将来の給与を事実上の担保として資金を提供し、手数料を要求する「給料ファクタリング」というサービスをご存じでしょうか?
SNSの投稿を見て、給料の前借り感覚で「給料ファクタリング」を利用し、法外な手数料を請求される相談事例が増えているそうです。
「最短5分で融資」。ところが「手数料」を金利換算すると年率600%というケースも。「法の抜け穴をついた悪質な行為だ」――。給与を担保に資金を提供する「給料ファクタリング」の被害相談が相次いでいます。
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) December 2, 2019
▶️給料ファクタリングご用心 狙われる「前借り感覚」https://t.co/moL3gfnru0 pic.twitter.com/jMwyks88nP
給与の前借りと聞くと、借金とは違い、気軽に利用する方が多くなるのでしょう。しかし、「給料ファクタリング」は、自己破産する方もいるような危険な仕組みです。
「給料ファクタリング」とはどのような仕組みなのでしょうか?実際の相談事例や注意すべき点についてご紹介します。
- 1.給料ファクタリングとは?
- 2.給料ファクタリングの手数料は?
- 3.給料ファクタリングの問題点|違法ではないのか?
- 4.給与ファクタリング被害110番への相談事例
- 5.給料の前借りサービスとは?給料ファクタリングとの違いは?
- まとめ
1.給料ファクタリングとは?
給料ファクタリングとは、将来受け取る予定の給与を現金化する仕組みのサービスです。給料を債権とみなし、「給料債権」をファクタリング業者に買い取ってもらうことにより、給与支給前に現金を手にすることができます。
サービスの流れは下記のようになっています。
- 給料ファクタリング業者に連絡
- 本人確認書類・給与明細を提出
- 給料ファクタリング業者より入金
- 給与を受け取ったら業者に返済
給料ファクタリングは、将来の給与を現金化するので、消費者金融や銀行カードローンなどの借り入れと違い、利用者に対する審査なしで利用することが可能です。
給料を支払う勤務先の審査を行います。
仕組みとしては、業者に給与債権を額面の80%~90%で買い取ってもらうような形になります。
例えば、給与が30万円の場合、24万円から27万円を給料日前に現金化できるということになります。
給料の受け取り後、業者に手数料込みで30万円を返金します。
(出典:七福神)
金融ブラックでも利用できる?
SNSで実際に「給料ファクタリング」で検索してみると、「即日現金化」「給料買取」「金融ブラックでも可」などのような謳い文句で勧誘しているアカウントが沢山出てきます。
金融ブラックとは、既に借金があり、信用情報機関のブラックリストに載っていることを意味します。金融ブラックだと、借り入れに制限がかかりますが、それでも利用できるのが、「給料ファクタリング」です。
バイトやフリーターでも利用可能?
給料ファクタリングの利用条件は、給与が発生することのみです。雇用形態は、正社員、バイト、フリーター、パートなどを問わず、1万円程度の金額から利用可能です。
現金は即日入金される
給料ファクタリングは必要書類の提出さえできれば、即日に現金が振り込まることがあるようです。利用者の審査なしで、給料の即日現金化が可能という手軽さがトラブルを生む1つの要因でしょう。
ファクタリングとは?
そもそもファクタリングとは、中小企業などが売掛債権を売却して、資金を調達する手法で、日本では1970年代に登場したそうです。
中小企業で利用されているファクタリングの仕組みを個人の給与に当てはめたのが給料ファクタリングです。
2.給料ファクタリングの手数料は?
給料ファクタリングの手数料相場は、10%~20%程度のようです。
例えば、10万円を現金化したら約1ヶ月後に11万円を返済する形になります。
一見、大した手数料率に感じませんが、手数料を金利と考えると、年率120%もの法外な金利を取られていることになります。
利息制限法が定める上限(最大20%)を大きく超えています。
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3.給料ファクタリングの問題点|違法ではないのか?
