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個人年金保険で老後資金は準備できる?|デメリットやメリットを解説


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「老後2000万円問題」が話題になり、公的年金を補完するために個人年金保険の活用をすすめている本などがありますが、老後資金準備に個人年金保険を活用すべきなのでしょうか? 

 

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個人的には、老後資金の準備に個人年金保険を積極的に活用することは、おすすめできません。

 

今回は、老後資金の準備に個人年金保険をおすすめできない理由について解説します。

個人年金保険への加入を検討している方は、個人年金保険のデメリットについても知って頂ければと思います。

 

1.個人年金保険とは?

個人年金保険とは、保険料払込期間(60歳や65歳までなど)に保険料を支払うことで、契約時に定めた年齢から一定期間または一生涯にわたって年金が受け取れる貯蓄型の保険です。

万が一払込期間中に被保険者(保障の対象者)が亡くなった場合には、既に払い込まれた保険料相当額が遺族に死亡給付金として支払われます。

 

なお、個人年金保険には、契約時に年金額が確定している「定額年金」と、運用次第で年金額が変わる「変額年金」がありますが、今回は、「定額年金」に絞って話をすすめていきます。

 

定額年金は、契約時に受け取れる年金額が確定しているので、安心感のある商品ですが、下記の理由から積極的な活用はおすすめできません。

 

 

2.老後資金準備に個人年金保険がおすすめできない理由 

老後資金準備に個人年金保険がおすすめできない理由は、個人年金保険に下記のようなデメリットがあるからです。

 

個人年金保険のデメリット①:インフレに弱い

定額の個人年金保険は、物価にスライドしませんので、インフレで物価が上がった場合には、実質的に受け取る年金の価値が目減りしてしまいます。

 

例えば、65歳から10年間、100万円の年金を受け取れる個人年金保険を契約したとして、年金受取時に物価が2倍になっていたら、受け取る年金額は実質的に50万円の価値しかなくなってしまいます。

 

物価が2倍と聞くと驚くからもしれませんが、そんなに驚く数字ではありません。仮に日銀が目標としている年率2%の物価上昇が達成できたとしたら、約36年後には物価が約2倍になります。

 

下図は、現在1,000万円の現金があると仮定して、インフレが進んだ場合のお金の価値を表しています。

インフレ率2%で物価上昇が続いた場合、30年後には現在の1,000万円の価値は545万円まで目減りしてしまいます。

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また、現在、日銀が物価上昇のために金融緩和を継続しているにも関わらず、物価の上昇が鈍いですが、物価上昇が始まった際に日銀がインフレ率をコントロールできる保証はどこにもありません。

 

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個人年金保険のデメリット②:予定利率が低すぎる

バブルの頃の個人年金保険は予定利率が6%程度ありましたが、現在の予定利率は1%もない状態です。

30歳の方が65歳まで保険料を支払い、15年間で2,000万円の年金が受け取れる個人年金保険に加入する事例をシミュレーションしてみました。

 

個人年金保険 契約例

被保険者:30歳男性
払込期間:65歳
保険期間:80歳
予定利率:0.85%
年金額:134万円

月額保険料:44,099円

 

上記契約の総払込保険料は18,521,580円(44,099円×12カ月×35年)で、受け取る年金の総額は、2,010万円(134万円×15年)なので、返戻率は約108.5%です。

上記の個人年金保険は有配当なので、配当を上乗せすれば、更に返戻率は上がります。しかし、配当は保証されているわけではない点には注意が必要です。

 

返戻率が108%と聞くと、この低金利の時代には、銀行預金などと比較するといいのではないかと感じる方もいるでしょう。しかし、35年間で8%しか増えないと考えるべきです。

 

定額の個人年金保険は、世の中の金利が上昇するようになっても、契約時の予定利率が引きあげられることはありません

0.85%という低い予定利率で35年間も資金が固定されてしまうことは、非常にリスクが高いことです。

 

仮に毎月44,000円を投資信託で積立投資をし、年3%で35年間運用できたと仮定したら、下図のようなシミュレーション結果になります。

年利3%で積立運用したシミュレーション結果

(出典:楽天証券) 

 

年3%というと保守的ですが、それでも投資元本18,480,000円に対して、総額32,628,801円まで増えます。

 

予定利率とは?預金金利との違い

なお、保険の予定利率は銀行預金の金利とは異なる点には注意が必要です。銀行預金の金利は預けたお金全額に適用されますが、保険の予定利率は、保険料全てに適用されるわけではありません

保険料から保障料や保険会社の諸経費を差し引いた残りの額が積み立てられ、予定利率が適用されることになります。

 

よって、上記の予定利率0.85%の個人年金保険も、払い込んだ保険料に対しては年利0.45%で積み立てられている計算になります。

 

 

3.個人年金保険は終身年金ではない!?

個人年金保険に加入されている方の中で、個人年金保険は一生涯受け取れる終身年金だと勘違いされている方がいます。

しかし、一般的な個人年金保険は、終身年金ではない点に注意が必要です。

 

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個人年金保険の多くの契約が、年金の受取期間が10年~15年程度の確定年金です。年金を受け取り始めてから10年~15年経過すると年金の受け取りは終了します。

 

終身年金タイプの個人年金保険もありますが、終身年金タイプの個人年金保険にもデメリットがあり、強くおすすめできる商品ではありません。

 

 

4.個人年金保険のメリット|個人年金保険料控除の活用

ここまで個人年金保険のデメリットについて解説してきましたが、個人年金保険が全く役に立たないかというと、そんなことはありません。

個人年金保険を活用するメリットもあります。

 

それが、個人年金保険料控除の活用です。

生命保険料控除には、「一般生命保険控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3枠があります。

 

個人年金保険の契約内容が下記の条件を満たせば、「個人年金保険料税制適格特約」をセットすることができ、払い込んだ保険料が個人年金保険料控除の対象となります。

  • 年金受取人が契約者と同一人で、契約者本人または配偶者であること
  • 保険料払込期間が10年以上
  • 年金開始年齢が60歳以上、かつ年金支払期間が10年以上

 

個人年金保険の保険料を支払うことにより、年末調整や確定申告時に最大、所得税で4万円、住民税で2.8万円を所得から控除でき、所得税・住民税の負担を軽減することができ、節税になります。

所得が多く、所得税の税率が高い方ほど、節税効果は高くなります。

  

個人年金保険の保険料全額が控除の対象ではない

個人年金保険料控除で注意すべきなのが、個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)国民年金基金などのように支払った掛け金全額が所得控除の対象になるわけではないという点です。

所得税は、個人年金保険の保険料を8万円超支払って、最大4万円が所得から控除されます。また、住民税は、個人年金保険の保険料を5.6万円超支払って、最大2.8万円が所得から控除されます。

 

よって、節税効果の高さでは、iDeCo(イデコ)や国民年金基金の方が勝っています。

 

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まとめ

老後資金の準備に個人年金保険をおすすめしない理由についてご理解いただけたでしょうか?

 

個人年金保険はデメリットばかりではなく、個人年金保険料控除を利用できるメリットがありますが、節税効果の高さでは、個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)や国民年金基金の方が勝ります。

よって、まずは節税効果の高いiDeCo(イデコ)や国民年金基金の利用を優先すべきです。

 

個人年金保険には、今回解説したようなデメリットもありますので、個人年金保険料控除を活用する場合でも、控除枠を使う程度に抑えておくべきです。

間違っても個人年金保険で全ての老後資金を準備しようなどとは考えないようにお気を付けください。