数年前に公的年金だけでは老後に2000万円が不足するとした金融庁の報告書で、「老後2000万円問題」が話題となりました。
「老後2000万円問題」をきっかけに老後資金について不安を抱いた方も多いでしょう。
「老後2000万円問題」を解決するにはセミナーなどに行って、すぐにでも資産運用を始めるべきなのでしょうか?
今回は、「老後2000万円問題」を解決するための基本的な考え方について解説します。
1.老後もできるだけ長く働く
「老後2000万円問題」を解決する上で大切なことは、資産運用だけではありません。
できるだけ長く働くことも解決法の1つ。
働くことによって収入が入れば、年金だけに頼る期間が短くなります。
年金だけに頼る生活だと貯蓄などの資産を切り崩していかなけばならず、その資産として90歳までに2000万円が必要としたのが金融庁の報告書。
つまり、可能な限り長く働けば、年金収入だけに頼る期間が短くなり、資産を切り崩して生活しないといけない期間が短くなることになります。
そうなれば、準備しなければならない老後資金は少なくてすみます。
できるだけ長く働くことを考えるのであれば、65歳までに2,000万円を準備する必要はありません。
資産を切り崩す期間が短くなればなるほど準備するべき金額は少なくなりますし、65歳以降に働く期間で老後資金を準備できる可能性もあります。
できるだけ長く働くためには、健康に気を付けることも重要。
また、資格を取るなどして自分のスキルを磨き、何歳になっても社会から必要とされる人間になるための自己投資も必要となるでしょう。
若い時から資産運用をしていれば老後に働く必要はないのではないかと思われるかもしれませんが、資産運用には不確定な要素があります。
インデックス投資などリスクを下げながら収益を上げる運用方法もありますが、それでも思ったような運用成果が出せない可能性はゼロではありません。
資産運用よりも磨いておけば頼りになるのが人的資本(稼ぐ力)。
外的な要因で結果が大きく左右される資産運用に頼り過ぎず、自分である程度コントロールできる長く働くことも考慮しておく方が間違いありません。
老後資金は2000万円で足りる?足りない?
なお、「老後2000万円問題」で「2000万円」という数字がひとり歩きしていますが、誰もが老後に2000万円不足するわけではありません。
2000万円も不足しない人もいるでしょうし、逆に不足額が2000万円どころではない人もいるでしょう。
家族構成や現役時代の収入や支出などによって老後に必要となる額は異なります。
大切なことは、一人ひとりが自分に不足するであろう老後資金額を認識することです。
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2.公的年金は老後の柱
「老後2000万円問題」で公的年金だけでは老後生活が成り立たないというのであれば、保険料を支払うだけムダという論調があります。
しかし、公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は非常にメリットが大きい制度。
公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)の大きなメリットの1つが終身年金であるということ。終身年金なので、年金受給者が亡くなるまで年金を受け取れます。
人間は何歳まで生きるか分かりません。
最近では人生100年時代といわれますが、仮に100歳まで長生きしても公的年金は受け取れます。
更に公的年金は物価にスライドします。
物価が上がれば、年金額も上がる仕組みがあるのもメリットの1つ。
マクロ経済スライドの導入により物価の上昇に比べて年金額の上昇は抑えられますが、年金で生活している方には非常にありがたい仕組みです。
公的年金は一般的な個人年金保険に比べても非常にメリットが大きい制度になっています。
よって、公的年金は老後生活の柱と考え、間違っても国民年金の保険料を滞納し、個人年金保険などに加入するというような考えは持たないでください。
3.貯蓄だけで老後資金を準備しない
日本人は元本保証が大好きで、株式投資などの元本割れリスクを極端に嫌います。
「老後2000万円問題」が話題になってからも、元本保証がある預貯金等で老後資金を準備しようと考えている方も多いと思います。
実は、元本保証がある預貯金もリスクゼロなわけではありません。それがインフレのリスク。
長年デフレに苦しんできた日本も、最近ではインフレ(物価上昇)に直面しています。
インフレになるとモノの値段が上がり、お金の価値は相対的に下がってしまいます。
例えば、100円で買えていたジュースが物価の上昇により200円になったとしたら、お金の価値は半分になってしまったことに。
物価上昇の前後で額面の100円は同じでも、買えるモノが半分になってしまいます。
インフレのリスクを考えれば、元本保証のある預貯金のみで老後資金を準備するという考え方は非常に危険であることは間違いありません。
預貯金の金利だけでは、インフレに負けてしまう可能性があります。
日本銀行を含めて多くの国の中央銀行は、緩やかなインフレ(物価上昇率2%)を目指して金融政策を行っています。
最低でも物価上昇率2%に負けない程度の利回りで資産運用を行わいないと、老後資金が実質的に目減りしてしまう可能性があります。
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4.老後が不安でも投資商品に飛びつかない
「老後2000万円問題」で不安になっている投資初心者の方が、投資商品をすすめられる機会も増えています。
しかし、老後に不安を感じても安易にすすめられた投資商品に飛び付くのは危険。
銀行でさえも下記記事のような銀行にとって儲けの大きい商品を売るチャンスを淡々と狙っています。
fp-investor-info.hatenablog.com
マネーセミナーなどに行って、大きな額の投資をすすめられることもあると思いますが、投資初心者の方がいきなり大きな額の投資を行うと立ち直れないくらい大きな損失を被る可能性もあります。
資産運用をあせって始める必要はありません。
仮に20代、30代の方であれば、年金受取開始年齢である65歳まで30年~40年あるわけです。
今日から資産運用を始めるのと3ヶ月後から資産運用を始めるのとで、大きな差は発生しません。
どうしても何か運用を始めたいという方は、少額の積立投資などから始めるといいでしょう。
最近では100円から投資信託を購入できる証券会社があります。
少額から運用を始め、慣れてくれば、大きな額の投資をするという考え方を持つ方が賢明です。
fp-investor-info.hatenablog.com
まとめ
「老後2000万円問題」のような話題が出るとすぐにでも資産運用を始めないとと考える方も多いと思いますが、資産運用だけが「老後2000万円問題」の解決策ではありません。
できるだけ長く働いて、蓄えを切り崩していく期間を短くするという考え方も大切です。
また、投資というと『数十万円の元手で億を稼いだ方法』などといったウルトラC的な手法が話題になりますが、そのような方法は誰にでも真似できる再現性の高い方法ではありません。
ウルトラC的な手法は大きなリターンが期待できる反面、大きなリスクが伴います。
リターンとリスクは表裏一体。
リターンが大きければ、大きな損失を被るリスクがあることを認識する必要があります。
fp-investor-info.hatenablog.com
「老後2000万円問題」を解決するためには長く元気で働けるように準備するとともに、資産運用に関しては老後までの期間を考え、その期間で目標額を達成するような腰を据えた長期の運用を考えることが重要となります。