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消費税は全額が社会保障に使われている?


物価高に苦しむ日本で消費税10%の支払いは厳しいと思っている人が多いはず。

 

消費税1989年(平成元年)に3%で導入され、1997年(平成9年)に5%2014年(平成26年)に8%2019年(令和元年)に10%まで引き上げられてきました。

 

社会保障の財源であれば増税やむなしと納得してきた人も多いでしょう?

 

先日も記者会見で石破首相が消費税減税について質問された際に以下のように答えています。

「税率の引き下げということは適当ではない。(消費税は)全額、社会保障に充てられている。これが減ったらどうするかも政府としては考えていかねばならない」

 

この発言を信じて疑わない人も多いですが、本当でしょうか?

 

結論から申し上げると、消費税は全額が社会保障に使われているとは言えません

 

全額が社会保障に使われていないのであれば「消費税を上げる必要はなかったのでは?」となる人も多いはず。

 

そこで今回の記事では、消費税は社会保障に全額使われているわけではないことについて解説したいと思います。

 

「消費税って必要?」と思っている方は参考にしてください。

 

 

消費税は社会保障のために使われていない?

消費税は社会保障の財源だから減税や廃止する事はできないと解説されることが多いですが、消費税は社会保障のためだけに使われている財源とはいえません

 

その理由は、消費税は社会保障のためだけに使われる目的税ではなく、所得税や法人税と同じ普通税(一般税)だから。

 

【目的税とは?】

目的税は、税金の分類(租税の使途による区分)の一つで、その使途が特に定められている税金の総称をいいます。これは、特定の経費に充てるために課される租税を指し、具体的には、電源開発促進税や都市計画税、国民健康保険税、水利地益税などが挙げられます。

 

一方で、目的税に対して、使途を特定せず、一般経費に充てるために課される租税(その使途が特に定められていない税金)を「普通税(一般税)」と言います。

(出典:https://www.ifinance.ne.jp/learn/tax/tax11.html)

 

消費税が社会保障の財源というのであれば、所得税や法人税も社会保障の財源です。

 

消費税だけを社会保障の財源と声高に叫ぶのはおかしな話。

 

しかし、財務省のサイトには消費税の説明に下記のような一文があります。

平成26年度以降、消費税の税収は、社会保障4経費(年金、介護、医療、子ども・子育て支援)に充てることになっています。

 

上記の説明を財務省が答弁で自ら否定する動画がありました。

くしぶち議員の各種事業の財源に関する質問に対して土田慎財務大臣政務官が「お金に色はない」「各種事業の支出について、何一つで財源を賄っているわけではない」と答弁。

 

その答弁に対してくしぶち議員は「消費税は社会保障には全額使われているとは言えないという風にも聞こえますね」と切り返し。

 

その後「まあいいです」と一番重要な部分をスルーしてしまっていますが、まさに財務省のウソが明らかになった瞬間です。

 

是非、動画の12分44秒からをご参照ください。

 

 

消費税は輸出企業に還付されている!?

消費税は社会保障に使われるどころか輸出企業に還付されています。

 

輸出大企業が消費税の還付金を受け取れるカラクリは以下の通り。

 

企業が消費税を納税する際、自社の売上時に受け取った消費税額(売上税額)から自社が仕入れなどで支払った消費税額を差し引いた分を納税します。

 

この仕組みを仕入税額控除といいます。

 

下図のように受け取った消費税が300円、支払った消費税がで100円であれば納税する消費税は差し引き200円。

(出典:freee)

 

輸出企業の場合、海外での売り上げは消費税が受け取れないので仕入時に支払った消費税が還付される仕組み。

 

下図の通り、トヨタ自動車をはじめ日本を代表する輸出大企業10社に還付される額はなんと1兆2千億円余り(2020年度)。

 

トヨタなどの輸出大企業がある地域の税務署は、消費税の税収が赤字になっています。

(出典:全国商工団体連合会

 

還付金の総額はなんと年間7兆5千億円程度

 

消費税収は23兆円程度なので3割以上が還付金に使われている計算。

 

消費者や中小企業が消費税の支払いに苦しんでいる中、輸出大企業は莫大な還付金を受け取っている

 

更に円安による輸入品の値上げで消費者や中小企業は青色吐息ですが、輸出企業は莫大な為替差益を出している状態。

 

更に国内売り上げ分に関しても、中小企業と異なり大企業は消費税を転嫁しやすいので、消費税が増税されても全く問題ありません。

 

大企業の代弁者である経団連が消費税増税(19%)を主張する理由がここにあります。

 

 

消費税は法人税減税の穴埋めに使われている!?

消費税の引き上げ分は社会保障に回るのではなく、法人税減税分の穴埋めに使われているだけとも指摘されています。

 

もともと消費税は直間比率(税収に占める直接税と間接税の割合)の是正を目的に導入されました。

 

実際、消費税を増税する一方で法人税の税率は引き下げられてきました。

(出典:財務省)

 

財務省の以下のデータを確認すると、間接税とされている消費税収が大きく増えていることが確認できます。

 

2022年度の税収は71.1兆円

 

基幹三税の税収内訳は所得税が22.5兆円法人税が14.9兆円消費税が23.1兆円法人税が最も少額

 

更に下図の通り、消費税は導入時の3.3兆円から20兆円超に増えた一方、法人税は約30年前と比べると減っています

(出典:財務省)

 

法人税の税収に占める割合は平成元年の34.6%から令和5年の20.9%に下がっています。

 

逆に消費税の占める割合は6%から32.4%に激増

 

財務省のデータからも消費税が引き上げられた分、法人税が引き下げられてきたという主張が裏付けされます。

 

逆進性(所得の低い人ほど負担が大きい傾向)の強い消費税が所得税や法人税よりも税収が多い

 

その結果が約30年も実質賃金が上がらずに庶民が貧困化する一方、大企業は内部留保を600兆円もため込む(2023年度末)状況を生み出しています。

 

 

まとめ:消費税は廃止一択

「消費税の全額が社会保障に使われている」は詭弁だということが理解できたでしょう。

 

消費税は金持ちをより金持ちにするために導入された税金で、税率を上げるほど格差が拡大します。

 

これだけ不公平な消費税は廃止一択です。

 

では、消費税を廃止するとどうなるのでしょうか?大変な事が起こるのでしょうか?

 

実は、消費税を廃止すると日本の景気が良くなります

 

消費税は消費に対する罰金。モノやサービスを購入するごとに10%の罰金を取られているイメージ。

 

罰金(消費税)が課されれば、消費は抑制されます。

 

下図の通り消費は日本のGDPの約5割を占めます

(出典:消費者庁)

 

消費税の廃止によって消費が盛り上がれば、日本のGDPは大きくなる。

 

GDPが大きくなれば所得税や法人税の税収も増えます

 

また、下記記事で解説しましたが消費税は雇用も不安定化させます。

 

消費税は最悪な税金で、日本弱体化装置といっても過言ではありません

www.fpinv7.com

 

消費税を廃止すれば、賃金が上がるという形で雇用状況も改善するでしょう。