
参院選の争点の一つが消費税減税か現金給付か?
そして、現金給付にしろ減税にしろ必ず出てくるのが財源論。
財源確保の際には「歳出を減らすのか」「税金を上げるのか」などが議論されまが、避けられるのが国債発行。
「赤字国債に頼らない」と考えることが正しいことのように思われています。
本当に国債を発行することは悪いことなのでしょうか?
そこで今回の記事では、「減税や現金給付の財源は赤字国債に頼るべきではないのか?」について解説します。
物価高に苦しんでいる方は参考にしてください。
赤字国債とは?
消費税減税にしろ現金給付にしろ、財源として「赤字国債に頼るでべきではない」と考える日本の政治家が多いのが現状。
大半のマスコミも「赤字国債=悪」としているので、国債発行を悪いことだと考えている方も多いでしょう。
そもそも赤字国債とはどのようなものなのでしょうか?
日本では「財政法第4条第1項」で建設国債以外の国債を発行することが認められていません。
国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
しかし、歳入不足を補うために特例公債法を制定して発行されているのが特例国債。
この特例国債が赤字国債と呼ばれています。
では、赤字国債(特例国債)を発行することは悪いことなのでしょうか?
財政法第4条で建設国債以外の国債が発行が認められていない理由は、戦前に戦費調達の目的で国債が利用されていたから。
二度と戦争を起こさないという反省から財政法4条で国債の発行を認めていないわけです。
しかし、最近の議論では赤字国債を発行すると財政破綻やハイパーインフレの可能性があるなどと論点がすり替わっています。
では、赤字国債を発行すると財政破綻やハイパーインフレが起こるのでしょうか?
自国通貨建ての国債を発行できる日本が「財政破綻」することはありませんし、「ハイパーインフレ」になる可能性もほぼありません。
これは財務省が自ら認めていること。
何よりの証拠が新型コロナの際に日本は100兆を超える赤字国債を発行しましたが、財政破綻もハイパーインフレも起こっていません。

(出典:財務省)
なお、日本で財政破綻(デフォルト)やハイパーインフレが起こる可能性について下記記事で詳細に解説しているので、ご参照ください。
国債は減らすべき?
プライマリーバランス(PB)の黒字化を目指すなど、日本では赤字国債は悪で減らすべきという議論が行われています。
国債残高は減らすべきなのでしょうか?
国(政府)と個人や民間企業を同一視してはいけません。
個人や民間企業はお金を借りれば返す必要がありますし、自ら通貨を発行することはできません。
一方、国(政府)には通貨発行権があります。
国債発行は国(政府)の借入という形をとった単なる通貨発行。
よって、国債を返す必要はありません。
どこの国も満期が到来した国債は、新たに国債を発行して借り換えているのです。
下図を確認すればわかる通り、どの国も国債残高が増える一方。

(出典:https://www.fukurou.win/https-www-fukurou-win-national-government-bond3/)
米国や英国など主要先進国で政府債務を減らしている国はない。つまり返済していない。
国債残高が増えるのは経済成長を目指している国では当たり前のこと。
国(政府)が国債を発行して財政出動すれば、民間に通貨を供給する形になります。
逆に国債を返済するのであれば、国民から税金を徴収してお金を吸い上げる必要があります。
仮に日本の国債残高を一気に返済するのであれば、約1200兆円もの税金を国民から徴収しなければなりません。
そんなことをすれば、日本経済が壊滅的な打撃を受けることになります。
日本がここまで豊かになったのは国(政府)が国債を発行して通貨を供給してきたから。
国(政府)の役目は経済が停滞している時は国債を発行してお金の回りをよくすること。
経済が停滞するときに国(政府)まで節約すれば不況が一層深まります。
逆にバブル時のように景気が過熱している時は、税金を引き上げ国債を返済するなどしてお金を吸収する形で経済の過熱を冷ます。
つまり、国(政府)の通貨発行権と徴税権はアクセルとブレーキとして使うのが正しい経済政策。
経済情勢を考慮することなく、税収を上げる努力ばかりしてきたから日本は約30年間も経済が停滞してきたのです。
債務残高の対GDP比を下げる方法とは?
赤字国債が議論される際には、日本の債務残高の対GDP比率が高いことが問題に上がります。
財政破綻危機で騒がれたギリシャの公的債務残高はピーク時でGDP比200%。一方、2020年時点の日本の公的債務残高はGDP比256%超。

