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堤防決壊や河川の氾濫による車の水没は車両保険(自動車保険)で補償される?


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2019年10月12日夜から13日の未明にかけ、台風19号が日本を縦断し、日本各地に甚大な被害が出ました。

千曲川の決壊や多摩川の氾濫などで多くの自動車が水没しました。

 

テレビなどの報道で水没した車を見て、自動車保険で補償されるのかと不安になった方も多いと思います。

 

そこで、今回は堤防の決壊や河川の氾濫などにより、車が水没した場合の車両保険(自動車保険)の補償について解説します。

 

なお、堤防の決壊や河川の氾濫などにより発生した自宅建物や家財への水害(水災)に対する火災保険の補償については、下記記事で解説していますので、ご参照ください。 

www.fpinv7.com

 

 

 1.水害(水災)による車の水没は車両保険(自動車保険)で補償される?

堤防が決壊したり河川の氾濫などにより、車が水没し修理が必要となった場合、自動車保険に車両保険をセットしていれば補償されます。

 

車両保険には、補償範囲の広い「一般型」の車両保険と、補償を絞った「エコノミー型」の車両保険がありますが、原則、どちらのタイプの車両保険でも洪水などの水害(水災)で車が水没した場合の修理代が補償されます。

 

【「一般型」車両保険の補償内容

  • 他の自動車との衝突
  • 盗難
  • 火災・爆発
  • 台風・洪水・高潮
  • 落書・いたずら
  • 物の飛来・落下
  • 単独事故(電柱等に衝突)
  • 自転車との衝突
  • 墜落・転覆
  • 当て逃げ

 

【「エコノミー型(車対車+A)」車両保険の補償内容

  • 他の自動車との衝突
  • 盗難
  • 火災・爆発
  • 台風・洪水・高潮
  • 落書・いたずら
  • 物の飛来・落下

 

車両保険で補償される水害(水災)による車の水没事故例

 車両保険で補償される具体的な水害(水災)による車の水没事故例は下記の通りです。

  • 堤防が決壊し、車が水没した
  • 川が氾濫し、車が水没した
  • 大雨により土砂崩れが発生し、車が巻き込まれた
  • 台風による高潮で車が水没した
  • 大雨により機械式駐車場で車が水没した

 

 

2.補償されるのは、車両保険金額まで!?

 車両保険で設定できる保険金額は、車を購入した時の金額が維持されるわけではなく、年々下がっていきます。

仮に水没した車の修理代が車両保険金額を超えるとどうなるのでしょうか?

 

実は、修理代が車両保険金額を超える場合には、物理的に修理が可能でも経済的全損となり、補償は車両保険金額が限度となります。

 

例えば、車両保険金額(補償額)が100万円の車が水没して、修理代が150万円かかる場合、経済的全損となり、受け取れる保険金は車両保険金額の100万円が限度となります(契約内容によっては、全損時諸費用保険金が受け取れます)。

つまり、修理費が全額補償されるわけではないので、水没した車を修理して乗るのであれば、修理代に足りない差額の50万円を自腹で負担する必要があります。

 

水没した車のTwitter画像を集めました。

下記画像のような状況になると、物理的に修理が可能でも、修理代が高額になり、車両保険金額以内で修理できないケースも発生するでしょう。

修理代が全額補償されないケースを考慮すれば、車両保険に入っているからと安心するのは禁物です。

 

 

3.水没した車の修理で車両保険を使うと1等級ダウン

水没した車の修理代に車両保険を使うと、自動車保険の保険料にどのような影響があるのでしょうか?

 

水没した車の修理費などに車両保険を使うと、 1等級ダウン事故となり、次契約のノンフリート等級が1つ下がります。

更に、次契約の等級が7等級以上の場合には、無事故の場合よりも割引率の低い事故有係数が1年間適用され、自動車保険料が上がることになります。

 

例えば、10等級(45%割引)の自動車保険を契約していた車が水没し、車両保険を使って修理をした場合、次契約は1等級ダウンの9等級となります。

事故有係数が1年間適用されるので、割引率は事故有の22%となってしまい、保険料が上がることになります。

 

【水没時の自動車保険契約】

 ノンフリート等級:10等級
事故有係数適用期間:0年
割増引率:45%割引

 

【翌年の自動車保険契約】

ノンフリート等級:9等級
事故有係数適用期間:1年
割増引率22%割引

 

 

4.地震による津波で車が水没した場合、車両保険では補償されない

大雨による河川の氾濫や洪水が原因で車が水没した場合には、車両保険で補償されますが、地震による津波で車が水没した場合、原則、車両保険では補償対象外となります。

高潮による水没は補償されますが、地震による津波が原因の水没は補償対象外となる点に注意が必要です。

 

なお、車両保険に特約をセットすることにより、地震による津波で車が水没した場合も補償対象する保険会社もあります。

 

多くの保険会社は、「地震・噴火・津波危険車両全損時一時金特約」を車両保険にセットすることにより、地震による噴火や津波で車が全損となった場合に50万円(車両保険金額が50万円未満の場合はその金額)の保険金が受け取れます。

 

一方、楽天損保やチャブのように「車両地震特約」をセットすることにより、全損でない場合(一部損)も補償対象とする保険会社もあります。

 

 

まとめ

運転が上手いからといって自動車保険に車両保険をセットしない方もいますが、自然災害は、運転の上手さとは関係ありません。最近では、ゲリラ豪雨などにより予想外の大雨が降り、車が水没するようなケースも発生しています。

川や海に近い場所に車の駐車場がある方は車両保険に加入しておいた方が安心です。

 

ただし、車両保険に加入していても修理代の全額が補償されないケースも発生しますので、堤防の決壊や河川の氾濫が予想されるような時は、事前に車も避難させる方がいいでしょう。