日経平均株価は、2024年2月22日に3万9000円を超えて、バブル期の1989年12月に記録された過去最高値を34年ぶりに更新しました。
その後も上昇トレンドが続き、3月1日には3万9910円まで買われました。
しかし、この株高に日本人はどれだけの恩恵を感じているでしょうか。
実は、多くの日本人は株高の恩恵を感じられないというのが現実です。
実際、日本の実質GDPは、下記の通り2四半期連続のマイナス成長。
- 令和5年6~9月期の実質GDPは前期比0.7%減、年率換算では2.9%減。
- 令和5年10~12月期の実質GDPは前期比0.1%減、年率換算では0.4%減。
また、バブル期は世界2位だった名目GDPはドル換算でドイツに抜かれ4位に転落。
株高に反して日本経済が低迷する原因はどこにあるのでしょうか。
今回の記事では、その主な原因3つと我々一般庶民が株高の恩恵を感じるための方策について解説します。
株高の恩恵を感じたいという方は参考にしてください。
なお、当記事の要点を聞き流したい方は以下の動画をご覧ください。
理由①日本の家計が保有する株式は少ない
日本の家計が保有する株式や投資信託は資産全体の約18%に過ぎず、株式市場に上場している企業の3分の1は外国人投資家が保有。
日本の家計の金融資産の内訳を確認すると、現金や預金が52.5%、保険や年金が25.4%、株式や投資信託が17.7%となっています。
つまり、日本人は株式投資に消極的で資産が現金や預金に偏り過ぎていると言えます。
これでは、株価が上がっても資産価値が増えることはありません。
一方、株式市場に上場している企業の株主構成を見ると外国人投資家が3分の1を占めるまでになっています。
(出典:日経新聞)
外国人投資家は日本企業の業績や資本効率の改善、円安などを好感して積極的に日本株を買っています。
これにより株価が押し上げられていますが、その恩恵は外国人投資家に流れていると言えます。
理由②日本企業の余剰資金は配当金や自社株買いに回っている
株主資本主義が叫ばれる中、日本企業は余剰資金を配当金や自社株買いに回し、株価を押し上げていますが、その資金を賃上げや設備投資、研究開発などに回すことが少ない状態です。
日本企業の業績は円安や海外市場の拡大などにより、好調を維持しています。
しかし、その利益の使い道は日本の景気に貢献していません。
日本企業は株主からの要求に応えるために、余剰資金を配当金や自己株買いに回しています。
これにより、株主資本利益率(ROE)や株価純資産倍率(PBR)などの指標が改善され、株価が上昇しています。
しかし、その一方で日本企業は、賃上げや設備投資、研究開発などに資金を回すことが少なくなっています。
これでは、日本経済の内需や成長力が低下し国民の所得も増えません。
実際、日本の実質賃金は21ヶ月連続マイナスの状態。
物価の上昇に賃金の上昇が追い付いていない状態で多くの日本国民はインフレに苦しんでいる状況です。
また、先述の通り、バブル期には世界2位だった名目GDPはドル換算でドイツに抜かれ4位に転落。
バブル崩壊以降、日本のGDPは伸び悩み、2026年にはインドにも抜かれて5位に転落するといわれています。
(出典:日経新聞)
理由③日本企業の収益の海外比率が上がっている
日本企業の業績は好調ですが、グローバル化により海外収益の比率が高くなり、日本国内の景気が盛り上がっていません。
日本企業は、グローバル化の波に乗って海外市場での事業展開を強化しています。これにより、日本企業の海外収益の比率は高くなっています。
その反面、日本国内の景気は消費税増税やコロナ禍などの影響で低迷しています。
国内の個人消費や設備投資は伸び悩んでいる状態。
日本経済はGDPの約6割を占める個人消費に大きく依存しています。
海外収益が好調でも、国内の消費が回復しなければ、日本経済全体の成長は期待できません。
以上が、日経平均株価が史上最高値を更新したにもかかわらず、日本人が株高の恩恵を感じられない理由です。
日本人が好景気を実感するための方策とは?
では、一般の人々が株高の恩恵を感じるためには、どのようなことが必要でしょうか。
約30年間も不況に苦しんでいた日本において、国(政府)が企業に賃上げを要求しても限界があります。
特に大企業ほど収益が上がっていない中小企業には賃上げの余地は小さいでしょう。
中小企業も賃上げが可能になる思い切った下記のような政策が必要になります。
それが、「消費税の廃止」と「法人税の増税及び累進化」です。
消費税を廃止すると日本の景気は改善します。
消費税は消費に対する罰金。モノやサービスを購入するごとに10%の罰金を取られているイメージ。
罰金(消費税)が課されれば、消費は抑制されます。
先述の通り消費は日本のGDPの約6割を占めるので、消費が落ち込めば景気に悪影響を与えます。
また、消費税は雇用を不安定化させる要因にもなります。
具体的には、消費税が非課税である人件費(給与や社会保険料など)には仕入税額控除が使えません。
しかし、従業員を雇用せずに外部へ業務委託する場合、業務委託費用は原則として消費税の課税取引となり、仕入税額控除を利用できます。
つまり、正社員を減らして業務委託契約を増やせば納めるべき消費税は仕入税額控除によって減少。
企業側からすると、消費税の納税額を減らす意味で業務委託契約を増やして正社員の給与や社会保険料を減らすインセンティブが働くことに。
よって、消費税を廃止すれば、正社員が増える形で雇用状況も改善するでしょう。
消費税廃止の財源は?
では、消費税廃止の財源はどこにあるのか?
税に財源を求めるのであれば、法人税の増税と累進化が選択肢となります。
法人税の増税と累進化により大企業が貯めこんだ内部留保を吐き出させて人件費の引き上げや設備投資に回ることが期待できます。
法人税の増税及び累進化で財源が足りなければ、国債発行が選択肢。
国債を発行し過ぎると日本は財政破綻するという方がいますが、日本が円建てで国債を発行している限り財政破綻(デフォルト)することはありません。
これは財務省のHPにも下記のように掲載されています。
『日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない』
消費税の廃止と法人税の増税及び累進化によって、雇用情勢が改善して賃金が上がれば、内需が盛り上がり企業が国内の設備投資を増やすでしょう。
これが実現すれば、内需主導の景気回復となり、更なる株価の上昇も見込まれます。
また、景気が回復すれば、税収が上がり、国債発行を減らしたり、ゼロにできる可能性があります。
日本人全員に株式投資を強要することは現実的ではありません。
内需を盛り上げることにより株価上昇を誘発し、多くの日本人が株高の恩恵に預かれるようにすることが肝要です。
まとめ
日経平均が史上最高値を更新しても日本人が株高の恩恵を感じられない主な理由は下記の通り。
- 日本の家計が保有する株式は少ない
- 日本企業の余剰資金は配当金や自社株買いに回っている
- 日本企業の収益の海外比率が上がっている
一般の人々が株高の恩恵を感じるためには、内需主導の景気回復が起きるような思い切った政策が必要です。
それが、「消費税の廃止」と「法人税の増税及び累進化」。
日本人全員に株式投資を強要することは現実的ではありません。
多くの日本人が豊かさを実感するためには、内需を盛り上げることにより株価上昇を誘発しすることが肝要です。