日本銀行のマイナス金利政策解除に伴い、住宅ローンの金利動向に注目が集まっています。
この政策転換は、住宅ローンを検討中の方々や現在ローンを利用中の方々にとって重要なポイントです。
多くの方が住宅ローンについて下記のようなことで頭を悩ましているでしょう。
- 変動金利型の住宅ローン金利は上がるのか?
- これから住宅ローンを組むなら固定金利型にすべき?
- 変動金利型から固定型の住宅ローンに借り換えるべき?
- 変動金利型の住宅ローンは繰上げ返済すべき?
そこで今回の記事では、日銀のマイナス金利政策解除が私たちの住宅ローンにどのような影響を与えるのか、そしてどのような対策を講じるべきかについて解説します。
変動型の住宅ローンの金利上昇に不安を感じている方は参考にしてください。
なお、今回の記事の要点を聞き流したい方は以下の動画をご覧ください。
- マイナス金利政策とは?
- 日本銀行がマイナス金利政策を解除
- 変動金利型の住宅ローン金利の動向
- これから住宅ローンを組むなら固定金利型にすべき?
- 変動金利型から固定金利型の住宅ローンに借り換えるべき?
- 変動金利型の住宅ローンは繰上げ返済すべき?
- まとめ
マイナス金利政策とは?
まずは簡単にマイナス金利政策について解説したいと思います。
マイナス金利政策とは、日本銀行(日銀)が2016年2月に始めた政策で、銀行が日銀にお金を預けるとき、その一部にマイナスの利息を付けるというもの。
普通、お金を預けると利息がもらえますが、マイナス金利では逆に銀行が日銀にお金を払うことになります。
これにより、お金を中央銀行に預けているだけではなく、企業や個人に貸し出すことを促され、経済活動を活発にすることが狙いです。
日本銀行がマイナス金利政策を解除
日本銀行(日銀)は、2024年3月19日に開いた金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決定しました。
2024年の賃上げ率が5.28%に達し、物価目標2%を「持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した」ため。
マイナス0.1%としていた短期政策金利を0~0.1%程度(無担保コール翌日物レート)に引き上げました。
2007年2月以来17年ぶりに政策金利を引き上げることなりました。
また、長期金利の上限のめどを1%としている長短金利操作YCC(イールドカーブ・コントロール)も撤廃。
上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の新規買い入れの終了も決めました。
変動金利型の住宅ローン金利の動向
日銀のマイナス金利政策の解除により、気になるのが変動型住宅ローンの金利の動向。
変動金利は、日本銀行の政策金利(短期金利)に連動します。
ただし、マイナス金利は解除されても、このまま一気に政策金利を引き上げていく状況にはありません。
よって、日銀のマイナス金利の解除のタイミングで銀行側が変動金利を引き上げることはないようです。
また、 日銀は「当面、緩和的な金融環境が継続する」としているので、変動型住宅ローン金利が上がるとしても急激なものではなく、ゆるやかな上昇となるでしょう。
2024年の賃上げ率が5.28%に達しましたが、好調な業績を維持しているのは大企業だけ。
一部好調な中小企業もありますが、大半の中小企業は大企業のように賃上げを継続できる状況ではないでしょう。
実際、実質賃金は22ヶ月連続でマイナス。コストプッシュ型のインフレにより個人消費は冷え込んでいる状態。
日本経済全体の状況を考慮すれば、日銀がマイナス金利解除後に連続して政策金利を引き上げられる状態にはありません。
これから住宅ローンを組むなら固定金利型にすべき?
金利上昇局面では、住宅ローンは固定型を選ぶのがセオリー。
しかし、先述の通り、日銀が政策金利(短期金利)を急激に引き上げることはないでしょう。
現在、変動型住宅ローンの金利は歴史的な低水準を維持しています。
メガバンクの最優遇金利は年0.3%台から0.4%台、ネット銀行ではさらに低い金利が提供されている状況 。
一方、長期固定金利の住宅ローン「フラット35」は、返済期間が21〜35年の商品で金利が1.84%まで上がっています。
固定と変動の間には1%以上の差があり、返済額に大きな差が発生します。
例えば、返済期間35年で借入金額4000万円を固定金利(1.5%)と変動金利(0.5%)で借りた場合、金利差が1%のままだと仮定すると、総返済額では約780万円、年間返済額では約22万円の差になり、差額は小さくありません。
変動金利が急激に上がることがないのであれば、変動型の住宅ローンを選択することが、より経済的な選択と言えるでしょう。
ただし、変動金利型の住宅ローンが向いているのは資産にゆとりがあり、収入も安定している人。
よって、目先の金利の低さを優先して変動型を選択すると、金利上昇リスクに耐えられない危険性があります。
つまり、変動金利で借入可能額の上限までカツカツで住宅ローンを組むのは危険。
将来の金利上昇に備えて「手元資金を残しておき、繰り上げ返済でローン残高を減らす」などといった対策ができるような余裕を持ったローンを組む必要があります。
変動金利型で住宅ローンを組む場合は、余裕のある返済額になるように借入額を抑えるべき。
住宅ローンを返済しながら余裕資金を運用などして金利が上昇する局面が来れば、繰上げ返済をするというくらいのスタイルが理想でしょう。
余裕を持った返済額で借入額を抑えられないのであれば、その物件は身分不相応と考えるのが無難です。
変動金利型から固定金利型の住宅ローンに借り換えるべき?
現状では変動型から固定型に借り換える必要はないでしょう。
その理由は前項までで解説した通り。
- 日銀が政策金利を大きく金利を引き上げられる経済状況ではない
- 変動金利型と固定金利型の金利差が大きい
ただし、金利が急上昇するような局面に備えて「手元に余裕資金を残しておき、繰り上げ返済でローン残高を減らす」などといった対策ができるように家計を見直すことが肝要です。
変動金利型の住宅ローンは繰上げ返済すべき?
日銀がマイナス金利政策を 解除するようなことがあれば、変動型の住宅ローンは繰り上げ返済すべきかという相談もよく受けます。
これまで解説した通り、変動型金利は超低金利状態です。
また、金利が急上昇するようなことは考えづらい状況。
よって、焦って繰り上げ返済する必要はないでしょう。
例えば、インデックス投資であれば、5%程度の利回りが期待できます。
現状では変動型の住宅ローンで返済額を抑え、浮いた資金を資産運用などに回すのが合理的でしょう。
ただし金利が急上昇するような局面がくれば、余剰資金を繰り上げ返済できるような準備をしておく必要はあります。
まとめ
日銀がマイナス金利政策を解除したので、変動金利から固定金利への借り換えや変動金利よりも全期間固定型の住宅ローンを選ぶべきではないかと考えている方も少なくないでしょう。
しかし、安易な全期間固定金利への借り換えや全期間固定金利の選択はおすすめできません。
変動金利型の住宅ローンをおすすめする理由は下記の通りです。
- 日銀が政策金利を大きく金利を上げられる経済状況ではない
- 変動金利型と固定金利型の金利差が大きい
ただし、金利の動きを正確に予想することは誰にもできません。
現在は歴史的に低金利な状態であることは間違いなく、これ以上金利が低下する余地は低いという認識は持っておくべき。
また、変動金利型の住宅ローンが向いているのは資産にゆとりがあり、収入も安定している人です。
よって、将来の金利上昇に備えて「手元資金を残しておき、繰り上げ返済でローン残高を減らす」などといった対策ができるような余裕を持ったローンを組む必要があります。