2022年の出生数は80万人割れで、想定を大きく上回るペースで少子化が進んでいます。
また、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が4月に公表した将来推計人口では、2023年の出生数は76万2000人(外国人含む)と予測。
少子化対策は待ったなしの状態ですが、いまだに財源論に決着がついていません。
そんな中、経団連の十倉会長が下記記事の中で少子化対策の財源として消費税に言及しました。
十倉さんは記事の中で下記のように発言しています。
「少子化対策の財源は社会全体で薄く広く負担すべきだ。消費税だけでなく固定資産税や法人税も含めて排除すべきではない。消費税は歴代内閣が命をかけて取り組み、年金、医療、介護、そして子ども・子育て支援に充当することが定められている。消費税の議論から逃げてはいけない」
経済同友会のトップ櫻田代表幹事も少子化対策の財源として消費税に言及していましたが、消費税は増税すべきなのでしょうか。
今回の記事では少子化対策で消費税を増税すれば少子化は解決するのかについて解説します。
日本の少子化を憂いている方は参考にしてください。
少子化対策で最悪な財源は消費税増税
少子化対策の財源として消費税を増税しても少子化は解決しません。
少子化対策で最悪な財源は消費税です。
少子化対策の財源として消費税を増税すれば、逆に少子化が進むことは間違いありません。
そもそも既に国民負担率が約5割なのに更に増税するのは愚策。
また、物価高に苦しむ日本の実質賃金は15か月連続のマイナス。賃金上昇が物価上昇に追いついていないため消費は低迷。
ここで消費税を上げれば物価が強制的に上がり、G D Pの約5割を締める消費が停滞するのは明らか。
消費税は消費に対する罰金です。モノを買う度に10%の罰金が発生するイメージ。
よって、消費税を増税していいのは景気が加熱し過ぎて消費を抑える必要がある時だけ。
また、次項で解説しますが消費税は雇用も不安定化させます。
消費税は最悪な税金で、日本弱体化装置といっても過言ではありません。
消費税の増税は雇用も減らす
消費税は雇用も不安定化させる悪税です。
雇用を不安定化させる要因は消費税の仕組み。
詳細に解説すると長くなるので簡潔に解説します。
企業が消費税を納税する際、自社の売上時に受け取った消費税額(売上税額)から自社が仕入れなどで支払った消費税額を差し引いた分を納税します。
この仕組みを仕入税額控除といいます。
下図のように受け取った消費税が300円、支払った消費税がで100円であれば納税する消費税は差し引き200円。
(出典:freee)
人件費(給与や社会保険料など)は消費税が非課税なので仕入税額控除が使えません。
しかし、従業員を雇用せずに外部へ業務委託する場合、業務委託費用は原則として消費税の課税取引となります。
つまり、正社員を減らして業務委託契約を増やせば納めるべき消費税は仕入税額控除によって減少。
企業側からすると、消費税の納税額を減らす意味で業務委託契約を増やして正社員の給与や社会保険料を減らすインセンティブが働くことに。
消費税は赤字でも納税する必要がある点でも企業を苦しめます。
消費税の節税策として正社員を減らして業務委託契約を増やすようコンサルする税理士もいるようです。
上記のような仕組なので、消費税を増税すれば更に雇用が不安定化するでしょう。
若い人の雇用が不安定化すれば、結婚する人が減る。
婚外子の少ない日本では婚姻数の減少はダイレクトに少子化につながります。
下記記事でも解説しましたが、少子化対策で力を入れるべきポイントは非婚化の解消。
結婚したいけど収入が低いため結婚できないという人達を減らすことが少子化対策につながります。
増税するべきは法人税
少子化対策の財源として増税しろというのであれば法人税を引き上げるべき。
法人税は所得税のように累進化すべきです。
2022年度の税収は過去最高の71.1兆円。
基幹三税の税収内訳は所得税が22.5兆円、法人税が14.9兆円、消費税が23.1兆円で法人税が最も少額。
更に下図の通り、消費税は導入時の3.3兆円から20兆円超に増えた一方、法人税は約30年前と比べると減っています。
(出典:財務省)
基幹三税の比率を30年前から比較すると、下図の通り消費税の割合が倍増している一方、法人税の割合は小さくなっている。
(出典:財務省)
法人税を下げるために消費税を上げてきたという主張がありますが、納得できる状況です。
大企業が貯めこんだ内部留保を吐き出させて人件費の引き上げや設備投資に回させる意味でも法人税の引き上げが必要でしょう。
消費税の廃止が少子化対策になる
少子化対策を本気でやるのであれば、消費税は増税ではなく廃止すべき。
消費税を廃止すれば、賃金にも上昇圧力がかかるでしょう。
また、消費税10%分の物価が下がります。
物価が下がり、 賃金が上がれば消費も活性化して景気も回復します。
若者の賃金上昇を通して結婚する人が増える。結婚が増えれば出生数が増えて少子化対策にもなる。
消費税が導入されてから約30年間、下図の通り日本のGDPは増えず成長が止まっている状態。
(出典:https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2104/19/news005_3.html)
日本経済の停滞を打破する意味でも消費税は廃止すべき税金です。
消費税を廃止して法人税を累進化すれば、消費が活性化して日本経済は復活するでしょう。
景気が回復すれば、所得税や法人税の税収が増え、将来的には消費税が減った分を補填する可能性があります。
少子化対策の財源は『国債』
消費税を廃止したら20兆円超の税収が吹き飛ぶと怒り出す政治家もいるでしょう。
減った税収を何で補填すべきなのでしょうか。
減った税収を補うべきものは国債。
国債をこれ以上発行すれば、日本は財政破綻(デフォルト)すると反対する方がいます。
しかし、下記記事で解説した通り、自国通貨建ての国債を発行できる日本が財政破綻(デフォルト)することはありません。
自国通貨建ての国債を発行している国の財政破綻(デフォルト)はないので、インフレ率を目標に財政出動すべきです。
よって、3~4%程度のインフレ率になるまでは国債を発行して財政出動することが可能。
まとめ
少子化対策の財源として消費税の増税は愚策。
消費税を増税すれば更に少子化が加速します。
少子化だから日本経済が停滞したという人がいますが、日本経済が停滞しているから少子化になっているのです。
日本経済を30年も停滞させた大きな原因の1つが消費税。
ここで消費税を増税すれば失われた30年が40年になります。
これ以上、政治的な愚策が続けば日本の存続にも関わるでしょう。
政治家達に間違った政策を続けさせないためにも一人でも多くの国民が正しい知識を持つ必要があります。