年金と聞くと「公的年金」をイメージする方が大半だと思いますが、「私的年金」という言葉もよく耳にすると思います。
老後2000万円問題で、公的年金だけでは老後資金が不足することが話題となりましたが、不足を補うためには、上手に「私的年金」を利用する必要があります。
今回は、「公的年金」と「私的年金」を比較し、おすすすめの活用すべき「私的年金」について解説します。
- 1.公的年金とは?
- 2.公的年金には「老齢年金」だけでなく「障害年金」や「遺族年金」もある
- 3.私的年金とは?
- 4.【私的年金】個人年金保険で老後資金は準備できる?デメリットはない?
- 5.【私的年金】税金面で優遇されている個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)や国民年金基金がおすすめ
- まとめ
1.公的年金とは?
公的年金は国が運営する制度で、日本に住む20歳以上の方全員が加入する国民年金と、サラリーマンなど企業に勤めている方が加入する厚生年金の2階建ての制度になっています。
国民年金(基礎年金)は原則、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての方に加入義務があります。
被保険者は1号~3号の3つに区分されています。
第1号被保険者
自営業者、フリーランス、学生などは第1号被保険者に該当します。
第2号被保険者
会社員・公務員の方は、第2号被保険者に該当します。
第2号被保険者は、給料から厚生年金保険料が天引きされますが、その保険料の中には国民年金の保険料も含まれています。
第3号被保険者
第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者です。
第3号被保険者の保険料は、第2号被保険者の保険料の中に含まれています。
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2.公的年金には「老齢年金」だけでなく「障害年金」や「遺族年金」もある
公的年金は老後の年金(老齢年金)だけでなく、「障害年金」や「遺族年金」といった保障もあり、積立貯蓄というよりも保険に該当します。
公的年金は、老後に受け取る「老齢年金」以外にも、一定の障害状態になった場合に受け取れる「障害年金」や、被保険者が死亡した場合に受け取れる「遺族年金」があるので、若い方でも受け取る可能性があり保険的な側面があります。
3.私的年金とは?
私的年金とは、公的年金の上乗せ制度です。「公的年金」が保険だとすると、「私的年金」は積立のイメージです。
「老後2000万円問題」をきっかけに公的年金だけでは老後資金が不足するという考え方が定着し、公的年金の上乗せを考える方も多くなっています。
その上乗せを「私的年金」と呼んでいます。
私的年金には、個人が任意で加入する個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)や国民年金基金、個人年金保険などがあります。
また、企業が福利厚生の一環として運営している企業型確定拠出年金、確定給付企業年金などもあります。
個人が任意で加入する「私的年金」と聞いて、真っ先にイメージされるのは、個人年金保険という方も少なくないでしょう。
実際に個人年金保険に加入されている方も多いと思います。
しかし、個人年金保険に加入されている方が多いからといって、個人年金保険が「私的年金」の中で最も優れているというわけではありません。
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4.【私的年金】個人年金保険で老後資金は準備できる?デメリットはない?
上記の通り、「私的年金」の中で、個人年金保険を利用されている方が多いのですが、これから「公的年金」の上乗せを考えている方に個人年金保険への加入がおすすめかというと、そういうわけではありません。
ここから、個人年金保険のデメリットについて確認したいと思います。
デメリット①:予定利率が低い
個人年金保険は、現在の低金利の影響を受けて、予定利率が非常に下がっています。
バブルの頃の個人年金保険は予定利率が6%程度ありましたが、現在の予定利率は1%もない状態です。
定額の個人年金保険は、世の中の金利が上がっても、契約時の予定利率が引きあげられることはありません。
現在のように低い予定利率の個人年金保険をメインに老後資金を準備することは現実的ではありません。
デメリット②:インフレに弱い
一般的な個人年金保険は、定額年金で世の中の金利が上がっても、契約時の予定利率が上がることはありません。
よって、世の中がインフレになり、物価が上がると、受け取れる年金が実質的に目減りすることになります。
デメリット③:保険料の全額が所得控除にならない
個人年金保険の保険料は、個人年金保険料控除として、保険料の一部が所得控除の対象になりますが、個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)や国民年金基金などのように支払った掛け金全額が所得控除の対象になるわけではありません。
所得税は、個人年金保険の保険料を8万円超支払って、最大4万円が所得から控除されます。
また、住民税は、個人年金保険の保険料を5.6万円超支払って、最大2.8万円が所得から控除されます。
5.【私的年金】税金面で優遇されている個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)や国民年金基金がおすすめ
個人が任意で加入する「私的年金」として真っ先に活用すべきなのは、個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)や国民年金基金です。
なお、国民年金基金はフリーランスなどの自営業者の方(第1号被保険者)が加入できる「私的年金」です。
サラリーマンや公務員である第2号被保険者の方は加入できません。
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メリット①:掛け金全額が所得控除
個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)や国民年金基金の掛け金は全額が所得控除の対象となります。
iDeCo(イデコ)や国民年金基金の掛け金全額が所得から控除されるので、所得税・住民税の負担が軽減されます。
つまり、個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)の掛け金を支払うことにより、節税になります。
例えば、毎月2万円の掛け金を拠出し、所得税が10%、住民税が10%とすると、年間で4.8万円の税金が軽減されます。
メリット②:受取時にも税金面で優遇されている
個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)や国民年金基金は、掛け金の支払時だけでなく、給付金受け取り時にも優遇措置があります。
iDeCo(イデコ)を一時金で受け取る場合には、退職所得控除の対象となります。また、国民年金基金やiDeCo(イデコ)を年金で受け取る場合には公的年金等控除の対象となります。
なお、 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)や国民年金基金の詳細については、下記記事をご参照ください。
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まとめ
上記の通り、個人が任意で加入する「私的年金」の中でも優先的に活用すべき制度があります。「私的年金」には色々な種類がありますが、条件が全て同じというわけではないので、注意が必要です。
「私的年金」については、まず、税金面で優遇されているiDeCo(イデコ)や国民年金基金を活用すべきです。
iDeCo(イデコ)や国民年金基金を活用しても余裕があるようであれば、個人年金保険を所得控除の上限額である年額保険料8万円程度で活用するのもアリでしょう。