長期間デフレが続いてきた日本で、物価上昇率2%のインフレを目指し、日本銀行(日銀)の金融緩和政策が2013年春から続いています。
日本では長期間デフレが続いてきましたので、本当にインフレが起こるのかという疑問さえ感じてしまいます。
日本でインフレが起こる可能性はあるのでしょうか?
インフレが起きると、私たちの生活にどのような影響があるのでしょうか?
今回はインフレについて、下記ポイントを解説します。
- インフレとは?インフレが起きる原因は?
- 日本でインフレが発生する可能性は?
- インフレが発生した場合の影響とは?
- インフレに備えるための対策とは?
1.インフレ(インフレーション)とは?
インフレ(インフレーション)とは、モノやサービスの値段 (物価)が上がり、相対的に通貨(お金)の価値が下がることをいいます。
例えば、鉛筆が1本100円だったとして、インフレになると値段が上がります。
インフレにより、鉛筆1本の値段が100円から200円になったとしたら、どうなるでしょうか。
今まで100円で買えていたものが、200円になるということは、通貨の価値が2分の1になったことになります。
日銀が目指す前年比2%の物価上昇で考えると、100円で買えた鉛筆が、102円に値上がりすることになります。
2.インフレが起きる原因
さて、インフレはなぜ起きるのでしょうか?
1)ディマンド・プル・インフレとは?
インフレの原因は色々とありますが、インフレの原因のひとつに好景気があります。
景気が良くなるとモノがよく売れて、需要が増えて供給を上回ると、モノの値段(物価)は上がります。
例えば、Aという商品が1つあり、この商品を欲しいという人が1人だったとすると、適正な値段でしか売れません。
しかし、欲しい人が増え100人になれば、Aという商品の値段は上がっていくことが想像できるでしょう。
これをディマンド・プル・インフレといいます。
需要サイドの要因によるインフレで、ディマンド(需要)がプル(引っ張る)インフレという意味です。
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2)コスト・プッシュ・インフレとは?
一方、原材料などが上がることにより、モノを作るための費用が上がり、モノの値段が上がることをコスト・プッシュ・インフレといいます。
供給サイドの要因によるインフレで、コスト(費用)がプッシュ(押す)インフレという意味。
ディマンド・プル・インフレは、景気が好循環し、給与も上がりますので、良いインフレです。
一方、コスト・プッシュ・インフレは、生産費用だけが上がり、賃金は上がりませんので、景気は良くならず、悪いインフレです。
3.日本でもインフレが起こる可能性あり?
インフレと聞くと、景気が良くなり、需要が増えることにより、モノの値段が上がるディマンドプルインフレをイメージする方が多いのではないでしょうか。
日本ではインフレが起こるような景気回復は望めないと考えている方も多いため、モノの値段が上がるインフレは起こることはないという考えを持っている方も多いと思います。
しかし、日本の景気が良くならなくてもインフレが起こる可能性があります。
それが、コストプッシュインフレ。
既に日本の総人口は2008年をピークに減り始めています。
今後も高齢者の増加と出生数の減少傾向は変わらない見込みで、人口の減少は続くとみられています。
更に国の借金は1,100円兆円超。
このまま政治の無策が続けば、日本の国力は下がり、日本円の信任が下がります。
そうなると、米ドルなどの他国通貨にくらべて円の価値が下がり、円安になる可能性があります。
円安になると食料品、原油など多くの製品を輸入に頼っている日本は、色々なモノの値段が上がる可能性あり。
日本は円安になり過ぎるとインフレが起こることになります。
つまり、円安になり、輸入する原料が高くなるので、販売する商品が高くなる。
コストプッシュインフレが起きるわけです。
これを輸入インフレーションともいいます。
日本人はデフレに慣れすぎましたが、インフレが起こる可能性はゼロではありません。
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4.インフレのリスクとは?
インフレのリスクがあるという言葉を聞いたことはないでしょうか?インフレにはどのようなリスクがあるのでしょうか?
日本人は元本保証が好きで、元本割れする可能性を極度に嫌います。
しかし、元本保証とは額面の保証であって、価値の保証ではないことを認識すべき。
例えば、日銀が目標としている物価上昇率2%が30年間続いた場合、下図の通り、1,000万円の価値は、30年後に545万円になってしまいます。
銀行口座に入っている1,000万円という金額は引き出さない限り30年間でも目減りすることはありませんが、 物価が2%ずつ30年間上昇し続けると、実質的な価値は545万円に下がっていることに。
つまり、元本保証とは、額面は保証されても、その価値は保証されるわけではないということです。
最終的に重要になるのは、お金の額面ではなく価値。
日銀が年率2%の物価上昇を目指しているのであれば、私たちは最低でも2%を上回る利回りで資産運用をしなければ、実質的に所有しているお金の価値は目減りしてしまいます。
また、日銀が物価上昇率をコントロールできる保証はどこにもありません。
物価上昇率をコントロールできずにインフレが続く可能性もゼロではありません。
インフレが続けば、日本円で所有している資産の価値は大きく下がってしまいます。
5.インフレに備えるための対策とは?
デフレに慣れた日本で、インフレが起こる可能性がゼロではないことをご理解いただけたでしょう。
では、インフレに備えるためにできることはあるのでしょうか?
インフレに対処する方法の1つは、インフレ時に価値が上がるもので資産運用しておくことです。
例えば、外貨への投資もインフレ対策の1つ。
米ドルに投資しておけば、円安になった時にはドルの価値が上がるわけですから、インフレに対処可能。
仮に、物価が1年間で10倍になるようなハイパーインフレが起きた場合、日本円の価値は10分の1になってしまいます。
1,000万円の貯金が、実質的に100万円の価値になってしまいます。
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資産を守るためにも資産運用は必要!
常々思うことですが、日本人は円を信頼し過ぎではないでしょうか。
確かに、投資をすると一時的に資産が減ることもありますが、長い目でみると、自分の資産の防衛になると思います。
投資を始めると資産が減るリスクも発生します。
しかし、 何もしないことにもリスクがあることを考えるべき。 何もしないリスクとは、資産を日本円だけで保有し続けること。
現金(日本円)を銀行やゆうちょ銀行に預けていれば、額面は目減りすることなく、安心と思われるかもしれませんが、インフレが起きれば、 実質的に資産は目減りすることに。
保有資産が日本円だけということは、日本円に集中投資していることと同じことです。
今後の日本の状況を考えると、日本円だけに集中投資することは賢明とはいえないでしょう。
まとめ
物価が下がるデフレに慣れ過ぎた日本で、物価が上がるインフレのリスクを意識することは難しいことかもしれません。
しかし、今後の日本では、ハイパーインフレほどではないにしても、インフレが起こる可能性は高いと思われます。
資産を守るためにも、現金(日本円)に集中している資産を「ほったらかし投資」などを活用して、分散することが重要でしょう。