2024年12月27日に令和7年度税制改正大綱が閣議決定されました。
国民民主党は抵抗していますが、「年収の壁」はこのまま103万円から123万円への引き上げで決着する可能性もあります。
「年収の壁」引き上げが議論された当初から話題になっているのが減税の財源論。
減税の財源はどこから捻出すべきなのでしょうか?
今回の記事では、「年収の壁」を引き上げた場合の財源について解説します。
「年収の壁」引き上げに伴う税収減を心配している方は参考にしてください。
「年収の壁」を123万円に引き上げた際の減税額は?
今回、「年収の壁」の引き上げが103万円から123万円になった場合、どの程度の減税となるのでしょうか?
玉木さんのX(旧twitte)のポストによると、減税額は年収300万円で年間5千円、年収1000万円でも年間2万円程度。
「103万円の壁」引き上げについて、最新の情報を踏まえて、与党案(123万円)と国民民主党案(178万円)の減税額について計算してみました。その結果、年間5000円とか1〜2万円の減税の方がほとんどであることが明らかになりました。… pic.twitter.com/W52iOhhhAy
— 玉木雄一郎(国民民主党) (@tamakiyuichiro) December 21, 2024
こんな少額の減税をしても効果はありません。
年間5千円~1万円程度の収入が増えても気付けない誤差レベルでしょう。
「年収の壁」を178万円に引き上げた場合との比較を引用すると下記の通り。
与党案(123万円)の収入別の年間あたりの減税額(概算)
- 200万円:0.5万円
- 300万円:0.5万円
- 500万円:1万円
- 600万円:1万円
- 800万円:2万円
- 1000万円: 2万円
国民民主党案(178万円)の収入別の年間あたりの減税額(概算)
- 200万円:8.6万円
- 300万円:11.3万円
- 500万円:13.2万円
- 600万円:15.2万円
- 800万円:22.8万円
- 1000万円 :22.8万円
国民民主党案では、年収200万円で8.6万円、年収300万円で11.3万円の減税。
年間これくらいの金額で手取が増えれば実感できる方が多いでしょう。
更に、岸田前首相による定額減税とは違い、一度きりではなく恒久減税なので経済効果が期待できます。
減税するのであれば、最低でも国民民主党案くらいはやる必要があります。
123万円に引き上げた程度の減税額では経済効果がないので、税収が減るだけになる可能性が高いでしょう。
一方、国民民主党くらいの減税額であれば、消費が喚起される形の経済効果が期待でき、税収が上がる可能性もあります。
年収の壁を引き上げる際の財源は?
「年収の壁」を103万円から123万円に引き上げると2025年度の税収は7,000億円程度減ると報道されています。
一方、178万円に引き上げた場合、国と地方を合わせて7~8兆円の税収減と試算されていました。
この税収減の財源はどこにあるのでしょうか?
