2024年に始まる新NISAでは全世界株式型の投資信託を購入しようと考えている方も多いでしょう。
「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」に連動する投資信託で人気なのが「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)。
オルカンの信託報酬を下回る投資信託が設定されて話題になりました。
更にオルカンが信託報酬を引き下げることに。
コスト(信託報酬)が下がることは我々投資家にとって喜ばしいことですが、行き過ぎた手数料引き下げ競争には注意が必要。
新NISAではどの全世界株式ファンドに投資すべきなのでしょうか?
今回の記事では、新NISAではどの全世界株式ファンドにすべきかと手数料引き下げ競争時に個人投資家が注意すべきポイントについて解説します。
全世界株式ファンドの信託報酬引き下げ競争が勃発
「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」に連動する全世界株式型の投資信託で信託報酬の引き下げ競争が勃発しました。
まず、日興アセットマネジメントが「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」の信託報酬を0.05775%に設定。
全世界株式で人気首位の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が信託報酬を0.1133%以内から引き下げるかに注目が集まりました。
しかし、Tracersの信託報酬には指数使用料等が含まれておらず、実質コストでは0.1%を上限に上乗せされるということで、「eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)」は追随せず。
しかし、野村アセットマネジメントが「はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー)」の信託報酬を0.05775%(指数使用料込み)に設定。
ここで、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)」も追随して2023年9月8日から信託報酬を0.1133%⇒0.05775%にすると発表しました。
現状の3ファンドの信託報酬をまとめると下記の通り。
- 「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」
⇒信託報酬:0.05775%(諸費用上限0.03%) - 「はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー)」
⇒信託報酬:0.05775% - 「eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)」
⇒信託報酬:0.05775%
手数料の引き下げ競争は歓迎すべき?
投資信託の手数料引き下げ競争を手放しで喜んでいる方もいますが、私は不毛な手数料引き下げ競争は慎むべきだと考えています。
インデックスファンドで同じ指数に連動するとなると信託報酬を下げるくらいしか独自性を出すポイントがないのでしょう。
しかし、信託報酬を下げすぎると、運用会社などが適正な利益を確保できない可能性があります。
私は運用会社や販売会社の経営を心配しているわけではありません。
運用会社などが適正な利益を確保できないことにより、ファンドの選択を誤ると最終的に投資家側が不利益を被る可能性につながります。
全世界株式であれば、人気の指数なので信託報酬が高い投資信託でも純資産総額を増やす可能性はあります。
しかし、手数料引き下げ競争に敗れたファンドの純資産総額が大きくならなければ、早期償還の可能性もゼロではないでしょう。
また、インデックス(指数)に合わせて運用できないトラッキングエラーが発生する可能性もあります。
トラッキングエラーとは、ベンチマークからの乖離のこと。
インデックスファンドの目標は、特定の市場指数の動きを追跡すること。しかし、小資産規模が小さい場合、適切な銘柄のウェイトを維持することが難しくなることがあり、結果としてファンドの実際のリターンが目標指数から乖離する可能性がある。
投資信託はETFに比べて手数料が高いと言われてきましたが、「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」に連動する米国ETFのVTの経費率は0.07%。
ついに投資信託の手数料の方が低くなりました。
しかし、VTの純資産総額は280億ドル(4兆円超)とオルカンの約3倍。
純資産総額が小さいオルカン以外の2ファンドは大丈夫なのでしょうか・・・。
新NISAで投資すべき全世界株式型の投資信託はオルカン
新NISAでは、信託報酬の引き下げ競争を繰り広げている3ファンドのうちどれを選ぶべきでしょうか。
現状では「eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)」一択でしょう。
3つのファンドの純資産総額(8月25日現在)を比べると下記の通り。
- 「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」(約14.7億)
- 「eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)」(約1.36兆円)
- 「はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー)」(約4.7億)
上記の通り、オルカンの資産規模は既に1.3兆円超。早期償還の可能性は限りなくゼロに近いでしょう。
また、下図の通り、純資産総額に応じて信託報酬率が引き下がるので、実質的な信託報酬はオルカンが最安の0.05765%。
(出典:三菱UFJ国際投信)
更にeMAXIS Slimシリーズの「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」という点は実績があり、これからも期待が持てます。
オルカン以外のファンドは設定から日が浅いので資産規模が小さく、順調に資産を増やしていくかが未知数。
また、隠れコストもどの程度になるかわかりません。
まとめ
「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」に連動する全世界株式型の投資信託で信託報酬の引き下げ競争が勃発しました。
不毛な信託報酬の引き下げ競争は、ファンドの選択を誤ると最終的に投資家側が不利益を被る可能性があるので注意が必要です。
現状、新NISAで投資するなら資産規模や実績などから「eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)」一択でしょう。