先日、銀行が預金者から口座を維持するために徴収する「口座維持手数料」の導入に関するレポートを日銀(日本銀行)が公表しました。
日銀が「口座維持手数料」の導入についてレポートを公表したことで、日本でも本格的に口座維持手数料の導入について議論されることになりそうです。
ついに、日本でも銀行に預金すると、お金が減る「マイナス金利」時代に突入する可能性があります。
口座維持手数料について皆さんが気になる点は、下記のようなポイントではないでしょうか?
- 口座維持手数料は、いつから導入されるのか?
- 口座維持手数料は、いくら取られるのか?
- 口座維持手数料は海外では一般的なのか?
- なぜ、口座維持手数料を徴収する必要があるのか?
今回は、上記ポイントについて解説したいと思います。
- 1.口座維持手数料とは?口座管理手数料との違いは?
- 2.なぜ、口座維持手数料を徴収する必要があるのか?
- 3.口座維持手数料を徴収する本当の理由とは?
- 4.口座維持手数料はいつから導入されるのか?
- 5.口座維持手数料はいくら取られるのか?
- 6.海外では口座維持手数料が当たり前?
- まとめ
1.口座維持手数料とは?口座管理手数料との違いは?
口座維持手数料とは、その名の通り、銀行が口座を維持するための費用を預金者から徴収する手数料です。
口座維持手数料が導入されれば、預金口座を持っているだけで、手数料としてお金を取られることになります。
実際、私たちの預金口座を維持するためには、通帳にかかる印紙税(200円)やデータ管理料など、一口座当たり年間2,000円~3,000円 のコストがかかるそうです。
上記のような費用(コスト)を預金者に負担させるのが「口座維持手数料」です。
私たち預金者から見れば、預金残高から手数料を差し引かれるわけですから、マイナス金利のような形になります。
現状のような低金利の状態であれば、預金に付く利息を口座維持手数料が上回ることになるので、銀行に預金すると、お金が減ることになってしまいます。
口座管理手数料とは?
口座維持手数料とは別に口座管理手数料というものも存在します。
これは、2年間取引(入出金)のない休眠口座(不稼働口座)から徴収されるもので、既にりそな銀行などでは、口座管理手数料の徴収は行われています。
口座管理手数料は、年額1,200円(消費税別)です。
2.なぜ、口座維持手数料を徴収する必要があるのか?
日銀は公表したレポートの中で、口座維持手数料の導入も金融機関にとって一つの選択肢になると指摘しています。
その理由として、下記のように述べています。
- 銀行の決済サービス(振込や口座引落など)は、経済活動に必要不可欠な社会インフラとなっている。
- この決済サービスを維持するのにも莫大な費用がかかる。ここ最近は、本人確認などの規制対応やインターネットバンキングなどのシステム開発費用が増していて、銀行の採算も悪化している。
- 銀行が口座維持手数料を徴収せずに、決済サービスの提供にともなう支出が増えていけば、銀行の決済ビジネスは採算割れし、決済サービスの安定的な供給が困難になる。
そこで、現在、日本の銀行が採用している決済サービスを利用する度に手数料を徴収する個別課金制以外に、下記のような手数料体系を日銀は提案しています。
定額課金制(サブスクリプション)
定額の口座維持手数料を徴収して、決済サービス(振込手数料等)は無料にする。
二部料金制
電気やガス、水道のように基本料金を徴収したうえで、決済サービスの利用の都度、手数料(現在の個別課金制の手数料よりも安い)を徴収する。
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3.口座維持手数料を徴収する本当の理由とは?
レポートの中では、口座維持手数料の導入は、決済サービスの費用が増えたから必要となっていますが、皆さん納得されるでしょうか?
