性懲りも無く、財務省の御用新聞である日経が消費税を増税すべきという記事を掲載していました。
日本経済新聞社が都内で開いた岸田文雄首相と経済財政諮問会議の民間議員による座談会で、経団連の十倉会長は下記のように発言したそうです。
消費税は本来は「福祉税」のような側面があり、年金や介護、医療、子育てが使い道に入っている。全世代型社会保障をやろうと思えば、保険料の議論と同時に税制の議論も欠かせない。消費税はしっかりと議論されるべきだ。
(出典:日本経済新聞)
国民が物価高に苦しむ中で、消費税の引き上げを議論する神経を疑います。
結論から申し上げると、「消費税を増税すれば社会保障は充実する」は幻想です。
消費税率を5%に引き上げた1997年から日本経済は低迷を続け、「失われた30年」と言われています。
その30年間で社会保障は充実したのでしょうか?
今回は消費税を上げても社会保障は充実しないカラクリを解説します。
消費税の引き上げは「真っ平御免」という方は参考にしてください。
消費税は社会保障のために使われているのか?
消費税は社会保障の財源だから増税する事はあっても減税や廃止する事はできないという話を聞くことがありますが、本当でしょうか?
実は、消費税は社会保障のためだけに使われている財源とはいえません。
その理由は、消費税は社会保障のためだけに使われる目的税ではなく、所得税や法人税と同じ普通税(一般税)だから。
【目的税とは?】
目的税は、税金の分類(租税の使途による区分)の一つで、その使途が特に定められている税金の総称をいいます。これは、特定の経費に充てるために課される租税を指し、具体的には、電源開発促進税や都市計画税、国民健康保険税、水利地益税などが挙げられます。
一方で、目的税に対して、使途を特定せず、一般経費に充てるために課される租税(その使途が特に定められていない税金)を「普通税(一般税)」と言います。
消費税が社会保障の財源というのであれば、所得税や法人税も社会保障の財源です。
消費税だけを社会保障の財源と声高に叫ぶのはおかしな話。
もともと消費税は直間比率(税収に占める直接税と間接税の割合)の是正を目的に導入されました。
実際、消費税の引き上げ分は社会保障に回るのではなく、法人税減税分の穴埋めに使われているだけと指摘されています。
下記のデータを確認すると上記の指摘にも納得できます。
2022年度の税収は71.1兆円。
基幹三税の税収内訳は所得税が22.5兆円、法人税が14.9兆円、消費税が23.1兆円で法人税が最も少額。
更に下図の通り、消費税は導入時の3.3兆円から20兆円超に増えた一方、法人税は約30年前と比べると減っています。
(出典:財務省)
法人税の税収に占める割合は平成元年の34.6%から令和5年の20.9%に下がっています。
逆に消費税の占める割合は6%から32.4%に激増。
財務省のデータからも消費税が引き上げられた分、法人税が引き下げられてきたという主張が裏付けされます。
消費税増税で社会保障は充実したのか?
消費税は導入時の3%から「5%→8%→10%」に引き上げられてきましたが、その間に社会保障は充実したのでしょうか?
残念ながら下図の通り、消費税が増税されてきたにも関わらず、社会保障は削減されてきました。
(出典:全国商工新聞)
負担増なのに給付減という矛盾。民間企業であれば許されない暴挙を国(政府)は行っている状態。
更に2024年度から後期高齢者の保険料負担が引き上げられました。
また、下記のような改悪も議論されています。
- 国民年金保険料の65歳まで支払い延長
- 遺族年金の改悪
今後、更に消費税を上げても今までと同じように社会保障の削減が続いていくでしょう。
消費税を増税すると輸出企業は儲かる?
なぜ、経団連の十倉会長は消費税を増税したがるのでしょうか?
消費増税が法人税の減税とセットだった事もありますが、大企業は消費税の還付金を受け取れるカラクリもあります。
企業が消費税を納税する際、自社の売上時に受け取った消費税額(売上税額)から自社が仕入れなどで支払った消費税額を差し引いた分を納税します。
この仕組みを仕入税額控除といいます。
下図のように受け取った消費税が300円、支払った消費税がで100円であれば納税する消費税は差し引き200円。
(出典:freee)
輸出企業の場合、輸出の売り上げは消費税ゼロなので、仕入時に支払った消費税が還付される仕組み。
下図の通り、トヨタ自動車をはじめ日本を代表する輸出大企業10社に還付される額はなんと1兆2千億円余り(2020年度)。
トヨタなどの輸出大企業がある地域の税務署は、消費税の税収が赤字になっています。
(出典:全国商工団体連合会)
消費者や中小企業が消費税に苦しんでいる中、輸出企業は莫大な還付金を受け取っている。
更に円安による輸入品の値上げで消費者や中小企業は青色吐息ですが、輸出企業は莫大な為替差益を出している状態。
国内売り上げ分に関しても、中小企業と異なり大企業は消費税を転嫁しやすいので、消費税が増税されても全く問題ないのです。
2023年度末の企業の内部留保は過去最高の600兆円超。
ここに大企業の代弁者である経団連が消費税増税を主張する理由があります。
消費税は廃止一択
これだけ不公平な消費税は廃止一択です。
では、消費税を廃止するとどうなるのでしょうか?大変な事が起こるのでしょうか?
