
日本でもインフレが定着し、銀行や郵便局にお金を預けているだけでは実質的に資産が目減りしてしまう時代。
新しいNISA制度も始まり、「そろそろ資産運用を始めなきゃ」と考えている方も多いでしょう。
しかし、気になるのは「元本割れのリスク」ではないでしょうか?
実は、そんな方向けに「元本割れしない積立保険」が販売されています。
「元本保証で少しでも増えるのであれば、いい商品なのでは?」と感じるかもしれません。
しかし、おすすめできる商品ではありません。
そこで今回の記事では、元本割れしない積立保険をおすすめしない2つの理由について解説します。
投資初心者で元本割れのリスクが怖いという方は参考にしてください。
元本割れしない積立保険とは?
元本割れしない積立保険は、大手の生命保険会社が下記のような商品名で販売しています。
- 日本生命:ちょこつみ
- 明治安田生命:じぶんの積立
- 住友生命:Chakin
- 太陽生命:貯まる保険
正式名は「無配当災害死亡保障付積立保険(日本生命は傷害保障付積立保険)」。
積立保険の主な特徴は下記の通り。
- 保険期間は10年間
- 保険料払込期間は5年間(日本生命は3年間)
- 保険料支払い終了後は満期まで据え置き
- 年齢や性別によって保険料は変わらない
- 月額保険料の最低額は3,000円~5,000円
- 月額保険料の上限額は会社によって異なる
- 加入直後に解約しても「元本割れ」なし
- 10年間で数%程度増える
上記の特徴を見ていい商品だと思う方もいるかもしれませんが、おすすめできる商品ではありません。
次項で上記保険のデメリットを2つ解説します。
元本割れしない積立保険2つのデメリットとは?
積立保険の2つのデメリットは下記の通りです。
デメリット①利回りが低過ぎる|実質的には資産が目減り
大きなデメリットの1つが利回りが低過ぎること。
ある保険会社の積立保険に加入した場合の試算は下記の通り。
- 保険料:1万円(月額)
- 総払込額:60万円
- 満期保険金:637,046円(返戻率:106.1%)
低金利に慣れてしまっている日本人には6%増えるだけでも大きく感じるかもしれません。
しかし、10年で6%しか増えないと考えるべき。
現在の物価上昇率は年3%程度なので、インフレで積立金の実質的価値は目減りしていることになります。
インフレ率と比較すると、積立保険の利回りがとんでもなく低いことがわかるでしょう。
なお、日本は長くデフレを経験してきましたが、今後の国際情勢などを加味するとインフレ状態が続いていくだろうことが予想されます。
つまり、今後はインフレを前提とした資産運用を考える必要があります。
デメリット②積立額が少額過ぎる|ドアノック商品
積立保険の保険料上限額は下記の通り少額です。
- 日本生命:3万円
- 明治安田生命:2万円
- 住友生命:1.5万円
- 太陽生命:2.3万円
その理由は、大手生命保険会社にとって自社商品をまず手に取ってもらうための「ドアノック商品」だから。
運用目的で加入するには積み立てられる額が少額過ぎます。
他の保険商品にも契約を広げるきっかけとして販売している保険なので、積み立てられる上限額は少額に制限されています。
よって、貯蓄のつもりで加入したところ、他にもいろいろな契約をさせられてしまうかもしれません。
なお、この積立保険にもメリットはあります。
それは保険料が「一般生命保険料控除」の対象となること。
一般生命保険料控除には、所得税4万円・住民税2万8000円の枠があります。
他の生命保険契約で枠を使っていないのであれば、積立保険で活用するのも一つの考えかたでしょう。
インフレ時代におすすめの資産運用方法とは?
物価が上がる時代におすすめの資産運用方法を2つご紹介します。
個人向け国債
どうしても元本保証がよければ、個人向け国債がおすすめ。
個人向け国債は個人の国債保有を促すための商品で、1万円単位から購入できます。
毎月募集、発行が行われていて、発行から1年経過すれば 途中換金も可能。
金融機関(銀行、証券会社など)の窓口で、個人の方のみ購入可能です。
なお、金利については固定型だけでなく、変動型についても最低保証があり、年率0.05%が保証されています。
利払いは半年に1回、発行から1年が経過すれば解約はできますが、一般の国債のように途中での売買はできません。
個人向け国債には「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類があり、募集期間10月1日~10月31日の適用利率は下記の通りです。
- 変動10年:1.08%(税引き前)
- 固定5年:1.22%(税引き前)
- 固定3年:1.01%(税引き前)
高市さんが首相になりサナエノミクスが成功すれば、利上げ局面がくる可能性がありますので、変動10年がおすすめです。
インデックス投資
物価上昇率以上の運用を目指すのであれば、おすすめなのがインデックス投資。
新NISAを活用すれば非課税での運用が可能。
なお、インデックス投資は元本割れのリスクもありますが、本質を理解して活用することが重要です。
最も理解すべき点が、インデックス投資は15年~20年程度の期間で資産を増やす投資法ということ。
株式投資は単年度では収益が大きくブレますが、長期になればなるほど収益が下図の通り安定します。

(出典:WealthNavi)
上図の通り、1年間だけの保有の場合、最大のリターンは60.7%で最低のリターンは-48.7%と大きな差が発生します。
しかし、保有期間が長くなる(グラフでは右に行く)につれ、この変動幅のブレは小さくなり収益は安定。
15年間のトータルだと元本割れのケースは無くなります。
つまり、長期投資の場合、短期投資に比べ収益のブレ具合が小さくなり収益が安定します。
運用期間が短い場合は元本割れの可能性もありますが、運用期間が10年間もあれば、元本割れするケースは非常に少なくなるでしょう。
なお、上記積立保険の試算と同条件で月1万円ずつ積立投資(運用利回り年5%)した場合のシミュレーションは下図の通り。

月1万円ずつ積み立てつことによって5年後に約68万円になります。
その後、下図のように積み立て運用した68万円をその後5年間運用し続けると約86.7万円

価格変動というリスクを許容すれば、積立保険の10年間の収益である6%をはるかに上回る成果を手にする可能性があります。
なお、日本の中央銀行である日本銀行(日銀)は、デフレ脱却を目標に物価上昇率2%を目指しています。
よって、最低でも年2%以上の利回りで運用を目指す必要があります。
まとめ

長くデフレを経験してきた日本人の資産構成は預貯金に偏っています。
デフレ時は物価が下がりお金の価値が上がるので、日本人の金融リテラシーが低いわけではなく合理的な判断でした。
そんな日本人が好きなのが元本保証。
元本保証の積立保険と聞くと関心を持ってしまう方も多いはず。
しかし、インフレが定着しつつある中、元本保証にこだわると資産の実質的価値が目減りするリスクがあります。
デフレマインドから脱却してインフレマインドを持った資産運用を心がけることが肝要です。