現役投資家FPが語る

20年以上の投資経験がある現役投資家FPが「人生100年時代」の資産運用や公的年金など「お金」の知恵について語ります

金融所得の医療保険料や窓口負担への反映で現役世代の手取りは増える?


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「株の配当金や売買益」などの金融所得を医療保険料や窓口負担に反映させるという議論が注目を集めています。

 

報道では“現役世代の負担軽減につながる”と説明されることが多く、健康保険料が下がると期待している人もいるかもしれません。

 

しかし、この仕組みが始まると高齢者だけでなく、現役世代まで負担が増える可能性が高いのが現実です。

 

今回の記事では、なぜ金融所得の反映が現役世代の手取り増につながらないのか、その理由について解説します。

 

「これ以上、国民の手取りを減らすな」と感じている方は、参考にしてください。

 

 

金融所得の医療保険料や窓口負担への反映で現役世代の負担は減る?

金融所得の医療保険料や窓口負担への反映は、現役世代の負担軽減が主目的と理解している方が多いでしょう。

 

確かに金融所得(配当金や売買益など)は、30代などの若年世代よりも高齢者に偏っているというでデータはあります。

 

しかし、金融所得の把握の主目的は確定申告有無による不公平の是正

 

現状、下図のように確定申告の有無で医療保険料や窓口負担に差が発生していることが問題視されています。

(出典:日本経済新聞)

 

実際、自民党と日本維新の会は、下記制度を医療費に金融所得を反映させる対象とする方針で一致したと報道されています。

  • 75歳以上が加入する後期高齢者医療制度
  • 74歳以下のうち自営業者らが入る国民健康保険

 

また、社会保障審議会医療保険部会では「現役世代についても金融所得を勘案すべきだ」という意見も挙がっているとのこと。

 

まず、75歳以上の後期高齢者から金融所得の把握を先行させるとのことで、当初は現役世代の負担が減る可能性はあるでしょう。

 

しかし、いずれは現役世代の金融所得も把握することとなり、結果的に全国民の負担が増える可能性があります。

 

現状は対象外となっているNISAについても、いずれ対象にするという議論が出ることも考えられます。

 

 

金融所得を医療保険料や窓口負担に反映すべきなのか?

金融所得確定申告をしなければ医療保険料に反映されず、同じ所得でも保険料に差が生じている。

 

これが不公平だとする指摘は、これまでも繰り返されてきました。

 

確かに確定申告の有無で負担に差が出るのは不公平。

 

であれば、確定申告した人の金融所得を医療費に反映させなければいいだけの話。

 

なぜ、国民負担が増える方にばかり合わせようとするのでしょうか。

 

そもそも、金融所得を得るためには、収入から所得税・住民税や社会保険料などを払った後のお金でリスクを取る必要があります。

 

その金融所得に所得税・住民税を課し、さらに社会保険料まで支払わせる。

 

二重に税金と社会保険料を徴収し、挙句の果てには医療費の窓口負担まで増やす

 

こんな暴挙を許していいのでしょうか。

 

 

国(政府)の失政を国民に押し付けるな!

高齢化が進む中で医療費が増え、現役世代の保険料負担が重くなっていることは事実。

 

こうした状況を受けて、「金融所得をより正確に把握して高齢者の負担を増やす」ことが議論されています。

 

現役世代の保険料負担が重くなっている要因の1つが少子化。

 

その少子化をここまで深刻にした背景には、30年超に渡り日本経済を停滞させた国(政府)の失政があります。

 

国(政府)の失政のツケを国民の金融所得にまで広げて支払わせようとするのは筋違い。

 

さらに、「公的年金だけでは老後資金が足りない」と投資を煽っておきながら、資産運用の結果生まれた金融所得にまで医療費負担を反映させようとするのは詐欺と言ってもいいレベル。

 

先述の通り、金融所得は税金や社会保険料などを払った後のお金をリスクを取って投資した結果得られるもの。

 

ここに更に税金を掛け、そのうえ保険料の算定に反映させるなど正気の沙汰ではありません。

 

このような国民負担が増える議論ばかりなので、国民は将来不安を感じて消費が低迷して経済が上向かないのです。

 

経済が低迷した結果、さらに少子化が進行する。

 

この「国民負担増 → 消費低迷 → 経済悪化 → 少子化の進行」という悪循環を断ち切るには、膨らんだ医療費を公費で負担する必要があります。

 

なお、際限なく膨張する医療費にも問題がないかは確認するべき。

 

削減できるムダがないのか、という検証は同時にすべきでしょう。

 

 

まとめ

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金融所得を医療保険料や窓口負担に反映させれば、現役世代の負担が軽くなると考えている人は少なくないでしょう。

 

実際、高齢者の負担を増やすべきだという意見が多いのも確か。

 

しかし、この仕組みを導入すれば、結果的に高齢者だけでなく現役世代の負担も増える可能性が高いのが現実です。

 

世代間の対立を煽る情報に流されてはいけません。

 

たしかに後期高齢者の負担を増やせば、短期的には現役世代の保険料が下がることもあり得ます。

 

しかし、負担が増えた高齢者が消費を抑えれば日本経済全体が弱まり、結局は現役世代の給与が伸びにくくなるという悪影響が出ます。

 

さらに、今の現役世代もいずれは高齢者になります。

 

将来、自分たちがより重い負担を背負わされる可能性もあるでしょう。

 

つまり、世代間で負担を押し付けあっても、日本全体の利益にはつながりません

 

短期的な「負担の押し付け合い」ではなく、日本全体が豊かになる政策を考えることが重要です。