個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)は、 節税効果がある制度だと理解している方が多いでしょう。
しかし、iDeCo(イデコ)で積み立てた資産を老齢給付として受け取る際には非課税ではなく、課税の対象となります。
「iDeCo(イデコ)は受け取りの際も非課税ではないのか?」「課税の対象であれば、節税効果がないのではないか?」と思われるかもしれません。
実は、iDeCo(イデコ)の老齢給付は、受け取り方によって課税額が変わる可能性があります。
今回は、iDeCo(イデコ)の老齢給付を年金で受け取った場合の課税関係について解説します。
- iDeCo(イデコ)の受け取り時は課税の対象
- iDeCo(イデコ)を年金で受け取った場合に課税される税金とは?
- iDeCo(イデコ)受給時の節税方法とは?
- iDeCo(イデコ)は出口戦略が重要
なお、iDeCo(イデコ)は年金で受け取っても、一時金で受け取っても課税の対象になるのであれば、やらない方がいいかと考える方もいるかもしれません。
しかし、受取時に課税対象となるとしても、受け取り方を少し工夫するだけで税金を抑えることは可能。
また、掛け金の支払い時は所得控除の対象で税負担の軽減が可能なので、iDeCo(イデコ)がおすすめの制度であることは間違いありません。
- iDeCo(イデコ)に節税効果はない!?受け取り時は税金がかかる?
- iDeCo(イデコ)の老齢給付を年金で受け取る場合に課税される税金とは?
- iDeCo(イデコ)と同時に公的年金を受け取る場合は要注意
- iDeCo(イデコ)の老齢給付を受け取る際に税金(所得税・住民税)を抑える方法
- iDeCo(イデコ)は出口戦略が重要
- まとめ
iDeCo(イデコ)に節税効果はない!?受け取り時は税金がかかる?
iDeCo(イデコ)は、掛金が全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税の負担を軽減でき、節税効果があります。
しかし、積み立てた資産を老齢給付として受け取る際には非課税ではなく、課税の対象。
iDeCo(イデコ)の老齢給付は、下記の受取方法を選択できます。
- 一時金
- 年金
- 一時金と年金の併用
一時金で受け取る場合も年金で受け取る場合も、どちらも課税の対象となります。
よって、iDeCo(イデコ)の老齢給付の受け取り方には注意が必要。
老齢給付の受け取り時に課税されてしまうと、掛金の全額所得控除という税制メリットは節税ではなく、課税の繰り延べ(税金の支払期日の延期)ということになってしまいます。
iDeCo(イデコ)の老齢給付を年金で受け取る場合に課税される税金とは?
iDeCo(イデコ)の老齢給付を年金で受け取る場合、受け取った年金は公的年金などと同様に雑所得となり、所得税・住民税の課税対象となります。
しかし、iDeCo(イデコ)を年金で受け取る場合には公的年金等控除があり、所得金額は下表のように計算します(公的年金等に係る雑所得以外の合計所得が1,000万円以下の場合)。
公的年金等の雑所得金額算出(65歳未満) | |
---|---|
公的年金等の収入金額合計 | 公的年金等所得金額 |
60万円未満 | 0円 |
60万円以上130万円未満 | 収入金額-60万円 |
130万円以上410万円未満 | 収入金額×75%-27万5千円 |
410万円以上770万円未満 | 収入金額×85%-68万5千円 |
770万円以上1,000万円未満 | 収入金額×95%-145万5千円 |
1,000万円以上 | 収入金額-195万5千円 |
公的年金等の雑所得金額算出(65歳以上) | |
---|---|
公的年金等の収入金額合計 | 公的年金等所得金額 |
110万円未満 | 0円 |
110万円以上330万円未満 | 収入金額-110万円 |
330万円以上410万円未満 | 収入金額×75%-27万5千円 |
410万円以上770万円未満 | 収入金額×85%-68万5千円 |
770万円以上1,000万円未満 | 収入金額×95%-145万5千円 |
1,000万円以上 | 収入金額-195万5千円 |
65歳未満の方は、年金額が60万円未満であれば、所得金額はゼロとなります。
また、65歳以上の方は年金額が110万円未満であれば、所得金額はゼロとなります。
なお、iDeCo(イデコ)の受け取り時は、運用益部分だけでなく掛金として拠出した元本部分も課税対象。
よって、運用がうまくいかず、年金の受取額が元本(掛金総額)を下回る場合でも控除額を超えると税金がかかる点には注意が必要。
例えば、下記事例のように元本割れの状態でも課税の対象となります。
【老齢年金の受け取り事例】
掛金総額:700万円
年金原資:600万円
年金受取期間:5年(60歳~)
上記事例では、掛金総額の700万円に対して年金原資は600万円。
100万円の運用損が出ている状態ですが、年金を5年間で受け取ると1年あたりの年金額は120万円(手数料を考慮せず)。
