
食料品の消費税減税について議論が続いています。
高市首相は「0%」を悲願としていましたが、「1%」が結論となりそうな状況。
「物価高がキツいから、1%でもいいから早く減税して欲しい」そう考えている方も少なくないでしょう。
しかし、食料品のみの消費税減税は「1%」だろうが「0%」だろうが超愚策!
私たち庶民の生活を楽にするどころか、逆に苦しめる可能性があります。
今回の記事では、食料品のみの消費税減税が超愚策である理由について下記ポイントを中心に解説します。
- 食料品の値段は下がりにくい
- 食品販売会社に還付金が発生する
- 消費税増税につながる可能性がある
「食料品だけでもいいから減税して欲しい」と熱望している方は参考にしてください。
理由①:食料品の値段は下がりにくい!?
食料品の消費税を0%にしても食料品の値段がきっちり8%下がることはないでしょう。
実際、高市首相も国会で「減税分がそのまま価格に反映される保証はない」という趣旨の答弁をしています。
減税分価格が下がらない理由は多くの事業者が適正な利益を確保した上で、そこに消費税を上乗せできている状態ではないから。
食料品を販売する事業者の事例で解説します。
【理想の状態】
仕入:90円
粗利:10円
販売価格:108円(税込み)
上記事例の理想の状態は90円で仕入れたモノに10円の粗利(適正な利潤)を乗せて販売すること。
そこに消費税を8%上乗せすれば、納税額は108円の108分の8から仕入れ時に支払った消費税を差し引いた額となります。
しかし、実際には競合する他店との価格競争があるので、販売価格は98円(税込み)に引き下げざるを得ない状況も発生します。
その場合でも消費税の納税額は、98円の108分の8から仕入れの消費税を引いた額。
つまり、事業者は自らの利益を削ってでも消費税を支払う義務が発生します。
消費税は赤字でも課税される過酷な税金であり、最も滞納が多い税金です。
上記のような適正な利潤に消費税を上乗せできていない事業者は、食料品の消費税がゼロになっても価格を8%下げることは出来ません。
財務省も『消費税は、【事業者】ではなく【消費者】による負担を予定している税』としていて、実際は消費者が全額負担しているわけではないのが実情。
また、消費税は対価の一部であり預り金ではないという判決も確定しています。
「(前略)消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しないから、事業者が、当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を、消費者との関係で負うものではない」
(東京地裁平成2年3月26日判決)
財務省も消費税を「預り金」と断言せず、「預り金的な性格を持つ」と表現しています。
・飲食店にとっては実質増税になる可能性
食料品が減税分下がらなければ、飲食店にとっては実質増税になります。
その理由は消費税の仕組み(仕入税額控除)にあります。
減税前までは差し引けていた食材仕入れ時の消費税(8%)が差し引けなくなります。
飲食店が実質的に増税になる仕組みについては下記記事で詳細に解説しているので、ご参照ください。
さらに、食料品の消費税が減税され、飲食店での飲食には10%の消費税がかかるとなると、消費者は外食を控える傾向が強まるでしょう。
これにより、外食業界の売上が落ち込む可能性も指摘されています。
理由②:食品販売会社に還付金が発生する
消費税は社会保障に使われるどころか輸出企業に還付されていていることをご存じでしょうか。
輸出大企業が消費税の還付金を受け取れるカラクリは以下の通り。
企業が消費税を納税する際、自社の売上時に受け取った消費税額(売上税額)から自社が仕入れなどで支払った消費税額を差し引いた分を納税します。
この仕組みを仕入税額控除といいます。
下図のように受け取った消費税が300円、支払った消費税がで100円であれば納税する消費税は差し引き200円。

(出典:freee)
輸出企業の場合、海外での売り上げは消費税が受け取れないので仕入時に支払った消費税が還付される仕組み。
下図の通り、トヨタ自動車をはじめ日本を代表する輸出大企業10社に還付される額はなんと1兆2千億円余り(2020年度)。

トヨタなどの輸出大企業がある地域の税務署は、消費税の税収が赤字になっています。

(出典:全国商工団体連合会)
最新のデータでは、この輸出還付金は年間でなんと11.7兆円。
仮に食料品の消費税を0%や1%にすると、これと同じ仕組みが食品販売会社にも適用されることに。
スーパーやメーカーなどの食品販売会社は消費税を受け取れなくなるので、仕入れにかかった消費税を国から「還付金」として返金されるようになるのです。
結果として、「一般庶民から集めた税金を、一部の企業に配る」という異常な構図がさらに強化されることになります。
理由③:将来の消費税増税につながる可能性
もう一つ懸念されるのが、将来の消費税増税につながる可能性。
一度、食料品の消費税を0%や1%に引き下げると、その税率を再び8%へ戻すのは非常に難しいでしょう。
税率を元に戻せば「食料品が値上げされる」という印象を与えるため、多くの国民が反対すると考えられます。
さらに、食料品の税率引き下げによって還付金の恩恵を受ける食品関連企業も、税率を元に戻すことには反対する可能性が高い。
その結果、食料品の税率を下げたことで減った税収を、別の形で補おうという議論が出てくることは間違いありません。
例えば、「食料品の消費税は0%または1%のまま据え置く。その代わり、標準税率を10%から12%へ引き上げる」といった案。
もしこのような形になれば、食料品の価格は期待したほど下がらない。
一方で、家電や衣料品、日用品など食料品以外の買い物では、これまでより多くの消費税を支払うことになります。
結果として、家計全体の負担がさらに重くなることに。
また、税率区分が「食料品は0%または1%」「新聞は8%」「その他は12%」というように増えることになります。
その場合、複数税率に対応するためのインボイス制度も維持されることになり、企業のムダな事務負担は今後も続くことが懸念されます。
まとめ:最低でも5%への一律減税が必要

「食料品だけでも消費税がゼロになれば、少しは生活が楽になる」というのは幻想です。
食料品の値段は下がらず、中小の飲食店の倒産は増え、大企業だけが還付金で潤い、最終的には消費税の標準税率が増税される可能性がある。
これが「食料品の消費税ゼロ%」という愚策の正体です。
1%か0%かという目先の議論に惑わされてはいけません。
真に国民の生活を救い、日本経済を元気にするために必要なのは「消費税そのものの廃止」。
その一歩として最低でも実行すべきなのが、一律5%への減税とインボイスの廃止。
一般庶民を苦しめ、大企業を潤す税として全く役割を果たしていない消費税は日本経済を衰退化させている元凶そのものです。