現役投資家FPが語る

20年以上の投資経験がある現役投資家FPが「人生100年時代」の資産運用や公的年金など「お金」の知恵について語ります

【要注意】銀行が倒産したら外貨預金は預金保険制度の対象となる?


今年に入ってインフレや円安が進む中で米ドルなどの外貨建ての資産を保有したいと考えている方は少なくないでしょう。

 

そのような方が真っ先に検討するのが外貨預金ではないでしょうか。

 

預貯金は銀行などが破綻しても預金保険制度により元本1000万円とその利息まで保護されると思っている方が多いと思います。

 

では、外貨預金も保護の対象となるのでしょうか?

 

実は、外貨預金は預金保険制度の対象外で保護の対象にはなりません

 

一番身近である銀行預金などの預金保険制度は知っているようで、理解できていない方も多いようです。

 

そこで今回は、下記ポイントについて解説します。

  • 預金保険制度とは?
  • ペイオフとは?
  • 外貨預金は預金保険制度で保護される?
  • 外貨建て保険は保護される?

 

 

預金保険制度とは?

今回の記事を書くきっかけは、金融広報中央委員会が実施している「金融リテラシークイズ」の下記設問でした。

 

預金保険制度で 1 千万円まで保護される預金の種類に関する次の記述のうち、適切なものはどれ でしょうか。

  1. 普通預金だけが保護される 10.4%
  2. 普通預金と定期預金は保護される 38.6%
  3. 普通預金、定期預金、外貨預金など全ての種類の預金が保護される11.0%
  4. 自己責任の原則から、いかなる預金も保護されない 3.7%
  5. わからない 36.4%

(出典:調査結果 ─ 金融リテラシー調査(2022年)|知るぽると 

 

上記設問から分かることは、一番身近である銀行預金についても多くの方がよく理解していないという実情。

 

「わからい」という回答を含めると、6割を超える人が預金保険制度についてよく分かっていません。

 

まずは、預金保険制度の概要について解説したいと思います。

 

預金保険制度とは、万一、金融機関が破綻した場合に一定額の預金等を保護するための保険制度

 

預金者が預金保険制度の対象金融機関に預金等をすると、預金者と金融機関及び預金保険機構の間で自動的に保険関係が成立します。

 

預金保険制度の原資となる保険料は対象金融機関が、前年度の預金量等に応じて毎年、預金保険機構に納付します。

 

よって、預金者が預金保険の手続を行ったり保険料を支払う必要はありません

 

日本の預金保険制度は「預金保険法」(昭和46年制定)により定められており、政府・日本銀行・民間金融機関の出資により設立された預金保険機構が制度の運営主体となっています。

 

ペイオフとは?

銀行預金が保証されるという話題の中で、ペイオフという言葉を聞いた方もいるでしょう。

 

「ペイオフ解禁」などという使われ方をしていました。

 

では、ペイオフと預金保険制度にはどのような関係があるのでしょうか。

 

万一、金融機関が破綻した場合、預金者は「資金援助方式」または「ペイオフ方式」によって保護されます。

 

ペイオフとは、預金保険制度に加盟している金融機関が破綻した場合の預金者保護方法のひとつである「預金者への保険金の直接支払い(ペイオフ方式)」のこと。

 

取扱金融機関が破綻し、かつペイオフ方式が適用された場合は、預金保険機構が預金者に対して一定額まで直接払い戻しをすることになります。

 

なお、「ペイオフ解禁」という言葉は預金の全額保護を終了して「元本1000万円とその利息までは保護され、それを超える金額は保護されない」ということを意味しています。

 

預金保険制度の対象となる金融機関

預金保険制度の対象となる金融機関は、日本国内に本店のある下記の金融機関です。

 

  • 銀行法に規定する銀行
  • 長期信用銀行法に規定する長期信用銀行
  • 信用金庫
  • 信用組合
  • 労働金庫
  • 信金中央金庫
  • 全国信用協同組合連合会
  • 労働金庫連合会
  • 商工組合中央金庫

(注)上記金融機関の海外支店、政府系金融機関、外国銀行の在日支店は預金保険制度の対象外。

 

実際の対象金融機関については下記ページをご参照ください。

対象金融機関

 

預金保険制度で保護される預金とは?

預金保険制度の対象となる預金等の範囲は、下記のとおりです。

 

  • 預金(当座預金、普通預金、別段預金、定期預金、通知預金、納税準備預金、貯蓄預金)
  • 定期積金
  • 掛金
  • 元本補てん契約のある金銭信託(ビッグなどの貸付信託を含む)
  • 金融債(保護預り専用商品に限ります)等

 

保護の範囲

万一、金融機関が破綻した場合に預金保険で保護される預金などの額は以下のとおりです。

 

利息のつく普通預金や定期預金などは、1金融機関ごとに合算して預金者1人当たり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。

 

同一の預金者が同一金融機関内に複数の預金口座を有している場合、複数の口座を集約する「名寄せ」という作業が行われます。

 

よって、名寄せして合算された元本1000万円とその利息が保護の対象。

 

保護の基準を超える部分は破綻金融機関の残余財産の状況に応じて支払われます。つまり、一部カットされる場合があるということ。

 

なお、「当座預金」「利息のつかない普通預金」など決済用預金で、下記3つの要件を満たしているものは全額保護されます。

  1. 決済サービスを提供できる
  2. 預金者が払い戻しをいつでも請求できる
  3. 利息がつかない

 

 

外貨預金は預金保険制度で保護される?

外貨預金は先述の通り、預金保険制度の対象外

 

よって、金融機関が破綻した場合、外貨預金は保護されず、破綻金融機関の残余財産の状況に応じて払い戻されます(一部カットされる場合あり)。

 

外貨預金をするのであれば、預け入れ先の金融機関の経営状況により注意する必要があります。

 

 

外貨建保険は保護される?

外貨預金とともに米ドル建てなどの外貨建保険についても検討されている方が多いと思います。

 

生命保険会社が破綻した場合、外貨建て保険も保護の対象となるのでしょうか?

 

万一契約先の生命保険会社が破綻した場合は、「生命保険契約者保護機構」により積立金の90%まで補償されます。

 

補償されるのは責任準備金等の90%までという点に注意が必要です。

 

 

まとめ

預金保険制度の対象となる預金は、普通預金や定期預金などで、元本1000万円とその利息までです。

 

外貨預金は預金保険制度の対象外ですので、金融機関が破綻した場合には保護されない点には注意が必要。

 

円安とインフレが進む中で、外貨での運用を考える方が多いと思いますが、外貨建ての資産を保有する手段は外貨預金だけではありません。

 

預金保険制度などについても理解しつつ、運用手段を選んで頂ければと思います。