65歳未満の方の公的年金等控除額60万円を超えているので、雑所得は60万円となり、他の所得と合算して課税対象となってしまいます。
なお、iDeCo(イデコ)の老齢給付を年金で受け取る場合、国民健康保険料や介護保険料などの社会保険料に影響を与えます。
また、年金を受け取る際はiDeCo(イデコ)の口座管理手数料、年金を受け取るごとに手数料(440円)がかかる点には注意が必要。
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iDeCo(イデコ)と同時に公的年金を受け取る場合は要注意
注意すべきなのが、iDeCo(イデコ)の他に公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)などを同時に受け取るケース。
iDeCo(イデコ)の年金と同時に公的年金を受け取る場合には、公的年金等控除がiDeCo(イデコ)と同枠。
65歳以上の方は年金額が110万円未満であれば所得金額はゼロとなり、税金はかかりません。
しかし、老齢基礎年金の満額で年金額は78万円(令和2年度)なので、iDeCo(イデコ)の年金額が32万円以上だと、年金の合計額が公的年金等控除の枠を超えます。
老齢厚生年金を受け取る方は更に公的年金の額は増えるので、公的年金とiDeCo(イデコ)を同時に受け取ると公的年金等控除額内に収入額を抑えるのは難しいでしょう。
iDeCo(イデコ)の老齢給付を受け取る際に税金(所得税・住民税)を抑える方法
上記の通り、公的年金と同時にiDeCo(イデコ)を受け取ると、受取額が公的年金等控除枠を超え、所得税・住民税の課税が発生する可能性があります。
よって、税金面の負担を考えると、公的年金とiDeCo(イデコ)は同時に受け取らずに受け取る年をずらすのが得策。
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60歳からiDeCo(イデコ)を受け取り、公的年金は繰り下げ受給する
税金を抑える方法の1つが、60歳からiDeCo(イデコ)を受取り、公的年金は70歳などに繰り下げ受給する方法。
公的年金を繰り下げることにより、iDeCo(イデコ)の受取時に公的年金等控除の枠を最大限活用できます。
公的年金を繰り下げて70歳から受け取るのであれば、60歳からの5年間は年間60万円まで、65歳からの5年間は110万円までは非課税でiDeCo(イデコ)の年金を受け取れます。
また、2022年4月からは75歳まで公的年金を繰り下げて受給することが可能になったので、更に公的年金等控除枠の活用が可能。
また、公的年金の繰り下げ受給は税金を抑えるだけでなく、年金の受取額を増やすことにもつながります。
公的年金を繰り下げることにより、下記のように年金額は増額されます。
70歳まで繰り下げた場合:42%UP
75歳まで繰り下げた場合:84%UP
iDeCo(イデコ)を上手く活用すれば、公的年金を繰り下げ受給でき、年金額のUPも可能。
iDeCo(イデコ)は出口戦略が重要
上記の通り、iDeCo(イデコ)は受け取り方によって課税される税金の額が大きく異なる可能性があるため、受給時には課税関係について注意する必要があります。
また、iDeCo(イデコ)で重要となるのが「出口戦略」。
iDeCo(イデコ)で積み立てている資産を受け取りまでにどのような資産配分にしておくかを考えておく必要があります。
例えば、掛金の全てを株式型の投資信託で積み立てている場合、受取の際にコロナショックのような大暴落が発生すると受取額が大きく減ってしまいます。
よって、iDeCo(イデコ)は受給のタイミングに向けて計画的に資産配分の変更(リアロケーション)を行うことが重要。
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「つみたてNISA」であれば、資産を取り崩す際に株式市場が大暴落していても取り崩しを先延ばしにし、運用を継続することが可能。
しかし、iDeCo(イデコ)の場合は、上記のように受け取り方によって課税額が変わるので、受給の時期を先延ばしにできない可能性も。
仮にiDeCo(イデコ)を60歳から年金で受け取ると決めるのであれば、60歳に向けて資産配分を元本確保型の定期預金や保険など、価格変動が小さい資産にリアロケーションしておく方が無難でしょう。
まとめ
iDeCo(イデコ)の積み立てた資産を受け取る場合には、下記の点に注意が必要。
- 一時金、年金のどちらで受け取っても課税の対象
- 公的年金と同時にiDeCo(イデコ)を受け取ると税負担が増える可能性あり
- 受取時期に合わせての出口戦略が重要
なお、今回はiDeCo(イデコ)を年金で受け取る場合について解説しましたが、あくまでも一例であり、他にも一時金や一時金と年金の併用で受け取る方法もあります。
iDeCo(イデコ)を受け取る際には税金のことだけでなく、老後のライフプランや他の収入なども考慮しながら最適な受給方法を考えることが重要。
ただし、どのような方法で受け取るにしても、iDeCo(イデコ)受給時には課税関係を考慮する必要があり、「出口戦略」が必要となることは間違いありません。