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【手取り減】「106万円の壁」撤廃で人手不足は深刻化する!?


政府・自民党は年金制度改革関連法案を閣議決定し、5月16日に国会に提出。

 

今国会での成立を目指す方針です。

 

与党内で慎重論が強かった就職氷河期世代らの低年金対策である基礎年金の底上げは、検討段階で削除されました。

 

パートなどで働く短時間労働者の厚生年金加入を増やすよう「年収106万円の壁」と呼ばれる賃金要件を撤廃することなどが柱となっています。

 

「106万円の壁」撤廃は良いことのように報道されていますが、私たち国民にとって短期的には負担増(手取り減)になります。

 

「106万円の壁」について、「税金の壁」や「社会保険の壁」などの「壁」が多過ぎて一般の方にはわかりにくく、よく理解できていない方も多いでしょう。

 

そこで今回の記事では「106万円の壁」撤廃について解説します。

 

これ以上の負担増は断固拒否したいと思っている方は参考にしてください。

 

 

「106万円の壁」撤廃とは?

106万円の壁」とは、年収が106万円を超えると社会保険(健康保険や厚生年金)の加入義務が発生する基準のこと。

 

具体的には下記の通り。

 

勤務時間や日数が一般社員の4分の3未満である短時間労働者(パート・アルバイト等)の場合、現在は下記のような条件で厚生年金健康保険に加入する必要があります。

  1. 1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であること
  2. 1カ月当たりの賃金が88,000円以上であること
  3. 学生でないこと
  4. 従業員数が常時50人超の事業所(特定適用事業所)で働いている

 

上記の収入要件は月収8万8000円以上ですが年換算で106万円弱なので「106万円の壁」と呼ばれています。

 

今回の改正案では「106万円の壁」を撤廃

 

労働時間が週20時間以上なら年収を問わず厚生年金に加入することになります。

 

働き方の多様化を踏まえ、「106万円の壁」と呼ばれる賃金要件を法律の公布から3年以内に撤廃するとしています。

 

また、従業員51人以上としている企業規模の要件も2027年10月から段階的に緩和して10年後になくすことを明記。

  • 従業員36~50人の企業:2027年10月~
  • 従業員21~35人の企業:2029年10月~
  • 従業員11~20人の企業:2032年10月~
  • 従業員:1~10人の企業:2035年10月~

 

つまり、関連法案が成立すれば最終的に社会保険の加入義務が発生する基準が下記の通りになります。

  1. 1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であること
  2. 学生でないこと

 

 

「106万円の壁」撤廃による社会保険料負担額は?

「106万円の壁」撤廃で社会保険料の負担額はどの程度増えるのでしょうか?

 

年収が106万円未満だったとしても20時間以上働けば厚生年金・健康保険料が差し引かれることになり、手取りが減ります

 

影響が大きいのは時給が低い人

 

週20時間以上働くと仮に年収90万円でも社会保険料が差し引かれることになります。

 

例えば、現在の「106万円の壁」手前の105万円で働くのに比べ壁を少し超えた110万円で働くと、収入は5万円増えます。

 

しかし、厚生年金・健康保険料が約16万円発生し手取りが差し引き10万円強減ることに。

 

手取り減を補うには年収125万円まで働く必要があります。

 

年間20万円分余分に稼ぐためには時給1,000円換算で年間200時間。

 

子育てや介護などで収入減を補えるほど働く余裕がない人もいるでしょう。

 

社会保険に加入することによるメリットとして老後の年金が増えることや健康保険の保障が手厚くなることは間違いありません。

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しかし、物価高に苦しむ私たち庶民にとっては今の手取りが増えることも重要

 

国民が悪性のインフレに苦しむ中、今回の改正で負担増を強いる必要があるのかを再考する必要があります。

 

 

「106万円の壁」撤廃で人手不足は深刻化する!?

今回の改正は短時間労働者だけではなく、企業とくに中小零細企業に大きな影響を与えます。

 

「106万円の壁」が撤廃されれば、働く時間を週20時間未満に抑える人が出ることが予想されます。

 

そうなれば、更なる人手不足を誘発します。

 

保険料負担を避ける働き控えを防ぐため、労使折半となっている保険料を企業側が3年間より多く負担できる仕組みを来年10月以降に設け、企業側が多く負担した分は全額、国(政府)が支援するとしています。

 

しかし、3年後はどうなるのでしょうか?

 

国の支援がなくなった後、短時間労働者の保険料を多く負担できない中小零細企業は人手不足の影響をモロに受けることに。

 

人手不足倒産が増えることになってしまいます。

 

 

まとめ

短時間労働者は配偶者などの扶養者の税金や社会保険料の負担が増える中、少しでも手取りを増やすために働いている方が多いでしょう。

 

その目的を嘲笑うかのような今回の改正案。

 

国民の負担が減るような減税については遅々として議論が進まず、負担増の話になるとあっという間に話が進んでいきます

 

与党の自民党だけでなく最大野党の立憲民主党までもが、国民の負担増につながる基礎年金の底上げ策を年金制度改革法案に盛り込めという始末。

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今回の改正案の目的は「働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成等の多様化を踏まえた年金制度を構築する」などと綺麗ごとを並べていますが、社会保険料の負担者を増やしたいのが見え見え。

 

人口が減少することは数十年前から分かっていたこと。

 

少子高齢化により社会保障費は増大し、保険料を負担する現役世代が減る問題に対して対処する時間は余りあるほどあったはず。

 

しかし、問題解決を先送りし、ここまで問題を深刻化させた原因は国(政府)の失政。

 

そのツケを全て国民に押し付けるとは言語道断!

 

国民が賢くなり、反対の声をあげなければ、日本人はますます貧困化していきます。

 

また、自民党と立憲民主党が大連立を組むという噂も流れ始めています。

 

ザイム真理教に洗脳された緊縮脳の政治家が支配している自民党と立憲民主党が大連立を組めば、日本は阿鼻叫喚の地獄絵図になるでしょう。

 

与党だけでなく野党にも存在する経済音痴の議員が国会の多数を占めている限り、日本の衰退化は止まりません。

 

日本を地獄から救うためにも次回以降の選挙では、自民党だけでなく立憲民主党の議員についても大幅に減らす必要があります。