個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)は、 節税効果がある制度だと理解している方が多いでしょう。
しかし、iDeCo(イデコ)で積み立てた資産を老齢給付金として受け取る際には非課税ではなく、課税の対象となります。
「iDeCo(イデコ)は受取の際も非課税ではないのか?」「課税の対象であれば、節税効果がないのではないか?」と思われるかもしれません。
実は、iDeCo(イデコ)の老齢給付金は、受け取り方によって課税額が大きく変わる可能性があります。
今回は、iDeCo(イデコ)の老齢給付金を一時金で受け取った場合の課税について、下記ポイントを解説します。
- iDeCo(イデコ)の受け取り時は課税の対象
- iDeCo(イデコ)を一時金で受け取った場合に課税される税金とは?
- iDeCo(イデコ)受給時の節税方法とは?
- iDeCo(イデコ)は出口戦略が重要
- iDeCo(イデコ)に節税効果はない!?受け取り時は税金がかかる?
- iDeCo(イデコ)の老齢給付金を一時金で受け取る場合に課税される税金とは?
- iDeCo(イデコ)の他に退職金や小規模企業共済を受け取る場合には要注意
- iDeCo(イデコ)の老齢給付金を受け取る際に税金(所得税・住民税)を最小額にする方法
- iDeCo(イデコ)は出口戦略が重要
- まとめ
iDeCo(イデコ)に節税効果はない!?受け取り時は税金がかかる?
iDeCo(イデコ)は掛金の全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税の負担を軽減でき、節税効果があります。
しかし、積み立てた資産を老齢給付金として受け取る際には非課税ではなく、課税の対象。
iDeCo(イデコ)の老齢給付金は、下記の受取方法を選択できます。
- 一時金
- 年金
- 一時金と年金の併用
一時金で受け取る場合も年金で受け取る場合も、どちらも課税の対象となります。
iDeCo(イデコ)の老齢給付金を一時金で受け取る場合に課税される税金とは?
iDeCo(イデコ)の老齢給付金を一時金で受け取る場合、受け取った一時金は退職金と同様に退職所得となり、所得税・住民税の課税対象となります。
ただし、退職所得には退職所得控除があり、受取額から下表の額を控除することができます。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円 × 勤続年数 ※80万円に満たない場合には、80万円 |
20年以上 | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年) |
※iDeCo(イデコ)は掛金の拠出期間を勤続年数とみなして計算
(参照:国税庁タックスアンサー「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」)
例)iDeCo(イデコ)の掛金拠出の年数が30年の場合
退職所得控除額
800万円 + 70万円 × (30年-20年) = 1,500万円
仮に30歳から30年間、iDeCo(イデコ)の掛け金を拠出し、60歳の時に一時金で積み立てた資産1,000万円を受け取る場合、受取額(1,000万円)が上記の退職所得控除額(1,500万円)を下回るため、非課税となります。
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iDeCo(イデコ)の他に退職金や小規模企業共済を受け取る場合には要注意
注意すべきなのが、iDeCo(イデコ)の他に下記のような一時金を受け取るケース。
- サラリーマンが会社から退職金を受け取る場合
- フリーランス(個人事業主)が小規模企業共済を受け取る場合
iDeCo(イデコ)の一時金と同時に、サラリーマンが会社から退職金を受け取る場合や、フリーランス(自営業者)が小規模企業共済を一括で受け取る場合には、退職所得控除がiDeCo(イデコ)と同枠で計算されます。
よって、下記の事例のように受取額が退職所得控除を上回る可能性があります。
退職金:1,500万円(30年間勤務)
イデコ:1,000万円(30年間拠出)
合計:2,500万円
上記ケースでは、iDeCo(イデコ)と退職金の受取額合計(2,500万円)が退職所得額(1,500万円)を上回るので、下記の金額が課税対象となります。
2,500万円 - 1,500万円 = 1,000万円
課税対象:500万円(1,000万円÷2)
