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日産の業績見通し大幅下方修正から考える高配当株投資のリスクとは?


11月12日に日産自動車(7201)が業績見通しを大幅に下方修正しました。

日産自動車は高配当銘柄として人気の高い銘柄ですが、業績低迷により、今期の配当額は未定となってしまいました。

 

今回の日産の件で、改めて配当金を狙った高配当株投資のリスクを痛感しました。私も配当金というインカムゲインを狙った投資をしているので、今回の件を教訓にしたいと思い、記事にしました。

 

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1.日産自動車の2020年3月期決算予想|連結純利益が前期比66%減

日産自動車(7201)は、2020年3月期の連結純利益が前期比66%減の1100億円になる見通しだと発表しました。従来予想(47%減の1700億円)を下回り、10年3月期(423億円)以来、10年ぶりの低水準になります。

 

業績悪化の原因は、米国向け販売が低迷している上、外国為替市場で想定よりもドルやユーロに対し円高が進んだためです。また、次世代技術に向けた開発費の増加なども重荷となっています。

 

配当についても、2019年の中間配当を1株あたり10円とし、従来40円としていた今期の年間配当予想を取り下げました。

 

Twitter上では、高配当銘柄である日産自動車の業績見通し大幅下方修正を受け、下記のような反応がありました。

 

日産自動車の配当金推移

高配当銘柄として人気のある日産ですが、どの程度の配当金が出ているのか調べてみました。日産自動車の2014年度以降の配当金推移は下表の通りです。 

年度 中間配当金 期末配当金 合計
2014年 16.5円 16.5円 33円
2015年 21円 21円 42円
2016年 24円 24円 48円
2017年 26.5円 26.5円 53円
2018年 28.5円 28.5円 57円
2019年 10円 未定 未定

 

日産自動車の配当実績と見通し

(出典:日産自動車

 

昨年12月に株価が下がったことで、配当利回りが一時6%を超えることもありましたが、今後は配当利回りが急落する可能性があります。

2019年期末の配当金も10円で今期の配当金合計が20円だと仮定して、株価が682円(11月15日の終値)だとすると、配当利回りは2.9%まで急落することになります。

 

日産自動車の株価推移

配当金だけでなく、株価も下落しています。2018年11月までは1,000円台だった株価も、1年後の2019年11月15日の終値は682円と、700円を割り込んでいます。

日産自動車(7201)の株価

(出典:日産自動車[7201] : チャート : 日経会社情報DIGITAL : 日経電子版

2018年11月にカルロス・ゴーン元会長が逮捕されるというゴーンショックもありましたし、業績の低迷も株価下落の原因です。

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2.高配当株投資や株主優待を狙った投資のリスクとは?

高配当株投資や株主優待狙いの投資は、メリットばかりが強調されていて、デメリットが見逃され、リスクが認識されていないように感じます。実際には、下記のようなリスクがあります。

 

配当利回りが高い本当の理由とは?

高配当銘柄に投資する際には、配当利回りが高い理由を確認する必要があります。

 

配当利回りが高い理由は、何らかの理由で株価が下がっているからかもしれません。実際、今回の日産の例で考えると、業績が下がっていることで、株価が下がり、配当利回りが上がりました。

例えば、株価1,000円で配当金が57円だとすると、配当利回りは5.7%(57円÷1,000円×100)ですが、株価が900円に下がると、6.3%(57円÷900円×100)に上がります。

 

企業が開示している今期の1株当たり配当予想が同じでも、株価が下がれば、見かけ上は配当利回りが上がることになります。数字のマジックといっていいでしょう。

数字のマジックによる配当利回りの高さだけを見て投資をしてしまうと、大きな損失を被る可能性があります。

 

配当金や株主優待は保証されていない

今回の日産自動車の事例からも分かりますが、配当金や株主優待は、保証されているものではないということです。

株式を買う時の配当金や株主優待は、その時点での配当金や株主優待であり、その後の業績次第では、今回の日産のように配当金や優待内容が引き下げになる可能性があります。

 

最悪、配当が無くなる無配に転落という可能性もあり得ます。そうなれば、株価も下落し、ダブルパンチを食らうことになります。

  

業績悪化などによる株価の下落

高配当株への投資でも、今回の日産のように業績の悪化があれば、受け取る配当金では取り返せないくらいの株価下落があり得ます。

 

例えば、昨年のゴーンショック前に日産の株式を1,000円で買い付け、現在まで保有していたとしたら、株価の下落による含み益は、318円(1,000円-682円)です。 

一方、受け取った配当金は、2018年期末の28.5円です。その差、289.5円です。ここに、2019年の中間配当金10円を足してもー279.5円です(税金を考慮せず)。

100株で購入していれば、含み損は27,950円、1,000株購入してれば、含み損は279,500円です。

 

含み損を配当金で取り戻そうと保有し続ければ、更に株価が下落し、含み損を増やしてしまうという悪循環に陥る可能性もあります。 

また、2010年のJAL(日本航空)のように倒産という事態が発生する可能性もゼロではありません。

 

高配当株投資にも上記のようなリスクがあることを認識する必要があります。 

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3.高配当株投資や株主優待狙いでも常に業績などのチェックが必要

高配当株投資や株主優待狙いの投資でも、リスクが低いわけではないので、常に株式を保有する企業の業績などをチェックする必要があります。

 

実は、私も配当金狙いで日産自動車の株式を所有していました。しかし、ゴーンショックの前に売り抜けることができました。 

2015年頃にNISA枠で200株ほど購入したのですが、2017年に起きた完成検査不正問題の際に売却しました。

 

売却した理由は、完成検査不正問題が出た際の日産自動車の対応です。

完成検査不正問題では同時期にSUBARU(7270)でも同様の問題が出ました。その時の両社の対応が私の日産不信につながりました。

 

完成検査不正問題が報道された際にSUBARUはCMを自粛しましたが、日産は報道前と何ら変わらずCMを流し続けました。

一消費者として、日産のCMを不快に感じた私は、どこか日産は感覚が狂っているのではないかと考え、含み益のある間に株式を売ることを決断しました。

その後、ゴーンショックも発生し、結果的に私の決断は間違ってはいませんでした。

 

日産自動車の株式を売却後、CM自粛という対応に好感を持ったのと、高配当銘柄でもあるという理由で、SUBARU(7270)の株式を購入しました。

こちらの決断は現在までのところ誤りで、約5万円ほどの含み損状態です・・・。

 

今回の日産自動車の事例からも分かりますが、保有している高配当銘柄の業績や企業動向は常に追いかけ続ける必要があります配当金株主優待といったインカムゲインを狙った投資だからといって、株式購入後にほったらかしでいいというわけではありません

 

仮に、不祥事の発生や業績の大幅下落が考えられるのでれば、手放すなどの対応を取らないと、大きな損失を被ってしまう可能性があります。

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まとめ

配当金や株主優待などのインカムゲインを狙った投資が悪いわけではありません。しかし、配当金や優待で受け取った利益を上回る損失を被る可能性があることを認識する必要があります。

 

配当金狙いや優待狙いの投資は、リスクが低いようなイメージがありますが、配当金や株主優待が保証されているわけでもなく、株価も下がる可能性が低いわけではないので、その点を十分認識し、常に業績などを確認しておく必要があります。