
自由民主党の高市早苗総裁(64)が第104代首相に指名されました。
日本で女性の首相が誕生するのは憲政史上初めてで、「これで日本も変わるかも」と多くの人が期待を寄せていることでしょう。
そんな中で、高市首相が掲げている「責任ある積極財政」が注目を集めています。
高市新首相の経済政策によって、30年超も低迷してきた日本経済は本当に復活できるのでしょうか?
今回の記事では、所信表明演説で語られた経済政策の面から日本経済復活の可能性を解説します。
高市新首相に期待している方は参考にしてください。
責任ある積極財政とは?
高市首相の経済政策の柱となるのが「責任ある積極財政」。
所信表明演説で高市首相は次のように述べています。
この内閣では「経済あっての財政」の考え方を基本とします。「強い経済」を構築するため「責任ある積極財政」の考え方の下、戦略的に財政出動を行います。これにより、所得を増やし、消費マインドを改善し、事業収益が上がり、税率を上げずとも税収を増加させることを目指します。
これまで財務省主導の緊縮財政が続き、歳出削減や増税によって財政収支の均衡を目指してきました。
しかし、高市政権は経済を成長させることで結果的に税収を増やすという、従来とは逆の方針を打ち出しました。
片山さつき財務相も、経済対策のための補正予算について「財源が足りなければ国債を増発して対応する」と表明。
さらに「成長しない日本を未来に残すことの方が(借金よりも)もっとツケだ」と述べ、積極的な財政出動に前向きな姿勢を示しています。
そもそも国債は政府の債務という形をとった単なる通貨発行。
景気が低迷し民間が支出絞っている時は、政府が国債を発行(通貨発行)して支出を増やすことで需要を支えなければ、日本のように国力が衰退してしまいます。
一方、景気が過熱している際には、歳出削減や増税が必要。
「積極財政」と「緊縮財政」のどちらが正解ということではなく、景気の状況を考慮しながら「積極」と「緊縮」を使い分けるのが本来の経済政策。
これを機に日本でも当たり前の経済政策を取り戻して欲しいと思います。
では、次項以降で高市政権の経済政策で日本経済が復活するのかを解説します。
ガソリン税の暫定税率廃止と「年収の壁」引き上げ
ガソリン税の暫定税率廃止
所信表明演説では、ガソリン税の暫定税率について今国会での廃止法案成立を目指すとしています。
しかし、小野寺政調会長は暫定税率廃止時期を「来年1月半ば」とする案を提示。
減税分の代替財源を探すという不毛な議論が出始めています。
金融所得課税の強化が検討されていますが、「減税には代替財源が必要」という間抜けな前例を作れば、全ての減税で代替財源が必要となります。
そうなれば、真の意味での国民負担を減らす減税など夢物語となるでしょう。
また、2024年度まで国の税収は5年連続過去最高を更新。
不況下で税収を増やすなど正気の沙汰ではありません。
よって、代替財源の議論など不要で、早急に暫定税率を廃止すべきです。
「年収の壁」引き上げ
「年収の壁」については、今年の年末調整は103万円から160万円への引き上げで対応。
「基礎控除を物価に連動した形で更に引き上げる税制措置について真摯に議論を進める」としていて国民民主党の主張する178万円まで引き上げるかは不透明な情勢。
仮にガソリン税の暫定税率廃止(約1.5兆円減税)と「年収の壁」(178万円へ)引き上げ(約7.6兆円減税)が実現すれば、合計で9.1兆円規模の減税。
しかし、30年以上も経済停滞が続く日本を本気で立て直すには、まだ十分な規模とはいえません。
給付付き税額控除で物価高から庶民は救われる?
自民党が今夏の参院選で公約に掲げた国民一律1人2万円の給付金は国民の理解が得られなかったとして見送り。
代わりに「給付付き税額控除」の制度設計に着手するとしています。
下記記事で解説した通り、この制度は導入までに数年かかるとされており、今まさに物価高で苦しむ庶民を救う即効性はゼロ。
集めて配る権限を手放したくない財務省は消費税などの恒久減税は最も避けたい政策で、政治家にこの制度を推しているのでしょう。
私たち庶民は現在進行形で物価高に苦しんでいる状況で、早急な物価高対策を求めています。
政治家たちの悠長な議論を見ている余裕はありません。
また、給付付き税額控除は消費税率引き上げを決めた2012年の社会保障・税一体改革大綱で「検討」された政策でした。
その目的は消費税の逆進性を和らげるため。
表向きは低所得者を手厚く支援するとしていますが、裏を返せば将来的な消費税増税の布石となる可能性もあります。
消費税減税には言及せず
所信表明演説では、消費税減税には一切触れられませんでした。
総裁選時から高市さんは、物価高対策としての消費税率引き下げについて「選択肢として放棄しない」と述べつつも慎重な姿勢を崩していません。
また、日本維新の会との連立合意で検討項目に入っていた「食料品の消費税ゼロ」も事実上の先送りと報じられています。
積極財政派の高市さんであれば、消費税が日本経済停滞の最大の原因と分かっているはず。
しかし、以前「消費税は社会保障の財源」と詭弁を弄したこともあり、消費税減税には後ろ向きな印象。
さらに、財政規律を重視する麻生副総裁や麻生氏の義弟である鈴木俊一前財務相を幹事長に起用。
「第2次麻生政権のようだ」と揶揄されていて消費税減税の実現は極めて難しい状況。
先述の通り、ガソリン税の暫定税率廃止(約1.5兆円)と「年収の壁」引き上げ(約7.6兆円)が実現したとして、減税額は合計9.1兆円程度。
しかし、30年以上も停滞している日本経済を立て直すには規模が足りません。
仮に消費税を一律5%に引き下げれば約12兆円の減税効果が見込まれ、合計で20兆円規模の景気刺激が可能になります。
また、インボイス制度の廃止によって事務負担も軽減され、生産性の向上にもつながります。
消費税は赤字企業でも納税義務があり、中小企業には特に過酷な税金。
この税負担を軽くすれば、中小企業の賃上げにつながるでしょう。
賃上げと「年収の壁」引き上げによる可処分所得増が実現すれば、『個人消費増→経済成長→税収増加→財政健全化』という好循環が生まれます。
つまり、経済を立て直すことこそが財政を健全にする最善の道。
まさに「経済あっての財政」なのです。
まとめ

日本初の女性首相となった高市早苗氏が掲げる「責任ある積極財政」は、30年以上続く日本の経済停滞を打ち破る可能性を秘めています。
しかし、「緊縮財政」を続けてきた自民党という組織の中で、本当に国民のための「積極財政」を貫き通せるのかどうかは未知数。
私たちにはこれ以上、自民党に騙されている時間的な余裕はありません。
30年超の経済停滞で、国民の貧困化は現在進行形で進んでいます。
高市首相が誕生したのは、選挙を通じて国民が現状の政治に「No」という意思表示をした結果。
我々国民が「主権者」として政治家をコントロールする意識を持ち、その仕事ぶりを厳しく監視し続ける必要があります。
「高市さんであれば、やってくれる」と期待するだけでなく、国民のために働くのであれば後押しし、組織の論理に流されるのであれば「No」を突きつける。
その姿勢こそが、日本復活の鍵となります。