岸田政権は「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)で『財政健全化の「旗」を下さず、これまでの財政健全化目標に取り組む』としています。
2021年の骨太方針では「2025年度に国・地方のプライマリーバランスを黒字化」が目標に掲げられていました。
2022年の骨太の方針から目標年は消えましたが、岸田政権がプライマリーバランスの黒字化を目指している事は間違いありません。
国の財政健全化を達成するためにプライマリーバランスの黒字化を目指すと聞くと素晴らしいことのように感じる方が多いでしょう。
しかし、日本経済をジリ貧状態に追い込んできた諸悪の根源がプライマリーバランスの黒字化。
プライマリーバランスの黒字化を目指す限り、日本の貧困化は止まらないでしょう。
そこで今回は、下記ポイントについて解説します。
- プライマリーバランスとは?
- プライマリーバランスを黒字化して財政破綻した国とは?
- プライマリーバランスを黒字化すると経済が低迷する理由
- 日本が復活するための方法とは?
- プライマリーバランス(基礎的財政収支)とは?
- プライマリーバランス黒字化を目指しているのは日本だけ!?
- ライマリーバランスを黒字化して破綻した国とは?
- プライマリーバランスを黒字化すると景気が悪化する理由とは?
- 失われた30年から日本を救う方法とは?
- まとめ
プライマリーバランス(基礎的財政収支)とは?
プライマリーバランス(基礎的財政収支)とは、行政が行うサービスにかかる経費を税収等で賄えているかどうかを示す指標。
財務省のHPには下記のように解説されています。
プライマリーバランス(PB)とは、社会保障や公共事業をはじめ様々な行政サービスを提供するための経費(政策的経費)を、税収等で賄えているかどうかを示す指標です。現在、日本のPBは赤字であり、政策的経費を借金で賄っている状況です。
(出典:財務省)
プライマリーバランスの黒字化を目指すということは簡単に説明すると、国債に頼らずに国の経費を賄うこと。
個人で例えるのであれば、年収の範囲内で支出を抑えるということになります。
日本では平成13年にプライマリーバランスの黒字化が目標に設定され、緊縮財政のもと政府支出の抑制や増税といった手段で、財政赤字の削減や財政黒字の拡大を目指してきました。
プライマリーバランス黒字化を目指しているのは日本だけ!?
プライマリーバランス(PB)の黒字化という目標は日本だけでなく、欧米などでも採用されているのでしょうか?
実は、この奇妙な目標を掲げているのは日本だけ。
日本以外の諸外国がこのPB黒字化目標を掲げない理由は、次項以降の内容を読めば分かるでしょう。
ライマリーバランスを黒字化して破綻した国とは?
PBを黒字化して財政を健全化すると聞けば、いいことのように思えます。
しかし、PBを黒字化して財政破綻した国があります。
それがアルゼンチンとギリシャ。
アルゼンチンは、歳出削減に励み2001年にPBの黒字化を達成。しかし、その年の暮れに財政破綻しました。
一方、ギリシャは増税と歳出削減に励み、2013年にPB黒字化を達成。しかし、2015年に事実上の財政破綻に陥りました。
プライマリーバランスを黒字化すると景気が悪化する理由とは?
なぜ、PBの黒字化を達成し、財政を健全化した国が破綻してしまうのでしょうか?
実は、プライマリーバランスを黒字化すると、その国の経済状況は悪化します。
その理由は、PB黒字化を目指して緊縮財政を行うと世の中のお金の流れを悪くしてしまうから。
財政を健全化するために国が歳出を削減したり増税をすれば、国内に出回るお金の量が減ります。
お金は経済の血液。血液が不足すれば人間は体調を崩すでしょう。
それと同じで経済の血液であるお金の量を減らす行為は国内経済を減速させることにつながります。
国内経済が停滞すれば、個人は消費を抑え、企業は設備投資を抑制。
結果、企業の収益悪化につながり、従業員の給与も上がりません。
企業の収益が落ち、従業員の給与が下がれば、国の税収(法人税や所得税など)も落ちます。
皮肉なことに財政を健全化しようと緊縮財政を行えば行うほど却って財政は悪化することに。
これは緊縮財政によりPBの黒字化を達成して破綻したアルゼンチンとギリシャの例が証明しています。
日本もバブル崩壊以降に行われてきた緊縮財政により国内経済は疲弊して失われた30年と言われています。
今後も緊縮財政が行われる限り、下記のような負のスパイラルから日本経済が抜け出すことはできないでしょう。
消費税を上げる
⇓
GDPの6割を占める消費が落ちる
⇓
企業の収益が落ちる
⇓
収益が落ちた企業は人件費や設備投資を抑制する
⇓
国の税収(法人税や所得税など)が落ちる
⇓
税収が落ちた為、更に消費税を増税する
⇓
GDPの6割を占める消費が更に落ちる
⇓
企業の収益が更に落ちる
⇓
・・・以下、上記の繰り返し
緊縮財政は絶対悪なのか?
この30年間、日本を苦しめてきたのが緊縮財政。
しかし、緊縮財政は絶対悪なのかというと、そういうわけではありません。
あくまでも経済対策の手法の1つ。
重要な事は、「緊縮財政はインフレ対策」であり「積極財政はデフレ対策」という点。
日本のバブル時代のように景気が過熱し過ぎた際には緊縮財政を行い、インフレを抑える対策を行うことが有効。
例えば、政府は国債の発行を控え、更に世の中に回り過ぎるお金を間引くために消費税を増税すれば、景気の過熱は冷めるでしょう。
実は、デフレで苦しんでいる日本で行われてきたことがインフレ対策である緊縮財政でした。
全く真逆の政策が行われてきたので、日本の景気は低迷し続け、約30年間も不況に苦しんできたわけです。
失われた30年から日本を救う方法とは?
デフレの日本に必要な政策は積極財政。インフレ対策である緊縮財政ではありません。
政府の大胆な財政出動を呼び水として、個人や企業が積極的にお金を使う状況を作り出す必要があります。
では、財政出動の財源は何か?それは国債です。
国債をこれ以上発行すれば、日本は財政破綻(デフォルト)すると反対する方がいます。
しかし、下記記事で解説した通り、自国通貨建ての国債を発行できる日本が財政破綻(デフォルト)することはありません。
よって、3~4%程度のインフレ率になるまでは国債を発行して財政出動することでデフレ不況を脱する必要があります。
自国通貨建ての国債を発行している国の財政破綻(デフォルト)はないので、国債残高や対GDP比率を考慮する必要はなく、インフレ率を目標に財政出動すべきです。
まとめ
日本が約30年間も不況に陥ってきた原因が分かれば、復活させることも可能。
日本を苦しめてきた原因は、プライマリーバランスの黒字化という間違った目標のために行われきた緊縮財政。
デフレに苦しむ日本に必要な政策は、緊縮財政ではなく積極財政です。
プライマリーバランスの黒字化は目標にすべきものではありません。
日本全体が豊かになれば、税収が増えて結果的にPBは黒字化します。
豊かな日本を取り戻すためには、国民のために仕事をする政治家を国会に送り込む必要があります。
そのためには、我々有権者が選挙権を行使する事が重要。
参議院選挙では我々を豊かにしてくれるであろう候補者と政党を選び、一票を投じる必要があります。