給料ファクタリング業者は貸金業者ではなく、取るのは手数料であって金利ではないので、利息制限法が定める上限(最大20%)を超えても金融庁からのお咎めもありません。
また、利用者に対する審査がないので、金融ブラックの方も利用が可能で、安易な利用により、自己破産に追い込まれるケースも発生しています。
業者によっては、更に法外な手数料を請求するケースもあるようで、10万円の現金化に対して、手数料込みで15万円を返済させる例もあるようです。
この手数料を金利と考えると、なんと年率600%です。
返済が滞ると、「返済しなければ勤務先の会社に連絡する」と脅される事例もあるそうです。
そもそも、給料ファクタリングは、消費者金融や銀行系のカードローンでお金が借りられない人が利用することが多いと思うので、返済に行き詰まる可能性が非常に高くなるでしょう。
安易に手を出すと、借金で借金を返す、自転車操業に陥ってしまいます。
給料ファクタリングの仕組みは、給料債権の買取サービスの提供ということになり、金銭の貸し借りには当たらず、貸金業法や利息制限法、出資法にも抵触しないという「法の抜け穴をついた」手法です。
現状では、違法ではないということになります。
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4.給与ファクタリング被害110番への相談事例
給料ファクタリングについて、実際にどんな相談事例があるのでしょうか?
一般社団法人日本ファクタリング協会のサイトに『 給与ファクタリング被害110番 』というページがり、相談事例と回答が掲載されているので、転載します。
相談事例①:Aさんの場合
平成30年11月20日3万円を借り、翌月15日の支払いで4万5000円を支払いました。また、NETから申込みをしたので契約書が一切ありません。
回答①
給与は、労働基準法で債権譲渡が認められていません。個人消費者ですから、貸金業の総量規制に抵触し、出資法、利息制限法で定める上限金利年20%を超過した年400%になりますので、違反になります。また、契約書面がないことにより、特定商取引法に抵触します。
相談事例②:Bさんの場合
平成31年2月18日給与ファクタリングで、10万円を借り、翌月15日の15万円の支払い約束でしが、支払えず3月19日返済しました。4日間遅れたら、5万円の遅延損害金を請求されていますが、どうしたらよいでしょうか?
回答
給与は、労働基準法で債権譲渡が認められていません。また、個人消費者ですから、特定商取引法に抵触し、出資法、利息制限法で定める上限金利年20%を超過した、年600%になりますので、違反になります。お支払いの必要はありません。
上記ページ内では、給与ファクタリングの手法や違法性について詳しく書いてありますので、興味がある方はご覧ください。
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5.給料の前借りサービスとは?給料ファクタリングとの違いは?
「給料ファクタリング」とは別に、「給料前借りサービス」というサービスも存在しています。給料を前借りできるという点では、両者は同様のサービスのように見えるのですが、違いがあります。
「給料前借りサービス」とは、Fintech業者が給与支払側の企業に提供しているサービスです。
従業員は、給料前借りアプリを使い、給与の前借りを申請し、承認されると銀行やコンビニのATMなどから現金を受け取ることができる仕組みです。
前借りした額は、従業員の給与から差し引かれることになります。
「給料前借りサービス」の利用料は、企業がFintech業者に支払うサービスが一般的です。
企業は福利厚生制度の一環として給料の前借り制度を導入し、新規の求職者の増加につなげることを目的としています。
まとめ
給料ファクタリングは、「借金ではない」「借金ではないので利息なし」という売り文句ですが、実質的には給与の前借りであり、借りたお金は給料日後に手数料という名の利息を払って返済することになります。
非常に利用しやすい仕組みで、業者側も給与という確実な債権を担保にしているので、提供しやすいサービスです。
「給料ファクタリング」は現状は違法ではありませんが、手数料という名の法外な利息を取られますので、利用すると借金を借金で返すような自転車操業に足を踏み入れることになりかねません。
少額であれば問題ないだろうと思う方もいるかもしれませんが、利用を避ける方が賢明です。
なお、東京弁護士会では、2019年12月10日(午前10時~16時)に給料ファクタリングで苦しんでいる方向けに相談会(03-3597-5502)を実施するそうです。
詳細は、下記ページをご参照ください。