実は、消費税を廃止すると日本の景気が良くなります。
消費税は消費に対する罰金。モノやサービスを購入するごとに10%の罰金を取られているイメージ。
罰金(消費税)が課されれば、消費は抑制されます。
下図の通り消費は日本のGDPの約5割を占めます。
(出典:消費者庁)
消費税の廃止によって消費が盛り上がれば、日本のGDPは大きくなる。
GDPが大きくなれば所得税や法人税の税収も増えます。
次項で解説しますが、法人税を所得税のように累進化すれば消費税の廃止分を補える可能性もあるでしょう。
また、下記記事で解説しましたが消費税は雇用も不安定化させます。
消費税は最悪な税金で、日本弱体化装置といっても過言ではありません。
消費税を廃止すれば、賃金が上がるという形で雇用状況も改善するでしょう。
消費税廃止の財源は?|法人税の増税と国債発行
消費税を廃止するという話をすると、「財源はどこにあるのか?」と激怒する方がいます。
消費税を廃止する財源を税に求めるのであれば、法人税の増税と累進化が一つの選択肢。
法人税の増税と累進化により大企業が貯めこんだ内部留保を吐き出させて人件費の引き上げや設備投資に回させる意味でも法人税の引き上げが必要でしょう。
法人税を上げたら企業が海外に企業に出て行ってしまうという方がいますが、それも実際は違います。
内閣府が実施したアンケートによれば企業が海外に生産拠点を置く理由は「現地・進出先近隣国の需要が旺盛又は今後の拡大が見込まれる」が大きく、「現地の税制・融資等の優遇措置」との回答は極めて少数。
つまり、日本企業が海外に出る理由は、現地の需要拡大が見込まれるからが重要であり、日本の法人税が高いからではありません。
国債残高が増えると日本は財政破綻するのか?
なお、消費税廃止に法人税の増税は絶対条件ではありません。
財源は国債を発行すれば済む話です。
国債を発行し過ぎると日本は財政破綻するという方がいますが、日本が円建てで国債を発行している限り財政破綻(デフォルト)することはありません。
これは財務省のHPにも下記のように掲載されています。
『日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない』
国(政府)には通貨発行権があるわけですから、円建ての国債であれば日本円を刷って返済することが可能。よって、財政破綻(デフォルト)したくてもできません。
では、無尽蔵に国債を発行できるのかというと、それはできません。
国が供給能力(生産能力)を超えて財政出動を続ければ、需要過多で極端なインフレになってしまいます。
よって、債務残高ではなくインフレ率を目標に財政出動すべきです。
現状の日本であれば、3~4%程度のインフレ率になるまでは国債を発行して財政出動することが可能。
先述の通り、税収を増やしたかったら経済を成長させる必要があります。
税収を増やすために増税すれば景気が冷え込み税収が伸びない。
税収が伸びないからまた増税し、また景気が冷え込むという負のスパイラルを生みます。
実際、日本でバブル後の不景気が30年間も続いた理由は上記のような考えによる緊縮財政が大きな原因。
30年間も続いてきた負のスパイラルを断ち切らなければ、「失われた40年」が待っているでしょう。
国債発行による財政出動を経済活性化の呼び水にすれば、消費や設備投資を喚起する正のスパイラルが生まれます。
国債を発行し過ぎるとハイパーインフレになるという議論がありますが、無尽蔵に国債を発行しろといっているわけではありません。
経済が停滞している時は、国(政府)が国債を発行して財政出動すべきというだけ。
そもそも、国債の発行が消費税廃止分の23兆円程度増えても日本のような生産能力のある先進国がハイパーインフレになることはありません。
まとめ
消費税を増税しても社会保障は充実してきませんでした。
これまでの政策を変えずに消費税を引き上げれば、今までと同じ事を繰り返す事になります。
つまり、国民の負担率が引き上がり貧困化する。一方、社会保障は削減され続けるという地獄が待っています。
現状、日本の政治は一部の特権階級だけを豊かにする政策が行われています。
そのような政治から脱却する必要がありますが、特権階級だけが豊かになる政治を行う政治家を選んでいるのは我々国民。
実は、我々国民が自らを苦しめる政治家を選んでしまっているということ。
我々国民が政治に無関心のままだと残念ながら「失われた30年」が「失われた40年」になるのは確定的。
「今だけ・金だけ・自分だけ」の政治屋を極力排除して、政治を浄化しないと日本に未来はありません。
逆に国民の一定数が政治に関心を持ち正しい政策が行われるようになれば、日本経済を復活させることはできます。
今ならまだ間に合いますが、残された時間がどんどん少なくなっていることは間違いありません。