新車を購入する際に残クレ(残価設定ローン)をすすめられる方も多いと思います。
残クレは一般的なローンよりも月々の支払額が少なくなるお得な制度と思ってしまいそうですが、実は購入者側にデメリットが発生する可能性があるローン。
残クレの仕組みを理解して利用しないと、最終的に損をしてしまうかもしれません。
そこで、今回は残クレの仕組みと、押さえておくべき3つのデメリットについて解説します。
残クレ(残価設定ローン)とは?仕組みを解説
残クレ(残価設定ローン)とは、契約時に3~5年後の買取保証額の残価(残存価値)を設定して、残価を除いた金額を分割返済するローンのこと。
例えば、車両価格が300万円、3年後の残価率(新車価格に占める残価の割合)を40%とする場合、40%の残価(120万円)を除いた180万円を3年間で分割返済することになります。
車両価格すべてを返済するローンを組むよりも、月々の返済額を安く抑えられるメリットがあります。
(出典:ホンダ)
残クレ(残価設定ローン)終了時の3つの選択肢
なお、残クレ(残価設定ローン)の返済期間が満了した時には、下記3つの選択肢があります。
- 車両を返却する
- 残価を支払って車両を買い取る
- 改めてローンを組み直して返済を続ける
残クレ(残価設定ローン)の3つのデメリット
残クレ(残価設定ローン)には、月々の返済額を安く抑えられるメリットが ありますが、デメリットはないのでしょうか。
ここで、確認しておくべき残クレのデメリットについて解説します。
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ローン返済が終わっても車の所有権はなし
残クレ(残価設定ローン)は、3~5年のローンの返済が終わっても車は自分の所有とはなりません。
ローン返済期間に支払ったのは残価を除いた車両本体価格の一部だけ。
ローンの返済期間が満了しても一般的な自動車ローンと違い、車が自分のものにならない点には注意が必要です。
一般的なローンよりも総支払額が多くなる
残クレ(残価設定ローン)は残価を差し引いた分を返済していきますが、残価を差し引いた部分だけでなく、残価を含めた元金全体に利息がかかります。
月々の支払額が少なくなるというメリットがある反面、元金が減るスピードも遅く、最終的に利息が高くなる可能性があります。
また、返済期間満了時に残価部分をローンで返済することを選んだ場合、当初の金利より高い金利が適用されるケースがある点にも注意が必要。
結果的に一般的なローンに比べて総支払額が多くなってしまいます。
事故などにより車の返却時に追加料金が発生する可能性あり
ローン返済期間の満了時に車を返却する場合、事故などによる修理歴や傷・へこみなどがあれば、査定額が下がり、追加の支払いが必要になる場合があります。
また、車をカスタマイズするなど、中古車市場での価値が下がる場合には追加支払いが発生するため注意が必要。
なお、走行距離にも制限があり、制限された走行距離を超えると追加料金の支払いが発生。
例えば、ホンダの残クレの場合、月間の走行距離に1,000kmや1,500kmの制限があり、制限を超過すると車種によって1kmあたり5円~8円の追加料金が発生します。
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残クレ(残価設定ローン)で車を購入すると、ローン期間満了時も車の所有権が発生しない点が最も大きなデメリット。
残クレを利用すると、車を借りて使用しているようなイメージに近くなってしまいます。
また、残価として買取額を保証しているといっても上記のように条件によっては、当初の想定通りの買取額とならず、追加料金が発生する可能性があります。
販売者側が残クレ(残価設定ローン)をすすめる狙いとは?
車を購入する側のデメリットを考えると、残クレ(残価設定ローン)はおすすめできません。
しかし、ディーラーなどの販売者側は残クレ(残価設定ローン)のみに低金利を設定するなど、ユーザーを誘導し、利用者を増やしています。
では、なぜ販売者側のディーラーなどは残価設定ローンをすすめるのでしょうか?
販売者側から見た残価設定ローンの狙いやメリットを確認してみたいと思います。
残クレ期間満了時には、下記の3つの選択肢があります。
- 車両を返却する
- 残価を支払って車両を買い取る
- 改めてローンを組み直して返済を続ける
「残価を支払って車両を買いとる」という選択肢は、ローンで車を購入している方にとって負担額が大きくなるので、選択されにくいでしょう。
また、「残価に対してローンを組み直して返済を続ける」場合も、残クレ当初の特別金利よりも高い標準金利が適用されるので、月々の返済額が高くなることもあります。
そうなると、多くのユーザーは車両を返却して、改めて別の新車で残価設定ローンを組むことを選ぶことに。
メーカーと販売会社の狙いはここにあります。
ユーザーが車両を返却して改めて別の新車で残クレ(残価設定ローン)を組めば、新たに新車が売れて、程度の良い下取り車も手に入るので中古車部門にもメリットが生じる。
だから金利を下げても残クレ(残価設定ローン)に力を入れるわけです。
残クレの仕組みを理解して利用すべき
残クレ(残価設定ローン)は一見、車の購入者側にお得な制度のように思えますが、仕組みを理解せずに利用すると実は損をしていたということも発生し得ます。
そもそも、残価設定ローンを利用しないと月々の返済が苦しいのであれば、購入する車のグレードを下げたり、頭金が貯まるまで待つなどの方法で回避すべき。
月々の支払いを下げたい、購入する車のグレードを上げたいなどの安易な理由での残クレ利用は避けるべきです。
下記記事で解説した通り、車は維持費がかかる金食い虫。
なるべく維持費の削減を考えたいところです。
残クレなど利用しやすいネーミングになっていますが、自動車ローンは借金であることに変わりはありません。
安易なローン設定(借金)をしてしまうと、お金が貯まる家計にはなりません。
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まとめ
残クレ(残価設定ローン)は、車が趣味で3年程度に1回、新しい車に乗り換えたいなどの目的がある方以外にはおすすめできません。
残クレ(残価設定ローン)のデメリットをまとめると下記の通り。
- ローン返済が終わっても車の所有権はなし
- 一般的なローンよりも総支払額が多くなる
- 事故などにより車の返却時に追加料金が発生する可能性あり
「皆さん残クレ(残価設定ローン)で買っていますよ」という販売者側の言葉に乗せられてはいけません。
販売者側がすすめてくる制度には販売者側のメリットがあり、そのメリットが購入者側のデメリットにならないか確認する必要があります。
残クレ(残価設定ローン)は販売者側が頻繁に車を購入して欲しいがために編み出した仕組みの1つ。
その蟻地獄にハマらないようにお気を付けください。