財務省が政府の債務残高を発表するとニュースになります。
日本の国債残高は年々増えていて、このままでは大変なことになるという論調が大半。
国債の残高が増えると日本は財政破綻(デフォルト)してしまうのでしょうか?
結論から申し上げると、円建ての国債残高が増えても日本が財政破綻することはありません。
国債が増えると「日本が財政破綻する」や「ハイパーインフレになる」といった不毛な議論を終わらせないと日本が長期停滞から抜け出すことは出来ません。
そこで今回は、大前研一さんの発言をもとに国債残高が増えても問題がないことを解説したいと思います。
国債が増えると将来世代の負担を増やしてしまうのではないかと不安を感じている方は参考にしてください。
国債(国の借金)1000兆円超|財政破綻(デフォルト)の可能性は?
大前研一さんは2023年5月10日の財務省の発表を受けて下記のように発言しました。
財務省は10日、国債と借入金、政府短期証券を合計した国の借金が、3月末時点で計1270兆4990億円になったと発表しました。前年同期から29兆円余り増加し、7年連続で過去最大を更新したもので、新型コロナや物価高対応により国債の発行額が膨らんだことなどが要因です。
債務残高の対GDP比を見てみると、ドイツはここ10年で下げる努力をした結果、50%程度にまで落ち着いています。英米も増加傾向にあるものの100%前後で、最悪の状況と言われているイタリアが125%程度です。一方で日本は、イタリアの約2倍の250%。就労人口が減っている中でのこの数字は、返済できるわけがありません。
生まれながらにして国民一人当たり1000万円以上の借金を抱えている日本の赤ちゃんはかわいそうですが、おそらく国はもう借金を返済する気がないと思われます。永遠に増やしていって、国債がいつか紙くずになるのを望んでいるのではないでしょうか。このままでは、デフォルトに陥る未来しか見えません。
(出典:大前研一 ニュースの視点)
未だに国債の残高が増えると財政破綻すると発言する著名人がいるとは驚きです。
日本が円建てで国債を発行している限り財政破綻(デフォルト)することはありません。
これは財務省のHPにも下記のように掲載されています。
『日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない』
では、無尽蔵に国債を発行できるのかというと、それはできません。
国が供給能力を超えて財政出動を続ければ、需要過多で極端なインフレになってしまいます。
よって、債務残高ではなくインフレ率を目標に財政出動すべきです。
現状の日本であれば、3~4%程度のインフレ率になるまでは国債を発行して財政出動することが可能。
国債は国民の借金ではない!
大前さんは日本の赤ちゃんは生まれながらに国民一人当たり1000万円以上の借金を抱えていてかわいそうと発言していますが、国債は政府の負債であって国民の借金ではありません。
かわいそうなのは未だに財政破綻論を展開している大前さんの方。
国債残高を国民一人当たりの借金として表現するのは完全なるミスリード。
政府の赤字は国民の黒字です。
実際、政府が国債を発行して財政出動すれば、世の中に出回る通貨の量が増え、景気は上向き国民の資産は増えます。
大前さんのような著名人が財政破綻論を振りかざすのはかなりの害悪。
影響力が大きい方が間違った発言を繰り返すと、何の疑いもなく信じてしまう人も多くなってしまいます。
国債を返済したら日本経済はどうなるのか?
大前さんは「国はもう借金を返済する気がないと思われます」と発言していますが、国債を返済すると日本の経済は良くなるのでしょうか?
国債を返済するということは、国(政府)が国民のお金を吸い上げるということ。
例えば、国債残高が増えると財政破綻の可能性があるから1000兆円の国債を一気に返済しようとすれば、国民から1000兆円を税金として徴収する必要があります。
そんなことをしたら日本経済が壊滅的な打撃を受けるのは明白。
個人や企業は借りたお金は返済する必要がありますが、自国通貨建ての国債は返済の必要はありません。
国(政府)には通貨発行権があります。
国(政府)と個人や企業を同一視してはいけません。
米国や英国などは国債を返済しているのか?
大前さんの発言を聞くと日本だけが国債の残高を増やしているような印象を受けますが、諸外国はどうなっているのでしょうか?
下図を確認すればわかる通り、どの国も国債残高が増える一方。
(出典:https://www.fukurou.win/https-www-fukurou-win-national-government-bond3/)
米国や英国などを見ても政府債務を減らしている国はない。つまり返済していない。
満期が到来した国債は、新たに国債を発行して借り換えているのです。
国債残高が増えるのは経済成長を目指している国では当たり前のこと。
国(政府)が国債を発行して財政出動すれば、民間に通貨を供給する形になります。
なお、上記の図を確認すると、国債残高の伸び率としては日本が極端に低いことが分かります。
なぜ、日本の債務残高の対GDP比率は高いのか?
大前さんのような財政破綻論者は、日本の債務残高の対GDP比率が高いことを問題にします。
財政破綻危機で騒がれたギリシャの公的債務残高はGDP比200%。一方、2020年時点の日本の公的債務残高はGDP比256%超。
(出典:財務省)
なぜ、他国より債務残高が増えていない日本の対GDP比率が高くなるのでしょうか?
それは日本のGDPが伸びていないから。
(出典:https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2104/19/news005_3.html)
1990年から2020年までの40年ほどで、カナダや米国は約7倍、イタリアが約8倍、フランスが約5倍で、低成長のドイツでも4倍近くGDPが増大しています。
一方、日本のGDPは2倍強といった低成長。
日本は緊縮財政のもと国債発行を抑えて財政出動しなかったことにより、他の国に比べて低成長に陥った。
結果、債務残高の対GDP比率が高くなったということ。
他の国は政府が財政出動することで経済が成長したので、債務残高は増えても対GDP比率が上がっていない。
つまり、日本の債務残高の対GDP比率を下げようと思えば、積極財政によりGDPを増大させる必要があることが分かります。
他国のようにGDPが成長すれば、債務残高は増えても対GDP比は下がることになります。
また、積極財政により政府が財政出動すれば、日本経済は復調するでしょう。
経済が好調になれば、企業や国民の所得が増えるので税収も増え、結果的に国債の発行額が減る形で対GDP比率が下がります。
まとめ
一日も早く不毛な財政破綻論争から脱却しない限り、日本に明るい未来は訪れないでしょう。
間違った政策が行われ続けてきた結果、日本経済はバブル崩壊以降の約30年間も不況に苦しんできました。
失われた30年などと言われていますが、日本経済が長期停滞している責任は政治家にあります。
しかし、その政治家を選んできたのは我々国民。
日本経済を復活させるためには国民一人ひとりが政治に興味を持ち、日本を豊かにする政策を行う政治家を選ぶ必要があります。
そして、声を上げて政治家を育てる事も重要。
このまま間違った政策が行われ続ければ、日本の存続さえも危うくなります。
今回の記事の内容に興味を持った方は、以下の本を読んでください。
なぜ、日本で約30年間も不況が続いているのかや、日本には力強く復活する力がある事が分かります。
国民一人ひとりの正しい知識が日本を救うことになります。
『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】中野 剛志』