
「国民年金(老齢基礎年金)が初の7万円超え」というニュースを聞いて、「これで少しは生活が楽になるかも」と感じた方もいるのではないでしょうか。
しかし実は、年金額が増えても手放しでは喜べません。
その理由は、公的年金の増え方が物価上昇に追いついていないから。
さらに、この問題は高齢者だけでなく、現役世代の生活や将来の収入にも関係しています。
今回は、老齢基礎年金が7万円を超えても生活が楽にならない理由と、年金減額が現役世代に与える悪影響について解説します。
「社会保険料の負担が重すぎる」と嘆いている方は参考にしてください。
1. 年金額が増えても生活が苦しい理由とは?
2026年度最初の公的年金が6月15日に支給されました。
今年度の「基礎年金(国民年金)」は満額の場合で月額7万608円となり、初めて7万円を突破。
2025年度と比べて1.9%(金額にして1,300円)の増額です。
これで少しは生活がラクになるかもと思う方もいるでしょう。
しかし、実際には生活が楽になることはありません。
その理由は、年金額が決まる仕組みにあります。
公的年金の額は物価や賃金の動きに合わせて調整されます。
2025年に物価は3.2%上昇。
それに対して、老齢基礎年金の増額幅は1.9%に留まっています。
物価上昇に比べて年金額の上昇幅が小さい理由は、名目賃金が2022〜2024年度に平均で2.1%しか上がっていないから。
物価・賃金ともに上昇した場合、すでに年金をもらっている人に関してはどちらか伸びの小さい方に合わせて年金額を改める仕組みになっています。
更に「マクロ経済スライド」が4年連続で発動されたため、年金額の上昇幅は1.9%に抑えられました。
マクロ経済スライドとは?
2004年から導入された制度で現役世代の減少や平均寿命の延びに合わせて年金の給付水準を調整する仕組み。
マクロ経済スライドについては、以下の動画で分かりやすく解説されているので、ご覧ください。
買い物をすると時の物価が3.2%も上がっているのに、年金は2%弱しか増えない。
これでは、「年金の額は増えたのに、実際に買えるモノの量は減っている」という状態。
これこそが、年金が増えても生活が苦しいままである理由。
実質的には年金額はマイナス改定になっているのが実態です。
2. 公的年金を減額すると現役世代にも悪影響がある
「現役世代の給料(実質賃金)もマイナス傾向なんだから、高齢者の年金が実質的に減るのは当たり前だ」と思う方もいるかもしれません。
しかし、その考え方はブーメランのように現役世代自身の生活を直撃します。
その理由は大きく分けて2つあります。
①高齢者の消費が減る
老齢年金が実質的に目減りすれば、日本人口の大きな割合を占める高齢者の財布の紐は固くなってしまう。
日本のGDPの5割超は個人消費。
高齢者の消費が落ち込めば、日本経済(GDP)に対しても悪影響が出ます。
結果的に企業業績にマイナスの影響が出て、現役世代の給料の伸びが鈍化することにつながります。
②現役世代も老後不安で節約に走る
さらに現役世代の「心理」にも悪影響を与えます。
高齢者の年金が実質的に削られる状況を見て現役世代はどう感じるでしょうか?
「国には頼れないから、今のうちから節約して老後に備えなければ」と考える人が増えるでしょう。
将来不安を抱えた現役世代は今使えるはずのお金まで将来の備えとして貯蓄や投資に回すようになります。
マイホーム、旅行、外食……あらゆる消費を現役世代が自粛するようになれば、経済はさらに冷え込んでいく。
結果的に日本経済は停滞、企業の業績は伸びず、現役世代の賃金上昇は抑えられます。
「高齢者の負担を上げれば、現役世代がラクになる」というのは完全な幻想。
高齢者を貧しくする政策は結果的に現役世代の「将来不安」を増幅し、日本全体の消費を減退させる自殺行為にほかなりません。
3. 現役世代だけでなく高齢者も豊かにする経済政策とは?
高齢者と現役世代、どちらかを犠牲にする必要はありません。
国(政府)が正しい経済政策を行えば、全世代を同時に豊かにすることができます。
本来、国(政府)が行うべき経済政策は下記のようにシンプルなものです。
- 景気停滞時 ⇒ お金を出す(減税・歳出増)
- 景気過熱時 ⇒ お金を回収する(増税・歳出減)
景気が停滞しているときは、国(政府)が民間の不足分を補うようにお金を供給して景気を下支えする。
反対に、景気が過熱し過ぎている場合は、お金を回収(増税など)する形で経済を冷やす。
通貨を発行できる国(政府)は民間と逆の動きをして景気を調整するのが重要な役割。
現状の日本では、長引く物価高によって多くの国民が生活防衛を余儀なくされて消費を控える傾向が続いています。
将来への不安も大きく、経済は停滞している状況。
そのため、今求められているのは、国(政府)がお金がを出して国民の手取りを増やす政策。
例えば、下記のような政策が有効です。
- 消費税減税・廃止
- 「年収の壁」引き上げ
- 社会保険料減免
早急に約50%という高い国民負担率(国民所得に対する税負担と社会保険料負担の割合)を引き下げ、国民の可処分所得を増やす政策を行う必要があります。
減税や財政出動(積極財政)によって経済が活性化して国民の所得が増えれば、多少の物価高は吸収可能。
積極財政の財源を心配する方がいますが、財源は国債一択。税収が足りなけば国債を発行すればいい話。
積極財政で経済が成長すれば、税収も上がります。まさに「経済あっての財政」なでのです。
これまでの日本では景気が停滞する中「バカの一つ覚え」のように、ひたすら増税や社会保険料の引き上げを行ってきました。
つまり、景気が停滞する状況下で景気過熱時に行うべき経済政策を続けてきたのです。
これが「失われた30年」の最大の要因。
「失われた40年」にしないためにも、国(政府)は全世代を豊かにする当たり前の経済政策を行うべきです。
まとめ

年金額は名目上増えていても、マクロ経済スライドの影響などによって実質的な生活は楽になっていません。
そして、年金の実質的な削減は高齢者だけの問題ではありません。
高齢者を貧しくする政策は、巡り巡って現役世代の生活にも悪影響を及ぼします。
「高齢者の負担を上げれば、現役世代がラクになる」というのは完全な幻想。
怒りの矛先を向ける方向を間違えてはいけません。
世代間でいがみ合っている場合ではないのです。
本来、批判すべきなのは長年にわたり日本人を貧困化させてきた政治家と、その政策を主導してきた財務省。
誰かを貧しくしたからといって、誰かが豊かになるわけではありません。
経済はつながっていて、誰かが貧しくなれば、そのシワ寄せは巡り巡って自分自身にマイナスとなって降りかかる可能性があります。
今の日本に必要なのは、国(政府)が減税などの積極財政で全世代の「手取り」を増やして将来の安心感を取り戻すこと。
「まずは国民を豊かにしろ」という当たり前の声を、全世代が連帯して上げていくことこが日本の未来を救う道です。