料によると働く年金受給者308万人のうち年金を減額されているのは16%(2022年末)。
つまり、一部の高給取りしか年金減額の対象となっていないのが現状。
森永さんも著書の中で、在職老齢年金制度が高齢者の就業を阻害しているという明確な証拠はないとしています。
また、60代後半の平均月収は31万円で在職老齢年金の基準額が50万円でも大部分の人には影響がないと指摘。
では、在職老齢年金制度の見直しの目的はどこにあるのでしょうか?
マイルド官僚のマイルド天下りのための改正
森永さんによると、在職老齢年金の見直しはマイルド官僚のマイルド天下りのためとのこと。
私たちがイメージする天下り先で年収2000円超のスーパーキャリア官僚は公務員全体の0.1%未満。
天下りとはいえない処遇で公務の関連団体や利害関係のある地元企業に再就職している官僚はその数百倍はいるとのこと。
マイルド天下りするマイルド官僚の報酬は、役所の無言の圧力で民間労働者に比べて高い。
よって、現行の月収50万の壁にぶつかりやすい。
2031年までに公務員の定年年齢が段階的に65歳まで引き上げられます。
それに合わせて在職老齢年金の基準額を62万円に引き上げる。
つまり、基準額62万円への引き上げはマイルド官僚の老後を救うためだということです。
官僚の暴走を止められない三流政治家
年金制度改革関連法案には物価高で国民が苦しむ中、負担を増やし給付を減らす内容が盛り込まれています。
その中に官僚の老後が有利になるような改正を入れ込む。
その改正案が少数与党の衆院を簡単に通過。
国会は官僚の暴走さえも止められない三流政治家ばかりに支配されているということ。
与党の自民党・公明党だけでなく、立憲民主党も野党としての役割を果たせていません。
確かに基礎年金の底上げは必要。
しかし、その底上げの仕方に問題があるわけです。
厚生年金の積立金を流用し消費税増税につながるような自民党でさえも出すのを憚った案を立憲民主党が盛り込ませる始末。
国民にとっては、もはや茶番以外のなにものでもありません。
まとめ
与野党問わず三流政治家を国政から排除しなければ、私たち庶民の生活は苦しくなるばかり。
7月の参院選挙が国民が豊かな生活を取り戻す大切な機会となります。
ここで三流政治家を国政から排除する動きを見せなければ、ますます政治家の質は落ちていくでしょう。
それに合わせて私たち庶民の生活レベルも更に落ち込んでいくことは必至。
一人でも多くの国民が政治に関心を持ち、投票という権利を行使しなければ、日本人の困窮は止まりません。