新NISA制度の開始をきっかけに、つみたて投資枠を活用してインデックス投資を始めた方も少なくないでしょう。
新NISAで運用を開始して1年以内に大きな下落を経験し、びっくりしている方が多いかもしれません。
アメリカの景気後退を契機に今後も世界の株式市場は弱気相場が続く可能性もあります。
インデックス投資家は、弱気相場の時はどのように対処したらいいのでしょうか?
今回は、不安定な相場の際にインデックス投資家が気を付けるべき下記ポイントについてまとめました。
- 周りの声に左右されない
- 弱気相場の際に絶対にやってはいけない2つのこと
- 相場下落時に追加で資金を投入する
インデックス投資とは?
まず初めにインデックス投資について簡単に解説しておきたいと思います。
私はインデックス投資を「国際分散投資したインデックスファンド(投資信託)の積み立て投資」と定義しています。
つまり、インデックス投資は、長期・分散・積立という投資の基本を押さえた手法。
インデックスファンドとは?
インデックスファンドとは、日経平均株価のような株価指数などのインデックス(指標)と同じ値動きをするような運用を目指す投資信託のことをいいます。
インデックス(指数)には、日経平均以外にもS&P500やオールカントリー(全世界指数)などがあり、インデックスファンドは指数全体に分散投資しているイメージ。
なお、インデックスファンドは目標とする指数に連動するように機械的に銘柄を組み入れるので、ファンドマネージャーが銘柄を選択するアクティブファンドに比べて各種の手数料が安くなるというメリットがあります。
インデックス投資のメリット
インデックス投資の最大のメリットは、圧倒的に手間がかからないこと。
インデックス投資の基本は、ファンド(投資信託)を選んで、そのファンドを定期的に一定額購入し、長期保有するだけ。
個別の銘柄選択は不要、売買のタイミングを図る必要もないという手法です。
正に「投資が仕事や趣味でもない一般人が、金融のプロに騙されることなく簡単に資産が作れる投資法」といえるでしょう。
インデックス投資のデメリット
インデックス投資のデメリットは退屈で、資産形成に時間がかかる点です。
インデックス投資による資産形成には、20年や30年といった期間が必要。
積立でコツコツ買って行くので、個別株投資の様に短期間で資産が何倍にもなるということは起こりません。
周りの声に左右されない
上記のインデックス投資のメリット・デメリットを踏まえたうえで、弱気相場の時にどのように対処すべきかについて解説したいと思います。
弱気相場の際に大事なことは感情のコントロール。
下げ相場の時には、どうしても弱気になるのは間違いありません。そして弱気になると誰かに判断を委ねたくなるもの。
インフルエンサーなどが、このまま大暴落が起こるなどと発言すれば、感情が乱され、誤った判断をしてしまう可能性があります。
理解しておくべきことは、これから先の相場の動きは誰にも分からないということ。
インフルエンサーが相場の先行きについて何かを言ったとしても、それは予想の域を超えません。
運用の目的を再確認する
弱気相場の時こそ自分の運用目的を再確認すべき。
短期で大きな収益を狙うのか、長期で年利回り数%を狙うのか。
周囲の雑音で運用目的がブレないようにすることが重要。
長期で右肩上がりが期待できる市場で運用を行うのであれば、短期の上下動に惑わされてはいけません。
そもそも、インデックス投資は長期・分散・積立を基本とする投資法。
短期間の相場の上げ下げに反応する投資手法ではありません。
例えば、下図は2022年の年初から1ヶ月間のS&P500(青色)とナスダック総合指数(黄色)のチャートです。
(出典:googleファイナンス)
上図だけみると、S&P500は年初から約10%、ナスダックは年初から15%以上も急落しています。
しかし、期間を5年間にしてみると下図の通り。
(出典:googleファイナンス)
SP500もナスダックも直近では大きく下げていますが、長期で見れば右肩上がりで上昇してきたことが分かります。
感情が揺さぶられると人間の視野は狭まってしまいますが、視野を狭めてはいけません。
インデックス投資家は、20年~30年の長期スタンスで投資して複利の効果を最大限活用するのが目的。