そもそも国民の手取りを増やすために減税するのに、増税などの財源論の話が出てくるのは理解できません。
仮に税収減を補うために増税することになれば、行って来いで国民の手取りは増えません。
「年収の壁」引き上げの財源について、石破首相はテレビ番組で下記のように発言しました。
税収を増やす努力を一生懸命するとしながら、不足する財源に関しては「安易に次の時代に借金をしていいのか、それとも節約して出すのかという二つの議論をしなければならない」と指摘した。
(出典:共同通信)
税収を増やしたければ、減税しても増税や国(政府)が節約してはいけません。
国民の手取りが増えれば、消費が喚起されて経済が活性化。
経済が活性化すれば、給与が増えて下記のような好循環が生まれます。
給与が増えれば所得税が増える。給与が増えれば消費が増えるので消費税も増える。そして、消費が増えれば企業が儲かるので法人税が増える。
減税により経済が活性化すれば、税収が多い基幹三税(所得税・法人税・消費税)が増えますし、給与が増えれば社会保険料も増えます。
税収を上げたければ上記のように経済を活性化させるべき。
増税によって税収を増やそうとすれば、上記と逆の状態となり逆効果なのは明らかです。
減税の財源は国債一択
日本の経済状況で減税するのであれば、税収減は国債で補うべきです。
国債は次世代へのツケの先送りではありません。
現在のような緊縮財政により疲弊した経済状態を放置する方が次世代へのツケの先送りになります。
これまでと同様に国(政府)が節約しつつ増税すれば、「失われた30年」が40年や50年になり日本は完全に先進国から脱落することになるでしょう。
国(政府)と個人や企業を同一視してはいけません。
国債発行は国(政府)の借入という形をとった単なる通貨発行。
よって、国債を返す必要はありません。
どこの国も満期が到来した国債は、新たに国債を発行して借り換えているのです。
下図を確認すればわかる通り、どの国も国債残高が増える一方。
(出典:https://www.fukurou.win/https-www-fukurou-win-national-government-bond3/)
米国や英国など主要先進国で政府債務を減らしている国はない。つまり返済していない。
国債残高が増えるのは経済成長を目指している国では当たり前のこと。
国(政府)が国債を発行して財政出動すれば、民間に通貨を供給する形になります。
逆に国債を返済するのであれば、国民から税金を徴収してお金を吸い上げる必要があります。
仮に日本の国債残高を一気に返済するのであれば、約1200兆円もの税金を国民から徴収しなければなりません。
そんなことをすれば、日本経済が壊滅的な打撃を受けることになります。
日本がここまで豊かになったのは国(政府)が国債を発行して通貨を供給してきたから。
国(政府)の役目は経済が停滞している時は国債を発行してお金の回りをよくすること。
経済が停滞するときに国(政府)まで節約すれば不況が一層深まります。
逆にバブル時のように景気が過熱している時は、税金を引き上げ国債を返済するなどしてお金を吸収する形で経済の過熱を冷ます。
つまり、国(政府)の通貨発行権と徴税権はアクセルとブレーキとして使うのが正しい経済政策。
経済情勢を考慮することなく、税収を上げる努力ばかりしてきたから日本は約30年間も経済が停滞したのです。
国民が政治に関心を持たなければ生活は向上しない
政治家が国民のための政治をしてくれると考えるのは幻想。
多くの国民が石破首相や岸田前首相のようにとんでもない経済音痴が国の舵取りをしている現実に早く気づく必要があります。
国民が政治家を監視して、国民を豊かにする方向を向いていない政治家がいれば選挙で排除するしかない。
そのためにも正しい経済政策を理解している人が増えることが重要でしょう。
年収の壁引き上げについて日経新聞が行った調査で下記のような結果が出ていました。
所得税の非課税枠を巡る「年収103万円の壁」の解消について聞いた。
- 「手取りを増やすため、非課税枠を178万円に広げるべきだ」との回答が45%だった。
- 「税収が減りすぎないよう、非課税枠の拡大を限定すべきだ」の比率は30%となった。
- 「税収が減らないよう、非課税枠を広げるべきではない」は14%だった。
(出典:日本経済新聞)
約44%の人達が国や地方の税収減を気にして、自分達を苦しめる方向に政策を進めるべきと回答しています。
通貨発行権のある国(政府)が収支を合わせるため、物価高に苦しむ国民から税金や社会保険料という形でお金を巻き上げる。
この滑稽な状況に一人でも多くの国民が気付かない限り、日本人が真の豊かさを取り戻すことはできないでしょう。
まとめ
年収の壁を103万円から123万円に引き上げても、減税額は年間5千円~1万円程度。
このレベルの減税では全く経済効果は期待できないでしょう。
一方、年収の壁を178万円に引き上げた場合、国と地方を合わせて7~8兆円の税収減と試算されています。
この税収減を国債で補い、真の意味で国民の手度取りを増やすことが正しい経済政策。
減税により経済が活性化すれば、結果的に税収が多い基幹三税(所得税・法人税・消費税)が増えますし、給与が増えれば社会保険料も増えます。