近年、「人生100年時代」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。
長生きできることはありがたいことですが、長生きすることのリスクについても考えざるを得ません。
公的年金や公的医療保険に問題を抱える日本では老後資金について不安を感じている方も多いでしょう。
橘さんの本に人生100年時代の老後資金問題を簡単に解決するヒントがありましたので、ご紹介したいと思います。
『幸福の「資本」論――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」橘玲』
日本人は何歳まで生きるのか?
老後の人生設計で大事なことは、何歳まで生きるかを知ること。
日本人は何歳までいきるのでしょうか?
厚生労働省の「簡易生命表」によると、2019年の日本人の平均寿命は女性が87.45歳、男性が81.41歳でいずれも過去最高を更新しました。
女性が7年連続、男性が8年連続の更新です。
自分が何歳まで生きるかを考える際、平均寿命を参考にする方が多いと思いますが、実は平均余命を知ることが重要。
平均寿命とは、死亡率が今後も変わらないと仮定して、0歳児が平均してあと何年生きられるかを意味します。
つまり、0歳児の平均余命が平均寿命になります。
一方、各年齢の人が平均してあと何年生きられるかの期待値を平均余命といいます。
例えば60歳男性の平均余命(2019年)は23.84年。
年齢の60歳に平均余命の23.84年を足すと83.84歳となり、平均寿命の81.41歳と比べて長くなります。
どの年齢でも平均寿命に比べて平均余命の方が長くなります。
よって、老後の備えを考えるうえでは平均寿命ではなく、平均余命を参考にする必要があります。
老後問題とは老後が長すぎること
老後とは何かを橘さんは、「老後とは人的資本を全て失った状態のこと」と定義しています。
富を手に入れる方法は原理的に2つしかありません。
1つは人的資本を労働市場に投資すること。つまり、働いてお金を稼ぐことです。
もう1つは、金融資本を金融市場に投資すること。すなわち資産運用。
定年を迎えると年金以外の定期収入がなくなり人的資本がゼロになってしまう。ここに老後の問題があります。
老後の定期収入である公的年金が生活費に対して不足するために発生するのが老後2000万円問題でした。
人的資本がゼロとなる老後が長ければ長いほど、老後に不足する生活資金を補填するための金融資産がより多く必要になります。
現役時代が長ければ老後は短くなる
橘さんが提唱する「老後の経済的な不安を解消する最も簡単な方法」は老後を短くすること。
つまり現役で働く期間を長くすること。
老後は自らの意思で長くすることも短くすることもできます。生涯現役なら老後問題そのものがなくなる。
更に夫婦共に人的資本を維持できるなら収入が増え、老後生活はますます安泰です。
生涯共働きを超える最強の人生設計はありません。
長く働くための仕事とは?
現役時代を長くするという方法は一見簡単に思えますが、ただただ長く働けばいいというわけではありません。
仮に、健康寿命を80歳とすると生涯現役という事は、20歳前後から約60年も働くことになります。
60年間も嫌なことをやり続けることは非常に苦痛。生活費を稼ぐためだけの仕事では60年間の労働はキツイでしょう。
逆に好きなことが明確であれば、経験や知識を生かして現役を維持できる方が多いはず。
生きがいを感じる仕事を見付け、知識やスキルを磨く。今後は現役時代からそのような発想が必要でしょう。
人生100年時代の人生戦略はいかに人的資本を長く維持するかにかかっている。そのためには好きを仕事にすることが唯一の選択肢だと橘さんは指摘しています。
金融資産を積み立てれば働かない選択肢が手に入る
人生100年時代には人的資本を長く維持する事が重要ですが、金融資産があれば働かないという選択肢が手に入る可能性が高まります。
現役時代が長くなる「人生100年時代」は、働きたくても健康面で働けなくなるリスクも考慮しておくべき。
これからの時代は「お金」にも働いてもらうという発想も必要。ハイブリット型(人的資本+金融資本)で収入を得ることができれば、安心感が高まります。
これまでのような「終身雇用で退職金を受け取り、公的年金と貯蓄を取り崩して老後を過ごす」という昭和型モデルでは老後破綻の可能性が高くなることは間違いありません。
投資が仕事でも趣味でもない方が「お金」を働かせたいのであれば、インデックス投資がおすすめ。
インデックス投資を活用すれば、ほぼ「ほったらかし」で資産運用をすることができるので、人的資本を磨くことに集中できます。
夫婦共働きで二馬力。そこに金融資産の働きが追加されれば、三馬力になります。
三馬力になれば長い老後生活も安泰でしょう。
現役時代に金融資産を積み立てることができれば、FIRE(早期リタイア)も可能になるかもしれません。
ただし、安易なFIREはデメリットやリスクもあるのでおすすめしませんが・・・。
まとめ
「老後の経済的な不安を解消する最も簡単な方法」は老後を短くすること。つまり現役で働く期間を長くすること。
また、働きたくても健康面で働けなくなるリスクなども考慮して、「お金」にも働いてもらうという発想も必要。
これからの時代は、人的資本を磨きながらも金融資産を積み上げていくことが重要となるでしょう。
長く働く意味でも、長く運用する意味でも健康が最も重要な財産。
人生100年時代は、健康寿命を長くするために健康への投資もケチってはいけない。
これからは日本でもインフレが定着する可能性もあるので、節約だけではなく「稼ぐ」ということにも焦点を当てるべきでしょう。