退職所得は、退職所得控除を超えた額の1/2となる優遇措置はありますが、500万円が課税対象となり、税額は所得税と住民税を合わせて約100万円です。
上記は、退職金の場合ですが、個人事業主も小規模企業共済を一時金で受け取る場合には同様に注意が必要。
iDeCo(イデコ)の老齢給付金を受け取る際に税金(所得税・住民税)を最小額にする方法
上記の通り、iDeCo(イデコ)と同時に退職金や小規模企業共済を受け取ると、受取額が退職所得控除額を上回り、所得税・住民税の課税が発生する可能性があります。
よって、退職金や小規模企業共済とiDeCo(イデコ)は同時に受け取らずに、受け取る年をずらすのが得策。
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iDeCo(イデコ)と退職金や小規模企業共済の受け取りを5年間ずらす
最も課税額を少なくできる方法が、iDeCo(イデコ)の受取りから退職金や小規模企業共済を5年ずらして受け取る方法。
iDeCo(イデコ)を一時金で受給後に5年以上経過してから退職金を受給すると、iDeCo(イデコ)の拠出期間分と退職金の勤続年数分の退職所得控除がフルに使用可能。
例えば、退職金の支給が65歳という企業に勤めている場合、60歳(30年拠出)でiDeCo(イデコ)を受け取り、5年後の65歳(35年勤務)で退職金を受け取れば、それぞれの退職所得控除額をフルに使えます。
事例)60歳でイデコ受取
一時金:1,000万円
退職所得控除:1,500万円(30年拠出)
課税額対象額:0円
事例)65歳で退職金受取
退職金:1,500万円
退職所得控除:1,850万円(35年勤務)
課税対象額:0円
個人事業主についてもiDeCo(イデコ)を一時金で受け取ってから5年以上経過後に小規模企業共済を一括で受け取れば、それぞれの退職所得控除をフルに活用可能です。
なお、受給の順番は、iDeCo(イデコ)が先で、退職金や小規模企業共済を後に受け取ることがポイント。
受給の順番が逆になると、それぞれの退職所得控除をフルに使用するためには、iDeCo(イデコ)の受け取り後、退職金や小規模企業共済を受け取るまでに15年以上経過していることが条件となってしまいます。
iDeCo(イデコ)は出口戦略が重要
上記の通り、iDeCo(イデコ)は受け取り方によって課税される税金の額が大きく異なる可能性があるため、受給時には課税関係について注意する必要があります。
また、iDeCo(イデコ)で重要となるのが「出口戦略」。
iDeCo(イデコ)で積み立てている資産を受け取りまでにどのような資産配分にしておくかを考えておく必要があります。
例えば、掛金の全てを株式型の投資信託で積み立てている場合、受取の際にコロナショックのような大暴落が発生すると、受取額が大きく減ってしまします。
よって、iDeCo(イデコ)は受給時に向けて計画的に資産配分の変更(リアロケーション)を行うことが重要。
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「つみたてNISA」であれば、資産を取り崩す際に株式市場が大暴落していても、取り崩しを先延ばしにし、運用を継続することが可能。
しかし、iDeCo(イデコ)の場合は、上記のように受け取り方によって課税額が変わるので、受給の時期を先延ばしにできない可能性も。
仮にiDeCo(イデコ)を60歳で受け取ると決めるのであれば、60歳に向けて資産配分を元本確保型の定期預金や保険などにリアロケーションしておく方が無難でしょう。
まとめ
iDeCo(イデコ)の積み立てた資産を受け取る場合には、下記の点に注意が必要。
- 一時金、年金のどちらで受け取っても課税の対象
- 退職金や小規模企業共済と同時に受け取ると課税額が大きくなる可能性あり
- 受取時期に合わせての出口戦略が重要
なお、今回はiDeCo(イデコ)を一時金で受け取る場合について解説しましたが、あくまでも一例であり、他にも「年金」や「一時金と年金」の併用で受け取る方法もあります。
また、iDeCo(イデコ)を受け取る際には、税金のことだけでなく老後のライフプランや他の収入なども考慮しながら最適な受給方法を考えることが重要。
ただし、どのような方法で受け取るにしても、iDeCo(イデコ)受給時には課税関係に考慮する必要があり、「出口戦略」が必要となることは間違いありません。
なお、 iDeCo(イデコ)については、下記のような記事も書いていますので、参考にして頂ければと思います。