(出典:財務省)
日本の公的債務残高のGDP比率が高い理由は国債を発行し過ぎたからでしょうか?
国債残高の伸び率を他国と比較すると日本が極端に低いことが分かります。
ではなぜ、他国より債務残高が増えていない日本の対GDP比率が高くなるのでしょうか?
それは下図の通り、日本のGDPが伸びていないから。

(出典:https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2104/19/news005_3.html)
1980年から2020年までの40年ほどで、カナダや米国は約7倍、イタリアは約8倍、フランスは約5倍もGDPが増大しています。
一方、日本のGDPは2倍強といった低成長。
日本は緊縮財政のもと国債発行を抑えて財政出動しなかったことにより、他の国に比べて低成長に陥った。
結果、債務残高の対GDP比率が高くなったということ。
他の国は政府が財政出動することで経済が成長したので、債務残高は増えても対GDP比率が上がっていない。
日本は分母のGDPがほとんど伸びない中で、分子の国債残高が増えているためGDP比率が高くなっている状態です。
分子の債務残高を減らす議論ばかりに終始して、分母のGDPを伸ばす議論が行われなかった結果が「失われた30年」という結果を招いたわけです。
将来世代へのツケの先送りとは?
ザイム真理教の信者たちは、「将来世代のツケの先送り」という言葉を好んで使います。
赤字国債を発行すると、それを将来世代が返済する必要があるという文脈で使われてることがほとんど。
残念ながらこの理論は破綻しています。
先述の通り、日本だけでなく他の先進国でも国債は減らしていない。
つまり、国債は返済する必要がないのです。逆に減らすことで国の衰退につながる可能性もあります。
日本では返済する必要のない国債を将来世代のツケとして、ひたすら緊縮財政を続けてきました。
その結果は下記のような悲惨な状態。
- 30年超も経済は停滞
- 実質賃金の低下が続く
- 主食のコメが短期間に高騰
- 人口減少が加速する
- インフラはボロボロ
- 外国人が日本の土地を買いまくる
上記のような悲惨な状況を放置することの方が「将来世代のツケの先送り」ではないでしょうか?
日本が30年超も経済が停滞した理由は、日本国民の能力が低かったからでしょうか?また、勤勉さが足りなかったからでしょうか?
いいえ違います。日本国民は有能で勤勉です。
日本経済が停滞し続けた理由は、政治家が無能だったから。
企業でも優秀な社長から代替わりしたら一気に凋落する例があります。
つまり、司令塔である政治家たちが日本を誤った方向に導いてきたのです。
石破首相など自民党の政治家だけでなく、野党第一党の立憲民主党も責任重大。
特に野田代表は三党合意で消費税を5%から10%まで引き上げる道筋を作った張本人。
自民党や立憲民主党などの政治家は、頭が全くアップデートできていません。
これまで30年超も日本経済を停滞させた誤った政策を反省するどころか、更に誤った方向に日本を向かわせようとする姿には呆れるばかり。
では、日本国民が全くの被害者であったかというとそれも違います。
無能な政治家たちをのさばらしてしまったのは私たち日本国民です。
次の選挙では、緊縮脳をアップデートできていない政治家を一掃するくらいの勢いが必要です。
まとめ

「国債発行=悪」という誤った思考を排除する必要があります。
国債発行は国(政府)の借入という形をとった単なる通貨発行。
よって、国債を返す必要はありません。
国債発行は「将来世代のツケの先送り」でありません!
緊縮財政により疲弊した日本を放置する方が「将来世代のツケの先送り」です。
次の選挙では、「国債発行=悪」という考え方をアップデートできていない緊縮政治家を一掃する必要があります。