銀行の収益が悪化した理由は、別のところにあります。
銀行の収益が悪化した理由は、下記の新聞記事にあるように、貸出で利ザヤ(貸出金利から預金金利を差し引いた利益)が取れなくなったからです。
銀行が利ザヤが取れなくなった理由は、日銀の金融緩和の影響で低金利が続いているからです。
日銀の当初の目論見は、金融緩和によって経済を活性化させ、景気を浮上させるところにありました。
日銀の目標は2年で2%の物価上昇を達成することでした。
しかし、日銀が当初目標とした2%の物価上昇が達成できず、達成年限を何度も先送りし、異常な低金利状態が長期間続いてきました。
これは、日銀の失敗です。
日銀のレポートの冒頭には、『話を単純化するために決済サービス以外の銀行業務を考慮していない』と断っていますが、日銀の金融政策の失敗に全く触れないのは、あまりにも都合が良すぎます。
今回の日銀のレポートは下記新聞記事の通り、金融政策への批判をかわす狙いもあるでしょう。
日銀の超低金利政策で金融機関の収益は圧迫されている。日銀は「デジタルサービスなどにふさわしい課金体系を検討するためのたたき台を示した」としているが、金融政策への批判の矛先をそらす狙いもありそうだ。
(出典:佐賀新聞)
私には、日銀による金融緩和政策失敗のツケを国民に負担させようとしているようにしか思えません。
Twitte上でも口座維持手数料について、下記のような反応があります。
【社会】日銀の #マイナス金利政策 が銀行の経営を圧迫しており、
— 龍 (@ryuujingoshugo) February 11, 2020
そのつけは、国民の負担になりつつあります。#振り込み手数料値上げ、#口座維持手数料 など¥
うちの県でも大手地銀の店舗の統合等の影響が出ています。
バカな政治家のせいで貧富の格差は拡大し、消費は落ち込む一方になるでしょう。 pic.twitter.com/D2Mxa81PsA
そもそも銀行ってのは他人の金を集めてそれを元手に融資して儲けるものなんじゃないのか?
— 生江有益 (@if2was1) February 10, 2020
借りた金を操作するのに金とろうとか本末転倒じゃねぇか?https://t.co/M2TMxlviGb
4.口座維持手数料はいつから導入されるのか?
日銀に文句を言ったところで、口座維持手数料導入の流れは、現状の低金利状態が続く限り避けることはできないでしょう。
では、いつから口座維持手数料は導入されるのでしょうか?
具体的な導入時期は誰にも分かりませんが、これまで何度となく口座維持手数料の導入に関する話題が出ていますので、そう遠くない未来に徴収される可能性が高いでしょう。
上記の通り、既にりそな銀行では取り引きのない不稼働口座から口座管理手数料を徴収しています。
また、三菱UFJ銀行も口座管理手数料を導入する予定です。
口座維持手数料の導入に向けて、着々と外堀が埋められている状態ではないでしょうか。
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5.口座維持手数料はいくら取られるのか?
口座維持手数料が導入された場合、いくら取られるのかも気になることろです。
口座維持手数料がいくらになるかは、導入する銀行によっても異なるでしょう。
口座を維持するのに2,000円~3,000円のコストが必要とされているので、年間2,000円~3,000円くらいは徴収される可能性があります。
また、日本でも口座維持手数料を導入している銀行があります。
それはSMBC信託銀行です。口座維持手数料は月額2,000円(税抜き)なので、消費税込みで2,200円が毎月徴収されることになります。
口座維持手数料の額は、既に導入されている事例も参考にされるでしょう。
なお、口座維持手数料を導入しているSMBC信託銀行も、無条件で手数料を徴収するわけではありません。
預金口座に一定の残高などがあるなど下記のような条件を満たせば、口座維持手数料は無料となります。
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- 前月の月間平均総取引残高の外貨部分が20万円相当額以上
- 前月の月間平均総取引残高が50万円相当額以上
- 前月末時点でローン商品のお借入れがあること(プレスティア マルチマネークレジットは除く)
- 前月最終営業日の当行所定の時点でプレスティア マルチマネークレジットのお借入があること
- 前月25日(25日が土・日・祝休日の場合は前営業日)時点でSMBC信託銀行の提携クレジットカードの会員であること 外貨積立サービスの初回引落しがあった月の翌月以降、一定の積立がされていること
(出典:SMBC信託銀行)
日本で本格的に口座維持手数料が導入される際には、上記のような仕組みで一定条件を満たせば、手数料は徴収しないという形になるのではないかと思われます。
6.海外では口座維持手数料が当たり前?
アメリカやドイツ、フランスなど、欧米の銀行では口座維持手数料の徴収は一般的のようです。
海外の事例を確認すると、ドイツやアメリカでは月額1,300円程度の口座維持手数料を徴収している銀行があります。
例えば、バンク・オブ・アメリカは月額12ドルの口座維持手数料が徴収されます。
また、日銀のレポートの中には、スウェーデンの銀行の例が出ていますが、口座維持手数料は月額200~300円となっています。
日本で口座維持手数料が導入される際には、海外の事例も参考にされるでしょう。
ただし、海外の銀行が口座維持手数料を徴収しているからといって、日本の銀行も徴収すべきだという議論は乱暴だと思います。
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まとめ
理由はどうであれ、現在の低金利状態が続くようであれば、口座維持手数料の導入は不可避だと思います。
日銀や銀行に文句を言ったところで、この流れは止めることができないでしょう。
であれば、どのように口座維持手数料を回避するかを考え、すぐに対応できるような状態に準備しておくことが必要ではないでしょうか。
下記記事で、口座維持手数料の徴収を避ける方法について解説していますので、ご参照ください。