
「身を切る改革」が再び政治論点になっています。
日本維新の会が連立の条件として掲げたのが「議員定数の削減」。
「税金の無駄遣いが減る!」「政治家が身を切るのは当然!」と賛成の声も多いようです。
一見すると良策に思えるこの改革は、私たちの生活を豊かにし、日本の政治を改善させるのでしょうか?
残念ながら、議員定数を削減しても私たちにメリットはありません。
それどころか、デメリットをもたらす可能性があります。
そこで今回の記事では、下記ポイントについて解説します。
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定数削減の狙いは?日本の国会議員は多い?
- 議員定数削減によるデメリットとは?
「日本の国会議員の数は多すぎる!」とお怒りの方は参考にしてください。
定数削減の狙いは?日本の国会議員は多い?
議員定数削減の狙いはどこにあるのでしょうか?
まず、日本の国会議員の数は他の国と比べて多いから減らすべきという意見があります。
実は、下図の通り日本の国会議員の数が多いということはありません。

(出典:図録▽国会議員数の国際比較)
人口100万人当りで比較すると、先進国の中ではアメリカに次いで議員数が少ない状況です。
次に議員数を減らすことによる経費削減効果を確認したいと思います。
日本維新の会が求めているのが衆院議員議数を比例で50削減すること。
仮に1人あたりの年間経費を1億円としても、削減額は約50億円。
しかし、日本の2025年度の予算額は約115兆円。
予算額と比較すると、削減額は「誤差」と呼べるレベルです。
こんな誤差レベルの議員削減に時間をかけても、国民の生活は良くなりません。
確かに役に立っていないムダな国会議員がいるのは事実。
多くの国民が「無駄な議員を減らしてほしい」と感じるのは当然のこと。
政治家が「身を切る覚悟」を示せば、国民の気分は一時的に良くなるかもしれません。
しかし、現状の日本に必要なことは、国民の生活を豊かにするための「効果的で具体的な政策」をスピーディーに実行することです。
残念ながら、国会議員を50人減らしても豊かな日本を実現することにはつながりません。
現状の日本で議員定数を削減することに大きなメリットはなく、国民受けを狙った単なるパフォーマンスといっていいでしょう。
議員定数削減によるデメリットは?
議員定数削減には大きなメリットがない一方で、下記のようなデメリットがあります。
少数の声が届かなくなる
議員の数が減ると、議員一人あたりが代表する有権者数(国民の数)が増えます。
これにより、特に地方や人口の少ない地域、そして社会の少数派の意見を丁寧に拾い上げる「パイプ役」が不足し、国民の多様な声が政治に届きにくくなる恐れがあります。
また「多様な民意の反映」という民主主義の基本的な原則が損なわれる原因になりかねません。
新陳代謝が起こりにくくなる
定数削減は現職議員の強みをさらに増し、若年層や女性といった新しい候補者の議会進出を難しくする可能性があります。
また、選挙制度の見直しをせずに比例の定数だけを削れば、既存の大政党が有利になり、少数政党は数を減らすことになるでしょう。
小選挙区では、三バン(さんバン)「ジバン(地盤)、カンバン(看板)、カバン(鞄)」を持つ世襲議員が圧倒的に有利。
議員定数を削減すると、無能な世襲議員(一律に世襲議員を批判する意図はありません)が消えると期待している人がいるかもしれません。
しかし、現実は国民が消えて欲しいと思う議員が残り、頑張って欲しいと思う議員が消えていくことになるでしょう。
結果として、既存の政治勢力が固定化されやすくなり、政治への新しい風、つまり新陳代謝が起こりにくくなります。
緊縮財政へとつながる危険性がある
「身を切る改革」という言葉は聞こえが良いですが、その裏には「政治家だけでなく、国の予算も徹底的に削るべき」という考え方が潜んでいます。
つまり「身を切る改革」は「緊縮財政」へとつながっていきます。
日本はバブル崩壊後、「緊縮財政」を続けてきました。
その結果が、「失われた30年」と呼ばれる日本の経済停滞と日本人の貧困化です。
公共事業費を削った結果、道路や橋の老朽化が進み、八潮市などで道路陥没事故が発生。
また、農業予算を減らしたことで米の供給が不安定になり、価格が急騰。災害が起きてもいないのに備蓄米を放出する事態になりました。
さらに、緊縮増税政策によって 国民の可処分所得は減少。物価だけが上がり、家計は疲弊しています。
バブル崩壊後に続けられてきた緊縮財政こそ「失われた30年」を生んだ最大の原因。
「失われた30年」を反省することなく過ちを繰り返せば、「失われた40年」へと突き進むことになります。
議員定数削減などの「身を切る改革」は結果的に国民の生活をさらに困窮させることにつながるでしょう。
議員数ではなく歳費(給与)を削れ
他の先進国と比較して日本の国会議員数は少ない一方で、歳費(給与)は高いという現実があります。
下記の通り、G7の中で突出して高いのが日本。
- 日本:約3014万円
- アメリカ:1914万円
- ドイツ:1466万円
- イタリア:1576万円
- カナダ:1437万円
- フランス:1085万円
(出典:東洋経済オンライン)
他の先進国が経済成長を続けている中で、日本は「失われた30年」と言われる長期的な経済停滞により国民の平均年収が伸び悩んでいます。
先進国で唯一経済成長していないのに、議員の報酬だけが高い水準にあるという矛盾が発生。
よって、議員数を減らすのでなく、歳費を減らす方が合理的。
身を切りたければ、歳費を一律2割程度カットすればいいでしょう。
それでも他の先進国に比べて高水準です。
また、議員の定数や年収を減らすのではなく、給与を国民の平均賃金に連動するようにしてもいいでしょう。
国税庁の民間給与実態調査(令和6年分)によれば、日本人の平均年収は478万円。
「国会議員の年収は国民平均の3倍まで」と決めれば、議員の収入は約1,400万円になります。
国会議員が3000万円の年収が欲しければ、国民の平均年収を今の約2.1倍にする必要があります。
議員を一律減らすという考え方よりも日本経済が良くなるのは間違いありません。
待遇が保障されるから身の保身に走る。
国民が豊かになることによって議員たちも豊かになるようにすれば、国民のためになる仕事ととは何かを真剣に考えるようになるでしょう。
まとめ

衆議院議員の定数は最多の512人から現状の465人まで削減されてきました。
現状の日本で議員定数をさらに削減することに大きなメリットはありません。
国民受けを狙った単なるパフォーマンスといっていいでしょう。
メリットがない一方で、「少数の声が届きにくくなる」や「新陳代謝が起きにくくなる」などといったデメリットの方が大きくなります。
私たち国民は一時の感情に流されず、真に日本を豊にする政策を見極めていくことが肝要です。