自分の投資スタンスが短期ではなく長期であれば、視野は広げておくべきです。
相場が好調な時も不調な時も周りの声に影響され過ぎることは避けるべき。
周りの人の声を参考にすることは必要ですが、それに影響され過ぎずに自分の投資スタンスを守る事も重要です。
弱気相場の際に絶対にやってはいけない2つのこと
弱気相場の際にインデックス投資家が絶対にやってはいけない事は、下記の通り。
- 積み立てを止める
- 資産を売却する
これまで積み立ててきた資産をを売却するのは論外としても、弱気相場が終わるまで積み立てを控えるべきではと考えてしまう方もいるでしょう。
しかし、積み立ても止めてはいけません。
弱気相場の際に積み立てを止めるということは、ドルコスト平均法のメリットを捨てていることになってしまいます。
ドルコスト平均法とは、価格が日々変動する株式や投資信託などの金融商品を一度に購入せず、一定額ずつ定期的に継続して購入する投資手法です。
定額購入法とも呼ばれ、一定額ずつ定期的に継続して購入することにより、買付単価を抑えることが可能。
投資信託の積立投資の際によく紹介される投資手法で、毎月●万円など定期的に一定額ずつ投資信託を購入することにより、高い時には少なく、安い時には多く買うことになり、結果的に買付単価を平準化することができます。
相場が下がっている時に積み立てを止めるということは、高い時だけ買っている状態になってしまいます。
相場下落時に追加で資金を投入する
インデックス投資の成果は『口数×評価額』で計算できます。
よって、保有している口数を増やすことが成果を上げる重要な要素の1つ。
下落相場時にドルコスト平均法を活用して淡々と積立投資を継続するだけでも、ファンド(投資信託)の保有口数を増やすことは可能。
しかし、相場が軟調な時にまとまった資金を追加で投入できれば、更に保有する口数を増やすことができます。
実際に資金を追加した場合をシミュレーションしてみました。
下図は毎月2万円ずつ積立投資をした事例ですが、仮に20万円を最初に一括投資したとすると保有口数は20口(20万円÷1万円)。
一方、2万円ずつ10回に分けて積立投資した場合の保有口数は36.4口になります。
(出典:アクサ生命)
上図で積み立て購入に加えて8回目に追加で20万円の資金を投入したとすると、最終的な口数は100口増えて136.4口に増えます。
仮に、最初に40万円を一括投資したとすると、最終的な評価額は24万円(6,000円×40口)で▲16万円とういう結果。
一方、積立投資で追加資金投入した場合の最終的な評価額は、818,400円(6,000円×136.4口)にもなります。
ナンピン買い(保有している銘柄の株価が下がったときに、さらに買い増しをして平均購入単価を下げること)は個別株投資ではどちらかというと禁じ手。
しかし、右肩上がりが期待できる市場で積立投資するのであれば、ナンピン買いはむしろ口数を増やす絶好のチャンス。
実際には最安値で上手く追加資金を投入することはできないでしょうが、下落時に追加で資金投入すれば、淡々と積み立てるケースと比較して保有口数は増えます。
まとまった資金を保有している方が、資金を分散投入している場合は、暴落時には追加する形で資金投入することも検討するといいでしょう。
ただし、暴落時の資金追加は投資を始めたばかりのリスク許容度の低い方にはおすすめできません。
まとまった資金を追加で資金投入した後に予想以上に相場が低迷することも考えられ、リスク許容度が低い方には耐えられない可能性があります。
まとめ
新NISAで投資を始めた途端に軟調な相場になってしまって困惑している方も少なくないでしょう。
しかし、インデックス投資は長期・分散・積立が基本の投資法。短期の市場の変化に反応する必要はありません。
この機会に再度、自分の運用目的を確認することが重要です。
インデックス投資を継続するのであれば、下落相場時にどのように行動したかで、その後の資産額の増え方が変わります。
周りが弱気の時に運用を継続できた人だけが資産を大きく増やすことが可能。
結局、投資の極意は安く買って高く売ること。
下落相場時に運用を継続しないということは、高い時だけ買っていることになってしまいます。
更に、下落時に資産を売却するということは、高く買って安く売ることになり、資産を大きく減らす結果につながってしまいます。