「世界中に分散したインデックスファンドを積み立て投資して長期保有する」インデックス投資は始めるのが簡単、その後もほったらかしで手間がかからないというメリットがあります。
しかし、難しいのが積み立てたファンド(投資信託)の売り時。
投資は買いより売りの方が難しいとも言われています。
最終的に積み立てた投資信託をどのように取り崩すべきなのか疑問を持っている方もいるでしょう?
- 一気に売却し現金化すべきなのか?
- 少しずつ現金化するべきなのか?
考え始めると色々な疑問がわいてきます。
今回は、インデックス投資で億り人になった水瀬さんの本を参考にインデックス投資の出口戦略について解説します。
インデックス投資の出口戦略とは?
インデックス投資の出口戦略とは、一言でいうと積み立てた資産(投資信託)の取り崩し方。
インデックス投資家として有名な水瀬さんは、インデックス投資の出口戦略の情報はまだまだ少ないと指摘しています。
情報が少ない理由は、日本ではインデックス投資の歴史が浅いから。
水瀬さんも現在は資産の積立中ですから、インデックス投資を行っている人は増えていても資産の取り崩しを始めている方は、まだまだ少ないのが現実。
資産の取り崩しのタイミングとしては、マイホーム購入や教育費、退職後などが考えられますが、取り崩し方には注意が必要です。
つまり、積み立てた投資信託を売るタイミングや、売り方に注意を払う必要があります。
積み立てた資産(投資信託)を一気に取り崩さない
マイホーム購入や教育費など、資金が必要な時に積み立てた投資信託を取り崩すことになるのですが、取り崩し方には注意が必要です。
それが、一気に資産(投資信託)を取り崩さないこと。
つまり、積み立てた投資信託は一気に全額売却するのではなく、必要な分だけ売り、残りの資産は運用を継続するということ。
理想は、相場が一番高いところで売る事ですが、相場の天井は誰にも分かりません。
老後資金についても、必要な分だけを一定の割合で取り崩すことにより、資産の寿命を延ばすことが重要。
老後などに積み立てた資産を一気に売却してしまうと、その後の上昇相場を逃してしまったり、相場の暴落時に全額売却するようなことをしてしまうと、資産寿命が一気に縮まってしまいます。
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年齢を重ねると共に資産配分を保守的に見直す
資産の取り崩し方も重要ですが、年齢を重ねるごとに資産配分を見直すことも重要。
例えば、若い時は株式型の投資信託に100%資産を投入していたとしても、年齢とともにリスクを取り過ぎないように債券型のファンドの割合を増やすなど。
人生の後半で極力、資産の減少を防ぐために資産配分の変更(リアロケーション)を行う必要があります。
なお、株式型の投資信託を売って債券型の投資信託を買うという形でリアロケーションを行うと、売却時に利益部分に課税されてしまいます。
また、つみたてNISAの場合、投資信託を売却してしまうと、その後に非課税枠を再利用することはできません。
よって、株式型の投資信託の積立額を減らし、債券型の投資信託の積立額を増やして債券型のファンドの割合を増やすリアロケーション方法もアリでしょう。
コントロールできるのはコストとリスク
水瀬さんは、投資家がコントロールできるのはリターンではなく、コストとリスクと指摘。
2020年のコロナショックのような株価暴落があっても、長期的に見れば、株価は上昇していきます。
しかし、加齢と共に株価暴落からの復活を待てる時間が少なくなるのは間違いありません。
また、コロナショック時のように株価がすぐ回復しない可能性も。
よって、信託報酬の安いインデックスファンドでコストを下げるとともに、年齢とともに株式の割合を下げてリスクを下げていく事が重要です。
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株式の保有目安は100から年齢を引いた割合
では、資産を保有する割合はどのように考えたらいいのでしょうか?
株式を保有する目安として有名なのが、100から年齢を引いた割合。
例えば、下記事例のように年齢を重ねるごとに株式を保有する割合を下げていきます。
【30代】
株式:70%
債権:30%
【40代】
株式:60%
債権:40%
【50代】
株式:50%
債権:50%
資産の配分割合に絶対の正解があるわけではありませんが、特にこだわりがなければ、上記の配分を参考するといいでしょう。
ちなみに私は40代半ばですが、まだまだ株式の比率を下げるつもりはありません。
資産(投資信託)の取り崩しは定額ではなく定率で
実は、資産(投資信託)の取り崩し方にもコツがあります。
老後に公的年金だけでは生活費が足りないと感じている方は多いでしょう。
老後に生活費が不足する場合、例えば、生活費の不足分10万円を貯蓄などから取り崩していこうと考えてしまいます。
しかし、定額の取り崩し方だと暴落時などに資産を取り崩し過ぎてしまい、資産の寿命を縮めてしまう可能性があります。
定額ではなく、資産に対して定率で取り崩す方が資産が長持ちするとされています。
具体的には、毎月●万円ずつを取り崩すのではなく、資産の●%ずつを毎月取り崩すということ。
本書の中では、資産を年4%ずつ取り崩すことがベストと紹介されています。
その根拠は、下記の通り。
- 「株式:債権=50:50」の資産配分で運用
- 年5.5%の期待リターンを見込む
- インフレ率を1.5%と仮定
上記の前提条件で、資産を毎年4%をずつ取り崩すのであれば、計算上は保有資産を減らさず資産運用できることになり、アメリカでは「4%ルール」が定着しています。
なお、定額の取り崩しと定率の取り崩しには、下記の通り一長一短があります。
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定額取り崩しのメリット・デメリット
メリット:金額が固定で分かりやすい
デメリット:相場下落時は多くの口数を売るので資産減少が早い
定率取り崩しのメリット・デメリット
メリット:資産の減少ペースが遅い
デメリット:毎月の取り崩し額が一定せず、入金の管理がしづらい
4%ルールで投資信託を取り崩せば、理論上は資産が目減りしないとされていますが、毎月、取り崩す額が変動するのはデメリットといえるでしょう。
また、暴落時などは、取り崩せる額が小さくなり、生活費が不足する可能性もあります。
証券会社による投資信託の定期売却サービス
定額で取り崩すのであれば、金額が明確なので分かりやすいですが、定率はいちいち計算する必要があり、結構面倒だと思う方も少なくないでしょう。
実は、楽天証券やSBI証券などでは、自動で投資信託を定期的に取り崩すサービスを既に始めています。
楽天証券では、売却方法を「定率法」「定額法」「定口法」の3つから選択でき、自動で定期的に投資信託を売却してくれます。
現在、積み立て真っ最中のインデックス投資家の方達が引退する頃には、各社でもっと「出口戦略」に対してのサービスが充実するでしょう。
まとめ
インデックス投資の出口戦略のポイントをまとめると下記の通り。
- 資産を一気に取り崩さない
- 年齢とともに資産配分を変更する
- 資産は定額ではなく、定率で取り崩す
資産の取り崩しはまだまだ先の話と考えている方も多いかもしれませんが、年齢を重ねるごとに少しずつ資産配分を変えるリアロケーションを考慮する必要はあります。
まだ若い方でも頭の片隅には出口戦略を置いておいた方がいいでしょう。
インデックス投資(ほったらかし投資)は始めるのは簡単。
しかし、出口戦略である資産の取り崩しは簡単ではなく、一手間掛ける必要があるということをご理解頂ければと思います。