現役投資家FPが語る

20年以上の投資経験がある現役投資家FPが「人生100年時代」の資産運用や公的年金など「お金」について語ります

【失敗事例】年利10%超のトルコリラ建て債券で大損!?


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年利10%超の投資商品と聞くと、多少のリスクがあっても投資したいと思ってしまわないでしょうか?

 

日本では超低金利が長期間続いているので、年利10%とは夢のような金利水準。

 

トルコなどの新興国の債券には年利10%超の高金利で人気の高いものもありますが、大きな損失を被るリスクがあります。

 

今回は、以下の本と私が高金利につられて実際にトルコリラ建て債券を買って大損した話をネタに新興国の債権に投資する際の注意点を解説したいと思います。

 

高金利の新興国債券への投資を検討している方は参考にしてください。

 

 

年利10%超のトルコリラ建て債券はおすすめできる?

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結論から書くと、高金利の新興国債券への投資はおすすめできません。私は二度と買いません。

 

高金利の新興国債券への投資をおすすめしない理由は下記の通り。

  • 割高な為替手数料
  • カントリーリスクによる大きな為替変動

 

為替手数料の高さよりも恐ろしいのがカントリーリスク

 

新興国では、先進国に住んでいる我々の常識では考えられない事が起こり、予想を超えた為替変動が起こる場合があります。

 

年利10%もの金利が付けば、多少の為替変動は吸収できるのではないかと考えてしまいそうですが、その考えは甘いです。

 

債券とは?

債券とは、国や地方公共団体、企業などが一般の投資家から借り入れを行う目的で発行する借金の証書のようなもの。

 

債券を購入すると毎年決まった金利が受け取れ、満期まで保有すれば元本も返ってきます。

 

よって、一般的に株式や投資信託などに比べて安全性の高い投資商品と言われています。

 

しかし、新興国債券であるトルコリラ建て債券には、為替リスク、カントリーリスクなどがあり、安全性が高い投資商品とは言えません

 

次項以降で新興国の債券を購入する際に注意すべきポイントを解説します。

 

 

割高な為替手数料に注意

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今回紹介した本には、新興国債権に投資する際には両替手数料に注意すべきと書かれています。

 

本書に掲載されている事例は下記の通り。

 

【事例】

為替レート:20円/1トルコリラ
為替手数料:片道2円

 

上記の条件で300万円をトルコリラに両替すると下記の通り。

300万円 ÷(20円+2円)= 136,363.63トルコリラ

 

両替時のトルコリラの時価は下記のようになります。

136,363.63トルコリラ × 20円 = 2,727,272円(▲272,728円)

 

円からトルコリラに両替する片道の手数料は272,728円にもなり、コストは9.09%(272,728円÷300万円)にもなります。

 

同じ条件でトルコリラを円に両替すると仮定すると、往復で18%以上ものコストを負担することに。

 

つまり、両替するだけで債券の金利である10%の約2年分の利息を軽く吹き飛ばすコストを負担することになります。

 

手数料が2円と聞くと安く感じてしまいそうですが、20円に対する2円なのでインパクトが大きいことが分かります。

 

 

【失敗事例】カントリーリスクで大損害が発生!

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私が新興国通貨建ての債券への投資をおすすめしない最大の理由がカントリーリスク

 

カントリーリスクとは、投資対象国や地域において政治・経済・ 社会情勢の変化によって、投資した株式や債券などの価格が変動する可能性のこと。

 

具体的なリスク要因としては、急激なインフレ、債務不履行、 戦争や内戦などがあります。

 

カントリーリスクにより大きく為替が動けば、高金利で得られる利益よりも円高・新興国通貨安に振れることによる損失の方が大きくなります。

www.fpinv7.com

 

私が約100万円分のトルコリラ債権を購入したのは約10年前。

 

ある大手証券会社に「絶対損をすることはない」とすすめられて年利10%超のトルコリラ建ての債券を購入しました。

 

私が債券を買った時にはトルコの経済は絶好調で、魅力的な投資対象に見えました。しかし、その後にエルドアン大統領の強権政治が目に余るように。

 

エルドアン大統領の独裁者のような振る舞いが強くなったり、アメリカとの関係が悪化したことなどによりトルコ経済は失速。

 

トルコリラは急落して私は大きな損失を被りました。

 

トルコリラと円の為替レートは下図(トルコリラ/円の月足チャート)の通り、私がトルコリラ債権を購入した約10年前から右肩下がりでトルコリラ安(円高)になっています。

トルコリラ/円チャート(月足)

(出典:外為ドットコム

 

実際の損失額(概算)

私が約100万円分を購入したトルコリラ建て債券で被った損害額の概算を計算すると、下記の通り。

 

【トルコリラ債券購入時】

為替レート:60円/1トルコリラ
100万円÷60円=16,666トルコリラ

 

【現在の時価】

為替レート:13円/1トルコリラ
16,666トルコリラ×13円=216,658円

 

【10年間の受取利息】

1,666トルコリラ×10年=16,666トルコリラ

 

【元本と利息の合計】

元本+利息=33,332トルコリラ。

 

現在、私が所有しているトルコリラの円換算の時価は、33,332×13円=433,316円

 

高金利の利息を受け取ってきましたが、私の資産は当初の2分の1以下に・・・。

 

上記の計算では為替手数料や税金を考慮していませんので、両替のコストや税金を考慮すると更に資産は目減りしてしまいます。

 

私はトルコリラ債券を購入したことにより大きく資産を減らすことになりました。

 

結局、儲かったのは割高な手数料を手にした証券会社だけとういう結果に。

 

今後の方針としては、幸いすぐに必要となるお金ではないので、高金利の利息を受け取りながら塩漬け状態を継続する予定です・・・。

 

 

高金利の新興国債券に投資する際の注意点

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私は今回の失敗をもとに、下記2つの教訓を学びました。

 

資産配分の重要性|1つの資産に資金を集中させない

今回、私はトルコリラ建て債券を購入することにより大きな損失を被ったわけですが、100万円分しか購入していなかったことが幸いしました。

 

高金利に釣られて全財産を突っ込んでいたら私の投資生活は終了していたでしょう。

 

高金利に釣られて退職金を新興国債権に全集中した方もいたかもしれません。

 

老後のための退職金が半分以下になってしまったら目も当てられません。

 

年間リターンの相場を知る

下記記事の通り、資産運用の年間平均リターンは5%程度。

 

相場からかけ離れたリターンには理由があると考えるべき。

 

つまり、カントリーリスクなどにより大きな損害を被る危険性があるからこそ年10%超もの金利が受け取れると考える必要があります。

www.fpinv7.com

 

 

まとめ

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新興国債券への投資はおすすめできません。

 

おすすめできない理由は下記の通り。

  • 割高な為替手数料
  • カントリーリスクによる大きな為替変動

 

「まとまったお金があるが運用先はないか?日本円だと低金利でもったいない」と相談されることがあります。

 

上記のような相談を金融機関にすると、低金利の状態がもったいないという気持ちに付け込まれ、高金利の新興国債権などを買わされる可能性があります。

 

私のように割高な為替手数料や大きな為替変動により、大切な資産を減らさないようにご注意ください。