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現行NISA(つみたて・一般)の資産は売却して新NISAに移すべき?


新NISAのスタートまで残り1ヶ月を切りました。

 

「2024年に始まる新NISAを活用したいが、現行NISA(つみたて・一般)で保有している商品は売却して新NISAに移すべきか?」というご質問をよく頂きます。

 

同じような疑問を持っている方は少なくないでしょう。

 

そこで今回は、新NISAに向けて現行NISA(つみたて・一般)口座や課税口座で保有している資産を新NISAに移すべきなのかについて解説します。

 

新NISAをフル活用して資産を増やしたい方は参考にしてください。

 

 

現行NISA(つみたて・一般)と新NISAの関係とは?

現行NISA(つみたて・一般)の資産をどうするかを考える上で、現行NISAと新NISAの関係について押さえておくことが必須。

 

そこでまずは、簡単に現行NISAと新NISAの関係について解説します。

 

現行NISAと新NISAは全く別の制度で、非課税枠は通算されません

 

例えば、一般NISAの非課税枠を使い切っていても新NISAには全く影響はなく、生涯投資枠1800万円をフル活用できます。

 

また、現行NISA口座で運用している資産は、それぞれの非課税期間終了まで運用することが可能

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ただし、現行NISA(一般・つみたて)口座で保有している商品(投資信託や株式など)を新NISA口座にロールオーバー(移管)することはできません。

 

現行NISAで運用している投資信託や株式は非課税期間が終了すると課税口座に移すか売却するかのどちらかになります。

 

つまり、現行NISAで保有している資産を新NISA口座に直接移すことはできません

 

現行NISAで保有する投資信託や株式を新NISA口座で運用したい場合、いったん売却して現金化した上で同じ商品を買い直す必要があります。

 

 

保有資産は売却して新NISAに移すべきか?

現行NISAや課税口座で保有する資産を新NISAで買い直すかについては、つみたてNISAと一般NISA、課税口座で考え方が異なります。

 

それぞれの考え方については下記の通りです。

 

つみたてNISA

つみたてNISAで保有する資産はガチホ(長期保有)が基本。

 

つみたてNISAの非課税枠は新NISAとは別枠ですが、保有資産を売ったら非課税枠の再利用は不可

 

つみたてNISAの20年とういう長い非課税期間は貴重。

 

例えば、2023年に非課税枠で積み立た40万円については、2042年まで非課税で運用できます。

 

2018年から始めた方であれば6年、240万円分の非課税枠を可能な限り活用すべきです。

 

一般NISA

一般NISAは非課税期間が5年と短いので、つみたてNISAとは考え方が異なります。

 

原則、新NISAに投入する資金(年間360万円)に余裕があれば、一般NISAの保有資産は買い直す必要はありません

 

一方、新NISAに投入する資金が不足するのであれば、含み益が出ている資産は早めに売却するのが一案でしょう。

 

そのうえで長く持ち続けたい投資信託や株式は新NISAで買い直す。

 

例えば、高配当株を新NISA口座で買い直せば、配当を非課税で受け取り、売却時の利益もすべて手元に残せます。

 

逆に含み損となっている資産は値上がりを待つのも手です。

 

課税口座では損失が出たらほかの利益と相殺する損益通算により課税額を抑えられますが、NISAは損益通算の対象外

 

早期に損失を確定するメリットは乏しいでしょう。

 

当面は値上がりを待ち、非課税期間の終了が近づいた時点で、売却するか課税口座に移すのかを考えるのが一案です。

 

課税口座

新NISAに投入する資金が不足するのであれば、課税口座で保有している株式や投資信託についても新NISAに資産を引っ越しさせるのも選択肢の1つ。

 

課税口座の保有資産についても現行NISAで保有している資産と同様に直接、新NISAに移管することは出来ません

 

よって、課税口座の資産を一度売却して税金を払った後、新NISAで買い直す必要があります。

 

例えば、中長期での成長期待が大きい株式を課税口座で持っているとします。

 

そのまま保有を続けて20万円の売却益が出れば、約20%に当たる約4万円の税が差し引かれる。

 

しかし、売却益が10万円の時点で新NISAで買い直し、同じ株価に上がった時点で売却すれば、支払う税金は買い直しの際の売却時に対する約2万円に抑えられます。

 

原則、価格が上がっていく資産であれば、課税口座から新NISAに乗り換えて保有するのが最適解。

 

特定口座(課税口座)の資産は売却して税金を払ってでも新NISAで買い直す方が得なのかについて数学的に検証した面白い動画がありましたのでご参照ください。

 

 

買い直すタイミングは?

新NISAに資産を引っ越すときには、なるべく高い局面で売り、下がったときに買い直したいと考える人もいるかもしれません。

 

しかし、タイミングを気にせず売却と同時に買い直すのが無難。

 

相場は常に変動しており、先行きを予想するのは難しい。

 

我々素人が売買のタイミングを図っても、買いそびれてしまうなどの事態に陥ってしまう可能性が高い。

 

新NISA口座への保有資産の移管は、長期投資を前提に資産を置く場所を変えるのが目的。

 

資産を新NISAへ引っ越しすると決めたら、その時点での損得は考えずに取引を進めるのが得策でしょう。

 

 

実際の事例を紹介

私の事例をご紹介します。

 

私は現行NISA(一般)で高配当株と投資信託(インデックスファンド)を保有しています。

 

新NISAでは、毎年360万円ずつ資金投入して最短5年で非課税枠を埋める予定。

 

その資金は、収入と預貯金をかき集めるつもりなので、原則、現行NISAや課税口座の資産を売却する予定はありません。

 

ただし、新NISAに投入する資金が不足する事があれば、現行NISAの高配当株や投資信託を売って、新NISAの成長投資枠で買い直そうと考えています。

 

また、現行NISAで保有している含み益がある高配当株の中で、長期で保有するのに相応しくないと判断した銘柄については非課税期間内に売却する予定です。

 

 

まとめ

現在保有する資産を新NISAで買い直すかについては、つみたてNISAと一般NISA、課税口座のそれぞれで考え方が異なります。

 

また、新NISAに投入できる資金量でも取るべき方針は異なります。

 

ご自身に合った戦略を考え、新NISAへの資産の引っ越しをご検討ください。