2022年4月から確定拠出年金の受取開始年齢が個人型(イデコ)、企業型とも『60歳~70歳まで』から『60歳~75歳まで』に広がりました。
iDeCo(イデコ)の老齢給付金の受け取りを75歳までずらせると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
逆にデメリットはないのでしょうか?
今回は、iDeCo(イデコ)の受け取り開始年齢を75歳までずらす場合のメリット・デメリットについて解説します。
- 1.個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)とは?
- 2.iDeCo(イデコ)の老齢給付金の受け取り方法とは?
- 3.iDeCo(イデコ)の受け取り開始年齢を75歳にずらすメリットとは?
- 4.iDeCo(イデコ)の受け取り開始年齢を75歳にずらすデメリットとは?
- まとめ
1.個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)とは?
まず、簡単にiDeCo(イデコ)について解説します。
個人型確定拠出金iDeCo(イデコ)とは、確定拠出年金法に基づいて運用されている私的年金制度。
公的年金(国民年金・厚生年金)の上乗せとして活用できます。
掛け金の拠出時は掛け金全額が所得控除の対象となり、運用時の運用益は非課税となるなどの税制上の優遇措置があり、活用するメリットが多い制度。
上記のようなメリットがある一方で、運用に関しては元本保証ではありませんので、元本割れする可能性がある点には注意が必要です。
確定拠出年金iDeCo(イデコ)のメリットやデメリットなどについては、下記記事で解説していますので、ご参照ください。
2.iDeCo(イデコ)の老齢給付金の受け取り方法とは?
現在、iDeCo(イデコ)の老齢給付金の受け取りは原則、60歳からとなっています。
2022年3月までは受給開始時期が60歳~70歳まででしたが、60歳~75歳の間の好きなタイミングで受け取ることが可能になりました。
ただし、60歳時点で加入から10年が経過していない場合には、通算加入者等期間に応じて下図の通り、受取開始年齢が61歳以降となってしまいます。
なお、通算加入者等期間とは、加入者または加入者であった方が60歳に達した時点で、①企業型確定拠出年金加入者期間、②企業型確定拠出年金運用指図者期間、③個人型確定拠出年金加入者期間、④個人型確定拠出年金運用指図者期間の各期間を合計したものです。
(出典:みずほ銀行)
また、2022年5月から掛け金についても60歳までのところを65歳まで拠出可能となっています。
60歳以上で拠出可能となるのは、国民年金の第2号被保険者又は国民年金の任意加入被保険者である場合です。
なお、掛け金の拠出ができる期間が終わってから老齢給付金を受け取る75歳までの間は新たに掛け金を拠出することはできません。
例えば、75歳で老齢給付を受け取る予定の場合、65歳で掛け金の拠出はできなくなりますので、老齢給付金を受け取る75歳までの10年間は運用のみの運用指図者となります。
老齢給付金の受け取り方は「一時金」か「年金」を選択できる
老齢給付金の受け取り方については「一時金」か「年金」かを選択できます。「一時金と年金の併用」を選択できる金融機関もあります。
公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)も75歳まで繰り下げ可能に
実は、公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)についても、受取開始を75歳まで繰り下げ可能となりました。
公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)の受取開始年齢は、原則、65歳からですが、以前は70歳まで受給開始年齢を繰り下げることが可能でした。
公的年金は繰り下げることにより年金額が年間7%上乗せされて、65歳から70歳まで繰り下げると65歳から公的年金を受け取る場合に比べて42%も年金額が多くなります。
現在は、70歳から更に75歳までの繰り下げを選択できるようになり、75歳まで繰り下げると65歳から公的年金を受け取る場合に比べて最大84%も年金額が増えます。
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3.iDeCo(イデコ)の受け取り開始年齢を75歳にずらすメリットとは?
さて、iDeCo(イデコ)の老齢給付金の受け取りを75歳にずらすとどのようなメリットがあるのでしょうか?
非課税で運用できる期間が延びる
実は、iDeCo(イデコ)の場合、老齢給付金の受け取りを75歳まで繰り下げても公的年金のように年金額が上乗せされるようなメリットはありません。
では、どのようなメリットがあるのかというと、老齢給付金の受け取り開始年齢を後ろにずらすほど、非課税で運用できる期間が延びるというメリットがあります。
例えば、1,000万円を年利3%で複利運用できれば、5年間で運用益は約160万円。
運用益には通常、20.315%の税金がかかるので非課税で運用できれば、約30万円の節税となります。
老齢給付金の受け取り後すぐに亡くなると大損?
公的年金は繰り下げ後、年金を受け取り始めてすぐに亡くなってしまった場合、繰り下げなかった場合と比べて受け取る年金額が大きく減ることになります。
しかし、iDeCo(イデコ)の場合、年金を受け取り始めてすぐに死亡した場合には遺族に死亡一時金が支払われるので、ムダにはなりません。
公的年金は世代間扶養で現役世代の保険料から年金が支払われる仕組みですが、iDeCo(イデコ)は完全に加入者ごとに資産が管理・保全されている。
よって、積み立てた資産を受け取らずに死亡した場合には加入者の遺族に死亡一時金として積立金が支払われます。
4.iDeCo(イデコ)の受け取り開始年齢を75歳にずらすデメリットとは?
上記メリット部分の運用シミュレーションはあくまでも捕らぬ狸の皮算用。
考えていたように運用が上手くいかないケースもあり得ます。
最悪の場合、65歳時点での資産よりも75歳時点での資産の方が少なくなってしまっている可能性もあります。
掛け金を拠出しなくても手数料を取られる
iDeCo(イデコ)は、掛け金を拠出して運用している加入者から運用だけを行っている運用指図者になっても手数料を取られます。
つまり、65歳で掛け金の拠出ができなくなり、運用のみとなる75歳までの10年間も毎月手数料が資産から差し引かれることになります。
特に金融機関の手数料が高い場合には、注意が必要。
運用利回りが低い商品で運用をする場合などには、手数料の方が運用益を上回る可能性もあるでしょう。
例えば、金融機関の手数料が無料のSBI証券などは運用指図者の手数料は毎月66円ですが、手数料が高い金融機関の中には運用指図者の手数料が毎月484円という場合もあります。
運用益が月484円を上回らなければ、資産がどんどん減っていくことになってしまいます。
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まとめ
「人生100年時代」と言われているので、今後は70歳を過ぎでもバリバリ働いている人も増えることが予想されます。
そのような方はiDeCo(イデコ)の受け取りを75歳までずらして、運用を続ける方がメリットになる可能性があります。
ただし、投資信託で運用すれば、元本保証ではないので、掛け金の拠出を終了した時点から受け取りまでの間に資産が減ってしまうケースもあり得ます。
また、運用のみの運用指図者でも手数料を取られるので、リターンが低い定期預金などの元本保証型商品などで運用した場合、手数料分だけ資産が減ることも起こり得ますので、注意が必要。
iDeCo(イデコ)の老齢給付金は受け取る年齢を予め決めておく必要はないので、老齢給付金を受け取れる年齢が近づいた時に経済情勢や税制面などの状況を判断しながら、受け取る年齢や受け取り方法(一時金・年金)を決めるといいでしょう。