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【金融所得課税30%へ増税】国民民主党に批判殺到|引き上げの目的は?


国民民主党金融所得課税30%案に批判が殺到しました。

 

悪性のインフレに苦しむ私たち一般庶民は、「増税」という言葉を聞くだけで反射的に批判したくなる気持ちは分かります。

 

しかし、感情的に反応せずに冷静になる必要があります。

 

短絡的な批判行動は私たち一般庶民にマイナスの形で返ってくる可能性があります。

 

本記事では、金融所得課税30%案とはどのような内容なのか? なぜ税率を引き上げるのか? そして、私たち一般庶民にどんな影響があるのか? について解説します。

 

「増税」はまっぴら御免という方は参考にしてください。

 

 

金融所得課税30%案とは?税率を引き上る理由は?

金融所得課税とは、株式の配当や売却益、投資信託の分配金、預金の利子などの金融商品から得られる所得に対して課される税金のこと。

 

現在、日本ではこれらの金融所得に対して分離課税で一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の税率が適用されています。

 

所得税は超過累進税率が採用されていて、給与などの所得は多くなるほど税率が高くなり、所得4000万円以上では最高税率45%を適用。

 

しかし、所得が増えるほど税負担の割合が軽くなる「1億円の壁と呼ばれる現象が問題視されています。

 

これは下図の通り、高所得者ほど所得全体に占める分離課税である金融所得の割合が高く、一律の税率(20.315%)が適用されるため結果的に税負担が軽減される状況を指します。

(出典:沖縄タイムス)

 

上記「1億円の壁」のような格差を生む状況を解消するため、国民民主党は昨年12月にとりまとめた「税制改革と財源についての考え方」の中で下記のような改革案を出しています。

 

5.行き過ぎた格差を是正する「金融所得課税改革」

行き過ぎた格差を是正し、格差の固定化を防止するため、金融所得課税の強化 を行うとともに、NISA、積立 NISA 等を拡大します。

(中略)

金融所得課税については分離課税を30%に上げ、総合課税と選択できるよう目指します。また、総合課税を目指す前に各所得も損益通算を認めます。 所得税の累進度の見直しなども検討し、行き過ぎた格差を是正します。

(出典:国民民主党「税制改革と財源についての考え方」)

 

上記を読む限り、金融所得課税30%の目的は「行き過ぎた格差を是正」することであり、国民全体への一律課税強化ということではありません

 

金融所得課税の引き上げは「「年収の壁」引き上げの財源ねん出のためでは?」といった間抜けな指摘をしている有識者もいますが、全く的外れ。

 

国民民主党の玉木さんもYouTube動画の中で「現役世代の資産形成は阻害しません」と発言しています。

 

個人的には、税の応能負担の原則から金融所得も他の所得と合算して総合課税にすべきだと思います。

 

 

金融所得課税30%の一般庶民への影響は?

仮に金融所得課税が30%に引き上げられた場合、どのような影響があるのでしょうか。

 

金融所得課税が30%へ引き上げられた場合に影響があるのは一部の富裕層に限定されます。

 

私たち一般庶民には、ほぼ影響がないといっていいでしょう。

 

その理由は、NISAiDeCoといった税制優遇制度があるため。

 

例えば、2024年から制度が刷新されたNISA制度では、生涯の非課税枠が1800万円あります。

 

また、iDeCoの拠出限度額を引き上げることも議論されています。

 

NISAiDeCoの範囲内で投資をする限りは、金融所得課税が引き上げられても影響は受けません

 

NISAの非課税枠1800万円とiDeCoの拠出限度額をフル活用し、更に課税口座で投資をできる人は富裕層くらいでしょう。

 

老後2000万円問題の際に「2000万円も準備できるか!」とブチ切れしていた人達からすると全く関係ない話。

 

ただし、NISA対象外である債券などへ直接投資を考えている場合、影響を被る可能性があります。

 

 

短絡的な批判は避けるべき

国民民主党の「金融所得課税30%」案に対しては、SNS上で「増税反対」などの声が多く上がっています。

 

しかし、税制改革の目的や背景を十分に理解せずに批判することは避けるべき。

 

国民民主党が昨年12月にとりまとめた「税制改革と財源についての考え方」を確認する限り、金融所得に対して一律増税する意図はありません

 

今回の一件の発端は、「年収の壁」引き上げで減税を主張する国民民主党へのネガキャンの可能性もあるでしょう。

 

「金融所得課税30%」だけを切り抜いて批判すれば、金融所得への一律増税だと勘違いして批判する人が増えます

 

インフルエンサーと呼ばれる人達の反応を見ても一次情報に当たらず、「金融所得課税30%」という部分のみに反応している人もいます。

 

悪性のインフレに苦しむ私たち一般庶民は、「増税」という言葉を見聞きすると反射的に批判したくなるのは間違いありません。

 

しかし、冷静になり、一次情報に当たる必要があります。

 

切り抜き部分だけをで判断することは避けるべき。

 

悪意のある切り抜きに煽られて的外れな批判をすると、結果的に自分達の首を絞めることになりかねません。

 

ネガキャンにより国民民主党の支持率が下がれば、世論の減税を支持する流れも弱まってしまう恐れもあります。

 

 

まとめ

国民民主党の金融所得課税30%案に批判が殺到しました。

 

金融所得への一律増税と勘違いしている人も多いですが、国民民主党の目的は「行き過ぎた格差」の是正。

 

税制改革の目的や背景を十分に理解せずに批判することは避けるべき。

 

切り抜かれた情報に煽られて的外れな批判をすると、結果的に自分達の首を絞めることになりかねません。

 

ただし、国民民主党にも問題があります。

 

「年収の壁」引き上げが議論されている時期にセンシティブな話題である金融所得課税の強化に触れる必要があったのでしょうか。

 

格差是税が目的だとしても増税の話は、「年収の壁」を引き上げて国民の手取りが増えてから議論すべき話題。

 

減税を主張する政治家達には、国民の手取りを増やすために慎重な発信を心掛けて欲しいと思います。