岸田首相は「資産所得倍増計画」を掲げています。
以前は「所得倍増」でしたが、いつの間にか「資産所得倍増」に変わっていました。
所得倍増も資産所得倍増も同じことではないかと考えている方もいるでしょう。
しかし、所得倍増計画と資産所得倍増計画は全く異なるもの。
資産所得倍増計画で日本人は豊かになるのでしょうか?
結論から申し上げると、資産所得倍増計画では日本人は豊かにはなれません。
今回は、下記ポイントについて解説します。
- なぜ、資産所得倍増計画で日本人は豊かになれないのか?
- 日本人が豊かになる方法はないのか?
資産所得倍増プランとは?
資産所得倍増計画とは、聞き飽きたフレーズである「貯蓄から投資へ」の動きを促すもの。
資産所得とは、個人が持っている資産(有価証券や土地など)から得られる所得のことで、利子、配当、賃貸料収入などが含まれます。
家計金融資産2000兆円を貯蓄から投資に回すのが狙いで、少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo)の拡充・改革などの実現を目指しています。
資産所得倍増計画の狙いは、国民が賃金以外の収入を得る手段を広げ、所得を増やすこと。
また、家計に眠る2000兆円もの金融資産を日本の株式市場に向かわせ、市場の活性化も狙っているようです。
以前、岸田首相が掲げていた「令和版所得倍増計画」は日本経済を活性化し、労働者の賃金を上げることにより所得倍増を狙うものでした。
しかし、「資産所得倍増計画」では所得の中身を「賃金」から「金融資産」にくら替えし、「所得倍増」という最終目標を達成しようとしているわけです。
資産所得倍増計画で日本人は豊かになるのか?
資産所得倍増計画で日本人が豊かになる可能性は非常に低いでしょう。
少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo)の拡充・改革を行ったとしても日本人全員が投資を始めるわけではありません。
投資にお金を回す余裕のない人もいます。
実際、日本人の実質賃金は約30年間、下がり続けています。
(出典:全労連)
実質的な収入が下がり続けている中で、喜んで投資を始めようという人はどれだけいるのでしょうか。
また、投資には元本割れのリスクがあり、誰でも資産を増やせるわけではありません。
インデックス投資のように長期で取り組めば、再現性や成功確率の高い投資手法もあります。
しかし、長期投資以外の短期で大きく稼げる手法を選ぶ人もいます。
FX(為替証拠金取引)などのような短期で投機的な取り引きを好む方の中には、資産を増やすどころか大きな損失を被る方もいるでしょう。
また、家計の金融資産を日本の株式市場に向かわせようとしている狙いも外れる可能性があります。
現状でも海外株式型の投資信託への資金流入が国内株式型の投資信託への資金流入を大きく上回っている状態。
(出典:モーニングスター)
海外株式型の投資信託に家計の金融資産が大量に向かうことになれば、一層の円安を招く可能性もあります。
日本人が日本株に投資をしなくなってきた理由は、日本経済が約30年間も不況に苦しんでいる結果。
これは、全て政府の失政が招いたことです。
「資産所得倍増計画」の真意とは?
岸田首相が「所得倍増計画」から「資産所得倍増計画」に移行したということについてどのような意味があるのでしょうか?
この意味を簡単に解説すると、「所得を増やすことに関して政府が非課税制度を拡充してやるから国民は自分で資産を増やす努力をしろ」と丸投げした状態。
つまり、国民自らがリスクを取って自助努力で資産を増やせということ。所得を増やせるかどうかは自己責任。
イデコ(iDeCo)やニーサ(NISA)制度の拡充を国から資産を増やすための前向きなメッセージととらえるべきという方がいますが、あまりにもお人好し。
政府は国民をバカにし過ぎですし、日本人は我慢し過ぎです。
政府の最も重要な仕事は日本をそして日本国民を豊かにする事ではないでしょうか?
日本人はもっと怒るべき。責任を国民にばかり押し付けて政治家は何をしているのか、と。
その意思表示の方法の1つが選挙。
しかし、諦めムードの中、約50%の人たちが票を捨ててしまっている状態。
これでは日本が長期低迷から抜け出すことはできません。
行き過ぎ自己責任論は危険
インフルエンサーの中には、国に頼るなんてナンセンスと言わんばかりに声高に副業や投資をすすめ、自己責任を強調している方もいます。
国に対する諦めもあるのでしょう。
確かに自己責任は基本。
自分の人生を自分の手でコントロールする為には、他人に頼るような人生にするべきではない。
そのような意味で、自己投資や資産運用が重要であることは間違いありません。
しかし、自己責任が基本という風潮が政治への無関心を助長しているような気がします。
現状のような政治への無関心が続けば、日本は更に衰退していくでしょう。
政治家のいいように日本をコントロールされれば、ますます国民は貧しくなってしまいます。
現状の日本に必要な事は、自己責任ではなく国民全体の底上げ。
格差が拡大した社会は生きづらくなる
国が国民に自己責任を強要すると貧富の格差が開きます。
このままの政策が続けば、日本に一部の勝ち組と大多数の負け組という格差の構図ができてしまいます。
こういう話をすると、私はエリートで勝ち組だから問題ないと考える方もいるでしょう。
しかし、少数の勝ち組になったとしてもメリットを上回るデメリットが発生する可能性があります。
弱肉強食の世界では、一部の強者が多くの富を手にし、多数の弱者が残り少ない富を分け合うことに。
以下の勝間さんの動画にあるように、貧富の差が拡大し過ぎると日本は住みにくい国になってしまいます。
格差が拡大すれば、負け組となった大多数が自暴自棄となり、犯罪に走る可能性も高まります。
コロナ禍以後に診療所や電車内であった放火事件のような狂気的な犯罪が日本で増えることになるでしょう。
日本人を豊かにする鍵は緊縮財政から積極財政への転換
では、日本人全体の所得を底上げするためには、どのような政策が必要なのでしょうか?
