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【お宝保険】保険を見直す際に解約すべきでない契約とは?


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保険の見直しというと古い契約を解約して最新の保障がある保険に加入することと考える方がほとんどでしょう。

 

古い商品より新しい商品の方が高性能で良いというイメージがあると思います。

 

しかし、保険の場合には古い商品の中に解約すべきでない「お宝保険」が存在します。

 

見直し時には解約すべき保険だけでなく、残すべき保険の見極めも重要。

 

今回は、以下の本を参考に残すべき「お宝保険」について解説します。

『やれば得する!保険の見直し100の鉄則 竹下さくら』

 

 

お宝保険とは?解約すべきでない?

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「お宝保険」とは、1999年3月までに契約した貯蓄性の高いタイプの積立型保険こと。

 

お宝保険の時代は下表の通り、現在よりも予定利率が高く設定されていました。

 

予定利率とは、保険会社が契約者から受け取った保険料を運用する際に約束する利率(利回り)のこと。

 

予定利率が高ければ解約返戻金が多くなったり、保険料が割安になります。

 

つまり、お宝保険は貯蓄性が高く、保険料も割安になります。

契約期間 保険期間ごとの予定利率
10年以下 20年以下 20年超
~1952年3月 3% 3% 3%
1952年4月~1976年3月 4% 4% 4%
1976年4月~1981年3月 5.5% 5.5% 5%
1981年4月~1985年3月 6.0% 5.5% 5%
1985年4月~1990年3月 6.25% 6% 5.5%
1990年4月~1993年3月 5.75% 5.5% 5.5%
1993年4月~1994年3月 4.75% 4.75% 4.75%
1994年4月~1996年3月 3.75% 3.75% 3.75%
1996年4月~1999年3月 2.75% 2.75% 2.75%
1999年4月~2001年3月 2% 2% 2%
2001年4月~2013年3月 1.5~1.75%
2013年4月~2017年3月 1.0~1.5%
2017年4月~ 0.25%(標準利率)を基に各社で個別に設定

(出典:やれば得する!保険の見直し100の鉄則)

 

予定利率5.5%と1.5%契約例比較

本書では、予定利率が5.5%と1.5%の養老保険の比較が掲載されています。

 

なお、養老保険とは保障額と満期保険金が同額の保険こと。

 

例えば、保険金額100万円の養老保険であれば、保険期間中の保障額が100万円で満期時に満期保険金100万円を受け取れます。

 

養老保険 契約例】
被保険者:30歳・男性
保険金額:100万円
保険期間:30年

 

予定利率:1.5%
月額保険料:約2,600円
払込総額:約94万円

 

予定利率:5.5%
月額保険料:約1,630円
払込総額:約59万円

 

予定利率が5.5%の場合、59万の払い込みで満期時に100万円を受け取れます。一方、予定利率が1.5%の場合、94万の払い込みで満期時に100万円の受け取りに。

 

予定利率が4%違うと、上記のような差が発生します。

 

予定利率は銀行預金の金利とは違うので、保険料にそのまま適用されるわけではありません。

 

よって、上記の契約例(予定利率:5.5%)の実質の運用利回りは約3.3%。確定利回りで3.3%であれば、かなり高利回りといっていいでしょう。

 

積立型保険は悪というイメージが蔓延していますが、本当に不要な契約かを冷静に判断する必要があります。

 

世間のイメージに流されず、自身にとっての要否を判断する事が重要です。

 

積立型保険だからという理由だけで何も考えずに解約することは避けた方がいいでしょう。

 

 

見直すべき保険とは?

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上記のように安易に解約すべきでない契約がある一方で、下記契約のような事例もあるので注意が必要です。

 

【学資保険 契約例】
学資金受取総額:300万円
保険期間:18年
保険料払込期間:10年
契約者:男性(35歳)
被保険者:男性(0歳)
特約:保険料払込免除特則付
月額保険料:25,510円
返戻率98.0%

 

上記は、35歳の父親が生まれてきた0歳の子供のために学資保険に加入するというシミュレーション。 

 

上記契約例だと、保険料の払込総額は3,061,200円となります。

 

つまり、満期保険金300万円受け取るのに、約306万円支払わなければなりません。

 

日銀の金融緩和の影響で、非常に金利が低い状態が続いているため、学資保険の返戻率も下がっています

 

学資保険には契約者である親に万が一のことがあった場合、その後の保険料支払いが免除されるという保障機能があるので、数%程度の元本割れであれば、許容範囲内と思われる方もいるかもしれません。

 

しかし、学資保険に保障機能が付いていたとしても、支払った額以上の学資金が戻ってくることを期待して加入する方がほとんどのはず。

 

残念ながら、上記のような契約を元本割れするとは思わずに加入されている方を何人も見てきました。

 

販売者側の加入時の説明が足りないということもありますが、学資保険は元本割れしないはずという先入観を持っている方がいるのも現実です。

 

 

生命保険の転換はデメリットしかない?

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一般的に家電などは古いものよりも新しいものの方が機能や性能が上がります。

 

しかし、上記事例のように保険は古い契約の方が新しい契約よりも価値がある場合もあります。

 

原則、現在のように低金利が継続しているような状況で転換など既契約を変更することは契約者にとって不利益になる可能性が高いと思った方がいいでしょう。

 

家族が増えたら保障を増やすとか、子供が独立したから保障を減らすなどの見直しは問題ありません。

 

しかし、「新しい保険が出たので見直しませんか」という提案は契約者にとって不利益になる可能性大。

 

現在の契約をいじればいじるほど、契約者が損をして販売者側が利益を得るという利益相反の構図が発生し得ます。

 

なお、生命保険の転換制度とは、現在の契約を活用して、新たな保険を契約する方法です。

 

現在の契約の積立部分や積立配当金を「転換(下取り)価格」として新しい契約の一部にあてる方法で、元の契約は消滅します。

 

新しい契約の保険料に現在の契約の積立部分や積立配当金を充当するため、新規で契約するより保険料負担は軽減されます。

 

転換により新しい契約は、現在の契約よりも保険料が安く、保障が大きくなっているように思えても、実は転換方法にカラクリがある可能性があります。

 

転換時には契約者にとっては、予定利率が下がったり、契約内容が変更されるなどのデメリットが発生する場合がありますので、注意が必要です。

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まとめ

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保険は家電などのように最新の商品が必ずしも一番優れているというわけではありません。

 

古い保険の中には、解約すべきでない「お宝保険」が存在します。

 

また、現在のように低金利が継続しているような状況で転換など既契約を変更することは契約者にとって不利益になる可能性が高いと思った方がいいでしょう。

 

「最新の保障内容見直しませんか?」というセールストークには注意が必要。

 

見直しをすることにより、契約者にとって不利になる可能性もあります。

 

予定利率が積立型保険に与える影響を知り、見直すべき保険と残すべき保険の見極めをして頂ければと思います。