
金融庁が高齢者向けの少額投資非課税制度(NISA)を創設する検討に入ったという報道がありました。
その名も「プラチナNISA」。
2026年度の税制改正要望に盛り込む方向とのこと。
現行のNISAでは購入できない「毎月分配型」の投資信託を高齢者に限定して対象に加える案が浮上しています。
高齢者が運用資産を計画的に活用できるようにすることを目的としていますが、高齢者が毎月分配型の投資信託を上手に活用できるのでしょうか?
今回の記事では、新NISAで高齢者向けに「毎月分配型」の投資信託を解禁することの是非について解説します。
NISAの制度改正案が気になる方は参考にしてください。
毎月分配型の投資信託とは?デメリットが大きい?
なぜ、これまで新NISAでは「毎月分配型」の投資信託が対象から外されていたのでしょうか?
それは中長期の資産形成に向かないようなデメリットの部分が大きいから。
では、毎月分配型にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。
手数料が高い
下記は、ある「毎月分配型」の投資信託の手数料ですが驚くほど高い。
- 購入時手数料:3.3%
- 信託報酬:1.7%
なんと購入初年度は、購入時手数料と信託報酬で合計5%もの手数料がかかります。
非課税枠の1800万円分を購入したのであれば、手数料はなんと90万円。
新NISAで大人気のインデックス型ファンド(投資信託)である「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」をネット証券で購入すれば、ノーロード(購入時手数料無料)で信託報酬は0.1%を切っている状態。
アクティブファンドとインデックスファンドという違いはありますが、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」と比較すると手数料が恐ろしく高いことが一目瞭然。
毎月分配型の投資信託は毎月決算を行うため、決算のコストや分配金支払いのコストがかかり手数料が高くなりがちです。
金融リテラシーが低いと、気付かない間に高額な手数料を取られてしまいます。
複利効果が低い|タコ足配当の可能性
投資信託の分配金には、下記の通り「普通分配金」と「元本払戻金(特別分配金)」の2種類があります。
普通分配金
個別元本を上回る部分からの分配金。投資信託の元本の運用により生じた収益から支払われます。
元本払戻金(特別分配金)
個別元本を下回る部分からの分配金。
元本払戻金(特別分配金)は「投資した元本の一部払戻し」に当たるため、個別元本は減少します。

(出典:日本証券業協会)
分配金は運用益からしか出ていないと勘違いしている方も多いのですが、毎月分配型の投資信託は高い分配金利回りを維持するために投資元本が払い出されているケースも少なくありません。
そもそも、頻繁に分配金を払い出すことにより利益を確定する形になる毎月分配型投資信託は、複利の効果が下がるので運用効率が悪くなってしまう。
更に、特別分配金で元本が払い出されてしまうと、元本が減ってしまうので運用効率が更に下がってしまうことに。
金融リテラシーが低いと、タコ足配当の可能性があることを知らずに毎月分配金が受け取れると喜んでいたら、実は、受け取っていた分配金の一部は自分が投資した元本だったという笑えないオチが発生します。
上記のようなデメリットがあるので、毎月3~5万円程度を積み立てて資産を増やしていきたい若年層にはおすすめできない商品です。
高齢者向けに毎月分配型を解禁するメリット
私は資産を増やすよりも取り崩して使うフェーズの方が難しいと考えています。
理論的には、分配金を出さない投資信託を積み立てて定率や定額で取り崩していくのがベターだとは思います。
しかし、一度貯めた資産を取り崩して使うのが苦手な人も多いはず。
また、投資経験が浅い高齢者が定額か定率のどちらで取り崩すべきなのか問われても判断が難しいでしょう。
そういう意味では、元本を取り崩すリスクがあっても「運用しながら取り崩す」という高齢期の運用商品として「毎月分配型」の投資信託はアリだと思います。
高齢者向けに毎月分配型を解禁するデメリット
一方、毎月分配型は運用成績が芳しくなく売り手側だけが儲かるファンドが存在するのも間違いありません。
投資経験の浅い高齢者が自ら最適な「毎月分配型」の投資信託を選ぶことができるのでしょうか?
金融機関の窓口で相談して手数料の高い投信を買わされるだけというオチが安易に想像できます。
毎月分配型を対象に加えることを検討している理由は、年金を主な収入源としている高齢者のニーズが強いこと。
しかし、ネット界隈では「高齢者のタンス預金の炙り出しが目的」や「金融業界から解禁の要望があったのではないか」と言われています。
多くの方の資産運用は非課税枠が1800万円ある新NISAで完結するでしょう。
新NISAで人気の投資信託は低コストのインデックスファンドなので金融機関は儲からない。
金融機関側が少しでも儲けの大きいファンドをNISAの対象にして欲しいと考えるのは間違いありません。
また、制度を複雑化するのもいかがなものでしょうか。
年齢によって購入できる商品が異なると制度内容が分かりにくくなります。
もともとのNISA改正案として2階建ての複雑な制度が検討されていましたが、大変不評でした。
制度変更をするのであれば、シンプルに非課税枠を拡大するとか、対象年齢を広げる等にとどめるべきだと思います。
そういう意味では、今回の改正案の中で「つみたてNISA」の年齢制限撤廃は検討に値するでしょう。
そもそも老後にややこしい運用商品の選択が必要になるような社会保障制度に問題があります。
新NISAを改正する前に公的年金をしっかりと受け取れるような社会保障制度を検討すべきです。
まとめ

金融庁が高齢者向けの少額投資非課税制度(NISA)を創設する検討に入ったという報道がありました。
その名も「プラチナNISA」。
現行のNISAでは購入できない「毎月分配型」の投資信託を高齢者に限定して対象に加える案が浮上しています。
しかし、手数料が高い投信を高齢者が買わされるリスクもありますし、制度が複雑化するというデメリットもあります。
制度変更をするのであれば、シンプルに非課税枠を拡大するとか、対象年齢を広げる等にとどめるべきでしょう。
高齢者がカモになる可能性がある話を進める時間があるのであれば、国民が苦しんでいる経済状況を好転させる政策を考えることに集中して欲しいと思うのは私だけでしょうか。
自民党の資産運用立国議員連盟(岸田文雄会長)には政策の優先順位を考えて欲しいと思います。