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医療保険は本当に不要?老後に備えて解約すべき?


「医療保険はムダで不要」そう考えている方も少なくないでしょう。

 

その考え方は本当に正しいのでしょうか?

 

盲目的に「医療保険はムダで不要」という考え方を信じてしまうことは危険。

 

「医療保険は必要」という反対側の意見を確認してみることも重要。

 

今回は、以下の本を参考に医療保険が必要とする立場の考え方を確認してみたいと思います。

『知らないと大損する! 定年前後のお金の正解――会社も役所も教えてくれない 手取りを増やす45のコツ 板倉 京 (著)』

 

 

医療保険は本当に不要?老後に備えて解約すべき?

日本の公的医療保険には頼りになる高額療養費制度があり、民間の医療保険に加入する必要なない。

 

その分、預金しておくべきと考えている方も少なくないでしょう。

 

特に老後は収入が公的年金のみの方もいるので、民間医療保険の負担は小さくないというケースもあるでしょう。

 

しかし、著者は高額療養費制度の穴をカバーするために60歳からでも医療保険には加入しておくべきと解説。

 

高額療養費とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、 一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。

(出典:全国健康保険協会)

 

医療費がいくらかかるかは誰にも分からないし、入院にかかる費用はバカにならない。

 

医療の進化とともに入院日数は減少傾向ですが、高齢者の入院日数は長くなる傾向にあると本書では解説されています。

 

病気で治療が必要となった場合に問題なのは、高額療養費制度で負担してもらえない下記費用。

  • 差額ベッド代
  • 先進医療

 

差額ベッド代は高額療養費制度の対象外

差額ベッド代は高額療養費制度の対象外で全額が自己負担となります。

 

「差額ベッド代」とは、希望して個室等に入院された場合、基本的に1~4人部屋に入室されたときにかかる費用で、正式には「特別療養環境室料」といいます。

(出典:住友生命)

 

差額ベッド代は、完全な個室を希望した時だけ必要と勘違いしている方が多いのですが、上記の通り4人部屋でも必要

 

1日1万円の差額ベット代は当たり前で、4人部屋で1日5000円の差額ベッド代を請求された事例も本書で解説されています。

 

先進医療も高額療養費制度の対象外

先進医療も高額療養費制度の対象外で、先進医療にかかる費用は全額自己負担となります。

 

先進医療とは、厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養のうち、公的医療保険の対象になっていないものです。

(出典:太陽生命)

 

がん治療関連の先進医療などは高額。

 

先進医療を利用する確率は低いかもしれませんが、いざという時に資金面で有効な治療方法をあきらめざるを得ないということになる可能性もあります。

 

医療費用の貯蓄が減ることに耐えられる?

公的医療保険制度が充実している日本では、民間医療保険は不要で医療費は貯蓄で備えるべき。

 

理論上は上記の通り。

 

しかし、人間は機械ではなく、感情があります

 

また、お金に色はありません。

 

医療費用に蓄えていた資金でも、資産が減っていくことに対するストレスは変わらないでしょう。

 

仮に、治療費用が予想以上にかかってしまった場合、資金不足を恐れて必要な医療を我慢してしまう可能性もあります。

 

上記のような心配があるのであれば、医療保険で備えておいてストレスを軽減するという考え方もあるでしょう。

 

私自身が、一旦、蓄えた資産を使う事がかなりのストレスになるタイプ。

 

よって、医療保険には加入しています。

 

今の蓄えで医療費は足りるかと常にストレスを感じるくらいなら、月数千円であればコストを支払ってストレスから解放されたいという考え方です。

 

 

医療保険で最低限必要な3つの保障

著者は医療保険の最低限必要な保障として下記3つを挙げています。

  • 入院給付金(日額5,000円)
  • 手術給付金
  • 先進医療特約

 

医療保険は各社の競争により、ひと昔前と比べると安くなっていて、上記最低限の保障であれば、60歳男性の保険料は月額3000円程度。

 

医療保険の保険料は、所得税・住民税の控除対象(介護医療保険料控除となります。

 

仮に月額3000円、年間3万6000円の保険料だと3700円~1万5000円程度の節税が可能。

 

よって、実質の保険料負担はもっと少なくなります。

 

なお、医療保険の給付金は全て非課税で受け取れます

 

入院給付金

入院給付金は1万円あると安心ですが、保険料との相談。

 

入院給付金は差額ベッド代や入院中の雑費など、高額療養費の対象とならないものに使えます。

 

手術給付金

最近の医療保険は日帰りの手術でも手術給付金が受け取れます。

 

先進医療特約

特約保険料は数百円で、先進医療の治療費が2000万円まで保障されます。

 

なお、先進医療の保障だけが欲しいという方には、先進医療専用の保険もあります。

 

先進医療保険の『リンククロス コインズ』は月額保険料500円で先進医療の費用が2000万円まで保障されます。

 

 

医療保険は見直しがおすすめ

著者は昔に入った医療保険は見直すことをすすめています。

 

保障内容がよくなって、保険料も下がる可能性があるから。

 

それほど今の医療保険は進んでいると指摘。

 

見直すと保険料が安くなるとともに、新たに介護医療保険料控除の対象になる可能性があります。

 

平成23年以前に契約した医療保険の保険料は一般生命保険料控除の対象。

 

しかし、平成24年以降の医療保険契約は介護医療保険料控除の対象。

 

見直し前(平成23年以前)の医療保険契約は、他の生命保険契約があれば、控除枠の関係で控除額に入れられていない方もいるでしょう。

 

しかし、見直すことにより新たに「介護医療保険料控除枠」を活用でき、所得税・住民税の節税額が大きくなる可能性があります。

 

 

まとめ

公的医療保険制度が充実している日本では、理論上は「民間医療保険は不要」で貯蓄で備えるべきと考える方が少なくないでしょう。

 

しかし、民間医療保険は必要とする考え方もあります。

 

インフルエンサーが「医療保険は不要」と言っていたからではなく、自分にはとってはどうなのかを考えることが重要。

 

医療保険だけの話ではありませんが、「必要・不要」のどちらか極端な意見だけを聞いて判断するのは避けた方がいいでしょう。

 

「必要・不要」両方の意見を聞いて、自分にとって心地よい方を選択してください。

 

『知らないと大損する! 定年前後のお金の正解――会社も役所も教えてくれない 手取りを増やす45のコツ 板倉 京 (著)』