2024年に刷新された新NISA(少額投資非課税制度)では、多くの投資家が海外株式型の投資信託を中心に資産形成を進めています。
特に、全世界株や米国株に投資する商品が人気を集めており、日本株の割合は相対的に低いのが現状。
こうした状況を受けて、日本企業の成長や国内市場を活性化させるために「日本枠」を設けるべきだという議論も浮上しています。
「日本枠」を設定することで、本当に日本株市場は活性化するのでしょうか?
本記事では、新NISAの「日本枠」について解説します。
日本の株式市場の活性化を望んでいる方は参考にしてください。
新NISAの「日本枠」とは?
新NISA制度は、従来の一般NISAとつみたてNISAを統合・拡充し年間投資可能額が最大360万円(「成長投資枠」240万円・「つみたて投資枠」120万円)に引き上げられました。
また、非課税保有限度額は1,800万円で、売却時には取得額分の非課税枠が復活する仕組みとなっています。
現状は、投資対象を日本株や日本株投信に限定した「日本枠」はありません。
2024年9月までのNISAの買い付け額は6割強が投信でその多くが全世界株や米国株など海外資産への投資でした。
海外株式型の投資信託に人気が集まる中、「日本企業の成長や国内市場を活性化させるために「日本枠」を設けるべき」という話題が頻繁に出ます。
具体的に「日本枠」を設定するという議論はされていませんが、日本枠を設定すれば日本株市場は活性化するのでしょうか?
官製相場は活性化しない
残念ながら新NISAに「日本枠」を設けるだけでは日本市場が活性化することはないでしょう。
実際、現在でもGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や日銀(日本銀行)が日本株を大量に保有しています。
例えば、日銀は金融緩和の一環で日本株のETFを大量に購入しました。
2023年度決算によると、3月末のETF保有額は簿価で約37.2兆円。時価は約74.5兆円に達し、東証プライム市場の時価総額の約7%を占める状況。
また、GPIFも世界の株式市場に占める日本株の割合は5%程度なのに対してGPIFの資産構成では日本株が25%を占めています。
2024年度第3四半期運用状況によると、国内株式を65兆739億円保有しています。
現状、日銀とGPIFは合わせて時価140兆円を超える日本株を保有していますが、日本株市場が活性化していると言えるでしょうか?
官製相場(債券・株式市場で日銀や公的年金などの影響を受けて価格が形成される相場)は活性化しないということを証明しています。
新NISAで個人投資家が日本株を買わない本質的な要因を考える必要があります。
なぜ、日本人がオルカンやS&P500などの海外株式型の投資信託を買うのか。
日本企業よりも米国企業の方が成長が期待できるからです。
つまり、日本の株式市場を活性化するには日本企業の成長が期待できる状態を作る必要があります。
日本株市場の活性化に必要なこととは?
日本株の上昇に必要なことはどんなことでしょうか?
新NISAに「日本枠」を設けるというような官製相場的な発想は捨てるべきです。
根本的に日本企業の株価が上がるような政策を行う必要があります。
つまり、日本人が自然と日本企業に投資したくなるような状況を目指すべきです。
そのために必要なのが日本経済の活性化。
この小さな島国に一億人超の人口があることを活かし、内需を活性化することが重要。
日本企業が海外に進出しなくても日本国内で十分稼げるようになることは、株式市場の活性化だけでなく多くの国民にとっても恩恵があります。
日本企業が日本国内で十分に稼げるようになれば、雇用の安定や賃金の上昇などをもたらし、更なる経済の好循環が期待できます。
真に魅力的な日本企業が増えれば、日本人も自然と日本市場に投資するようになるでしょう。
そうなれば、日本人のお金が日本企業に投資され、その配当金や値上がり益が日本人の所得になるという理想の好循環も生まれます。
可能な限り日本の中で経済を回すことで豊かな生活を実現できれば、海外から無用な外圧を受けるリスクが減っていきます。
それが、真の安全保障ではないでしょうか。
現在の自公政権のように、国内投資を海外企業に頼ったり経済活性化のためにインバウンドを推進し過ぎるのはリスクが伴います。
海外からの投資やインバウンドが止まった時にどのように対応するのでしょうか。
日本人が自然と日本企業に投資することにより、日経平均株価が5万円や10万円などと上昇していく状況を目指すべきです。
日本経済活性化のために行うべき政策は下記のような国民の手取りを増やす政策です。
- 消費税廃止
- 社会保険料減免
- ガソリン税廃止
- 年収の壁引き上げ
日本人の手取り(可処分所得)が増えれば、日本のGDPの5割超を占める消費が盛り上がり日本経済は活性化します。
自民党や立憲民主党の野田氏が主張するプライマリーバランス(PB)黒字化は経済が加熱した時に行う政策。
真逆の経済政策が行われてきたから日本経済は「失われた30年」を経験しました。
「失われた40年」にしないために30年間にも及ぶ経済政策の誤りを反省し、正しい経済政策を国民からも要求すべきです。
まとめ
新NISAに「日本枠」を設けたとしても、日本株市場が本質的に活性化する可能性は低いでしょう。
官製相場的な発想で投資資金を誘導しても、市場の本質的な成長にはつながらないから。
個人投資家が日本株を避ける根本的な理由は、日本市場の成長性に対する期待が低いことにあります。
日本企業の成長を促すためには、日本経済を活性化する必要があります。
30年も経済が停滞している日本でプライマリーバランス(PB)黒字化を目指すなど正気の沙汰ではありません。
日本経済が活性化して日本企業の利益が上がるようになれば、日本人が自然と日本株に投資するようになるでしょう。