これまで日本人を貧困化させてきた原因と逆のことをすれば、日本全体を底上げできる可能性があるでしょう。
日本経済をここまで疲弊させてしまった原因は何か?
その原因は、プライマリーバランス(行政が行うサービスにかかる経費を、税収で賄えているかどうかを示す指標)の黒字化を重要視して続けられてきた緊縮財政。
政府が積極的にお金を使うべき不況下で行われた政策が、馬鹿の一つ覚えのように続けられてきた緊縮財政。
景気が悪いのに消費税増税を繰り返して国民からお金を吸い上げ、更に景気は悪くなりました。
現状の日本は景気が停滞しているので個人は節約し、需要が盛り上がらない中で企業は設備投資を控えています。
現在の日本では下記のような負のスパイラルが回り続けています。
個人は将来に不安があり、消費を抑えるようになる
⇓
その結果、モノが売れなくなり企業の業績が下がる
⇓
企業の業績が下げれば、賃金も下がる
⇓
賃金が下がれば、個人は更に消費を抑える
⇓
その結果、更にモノが売れなくなり企業の業績が下がる
⇓
・・・以下、上記の繰り返し
景気が悪い時に個人や企業が節約するのは、非常に合理的なこと。その逆のことを期待するのは愚の骨頂でしょう。
経済が停滞している状況下で、お金を使えるのは国だけ。
国の大胆な財政出動を呼び水として、個人や企業が積極的にお金を使う状況を作り出す必要があります。
では、財政出動の財源は何か?それは国債です。
国債をこれ以上発行すれば、日本は財政破綻(デフォルト)すると反対する方がいます。
しかし、下記記事で解説した通り、自国通貨建ての国債を発行できる日本が財政破綻(デフォルト)することはありません。
よって、3~4%程度のインフレ率になるまでは国債を発行して財政出動することで不況を脱する必要があります。
自国通貨建ての国債を発行している国の財政破綻(デフォルト)はないので、インフレ率を目標に財政出動すべきです。
消費税を廃止してデフレ脱却を目指す
国債を発行し、何を行うべきか?
行うべき政策の1つが、消費税の廃止です。
消費税を廃止して消費が増えれば、経済は活性化します。
経済が活性化して国内の需要が増えれば、企業は設備投資を増やすでしょう。
個人も企業もお金を使うようになれば、更に経済は活性化します。
上記のような好循環が発生すれば、企業は儲かるので従業員の給与も上がるでしょう。
多数の企業が儲かれば、多くの方の賃金が上がることになり、日本人全体の所得を底上げすることにつながります。
また、給料が上がって消費が更に活性化すれば、デフレを脱してインフレになります。
需要が増えることによるインフレはディマンドプルインフレと呼ばれ、経済が好循環する良いインフレ。
ディマンドプルインフレにより物価が上がるようになれば、日銀(日本銀行)による金融緩和政策の出口も見えてきます。
更に経済の好循環が続けば、法人税や所得税の税収が増え、結果的にPB(プライマリーバランス)黒字化も達成できる可能性があるでしょう。
まとめ
岸田政権が掲げる「資産所得倍増計画」では日本人が豊かになることはないでしょう。
今の日本で必要な事は全体的な所得の底上げ。
今日よりも明日、明日よりも1年後の未来が明るいと思える日本を取り戻す事。
高度経済成長期の日本は貧しかったですが、未来に希望がありました。
今は、未来は暗いという連想を持つ人が多い。公的年金の受取額減などがいい例。
副業しないと生きていけない、共働きでないと生きていけないという状態は異常だと思いませんか?
人生には選択肢があった方が良いと思いませんか?
例えば、一つの仕事に打ち込む自由。専業主婦(夫)になって子育てに専念する自由。
日本全体に経済成長に対する諦めの雰囲気が広がっているように感じます。
しかし、諦める必要はありません。日本には財源があり、復活する力があります。
正しい政策が行われれば、日本全体を底上げすることが可能。
7月の参議院選挙では緊縮的な政策を掲げる候補者ではなく、未来を明るくするような積極財政派の候補者に投票することにより、我々の民意を示す必要があります。