新NISAの開始に向けて投資信託の手数料引き下げ競争が激化しそうです。
全世界株式ファンドに続き米国株式ファンドでも手数料の値下げ競争が勃発しそうな状況。
新NISAに向けて運用会社もシェアを伸ばしたいのでしょう。
ニッセイアセットマネジメントが11月に「<購⼊・換⾦⼿数料なし>ニッセイ・S米国株式500インデックスファンド」を投入すると発表しました。
信託報酬は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の4割安の水準。
そこで今回の記事では、「<購⼊・換⾦⼿数料なし>ニッセイ・S米国株式500インデックスファンド」についてと「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」から乗り換えるべきかについて解説します。
「<購⼊・換⾦⼿数料なし>ニッセイ・S⽶国株式500インデックスファンド」とは?
ニッセイアセットマネジメントが11月に「<購⼊・換⾦⼿数料なし>ニッセイ・S米国株式500インデックスファンド」を投入する予定です。
信託報酬は年率0.05775%。
三菱UFJアセットマネジメントが運用するS&P500指数に連動する「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の信託報酬0.9372%に比べて4割ほど低くい水準。
信託報酬を抑えるため、ドイツの指数算出会社「ソラクティブ」が提供する「Solactive GBS United States 500 インデックス」を採用。
米国の時価総額上位500銘柄で構成し、S&P500指数との相関係数は0.9996とのこと。
日興アセットマネジメントの「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」の信託報酬には指数使用料等が含まれていないという点が問題になりましたが、信託報酬0.05775%の中には指数利用料が含まれているようです。
設定・運⽤開始は2023年11⽉13⽇の予定で、SBI証券、楽天証券、マネックス証券などで購入できます。
なお、新NISAでは成長投資枠で購入できるようになります。
手数料(信託報酬)が最安の投資信託に乗り換えるべき?
米国株ファンドといえば「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を購入している方が多いでしょう。
今後は、信託報酬が安い「<購⼊・換⾦⼿数料なし>ニッセイ・S米国株式500インデックスファンド」に乗り換えるべきでしょうか?
現状は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」から乗り換える必要はないと考えます。
実質コストを確認する必要がありますし、eMAXIS Slimシリーズを運用する三菱UFJアセットマネジメントの動きを確認してからでも遅くありません。
実質コストとは?
投資家が負担する実際のコスト(実質コスト=信託報酬+隠れコスト)のこと。
投資信託には、信託報酬以外に監査法人に支払われるファンドの監査費用などの隠れコストがあります。
実際に運用をしないと確定しないコストのため、「目論見書」には具体的な金額の記載はなく、金額を確認するためには「運用報告書」を確認する必要があります。
全世界株式ファンドの手数料引き下げ競争の際には、「eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)」も信託報酬を他のファンドに合わせて0.05775%に引き下げました。
今後、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」も信託報酬を引き下げる可能性があります。
eMAXIS Slimシリーズの「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」という点は実績があり、これからも期待が持てます。
資産運用は80点くらい取ればいい!?
手数料が最安で最もリターンが高いであろう投資信託を常に探し求めるのは大変です。
投資のプロではない我々一般投資家は80点で合格と考えるくらいがいいのではないでしょうか。
何事も完璧を目指すとストレスになります。手数料率でコンマ以下の世界を追い求めるよりも人生には大切な事が沢山あるはず。
インデックス投資の目的の1つは時間の節約でもあるわけです。
であれば、80点と思える投資信託を選んでいるのであれば、乗り換える必要はない。
劇的にリターンなどが変わるような投資信託が出れば別ですが、そうでない限りはいちいち流行を追いかける必要はないでしょう。
最も重要なことは、80点でも長期間投資を続けて複利の力を活用する事です。
まとめ
信託報酬が年0.05775%の「<購⼊・換⾦⼿数料なし>ニッセイ・S米国株式500インデックスファンド」が販売される予定ですが、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」から乗り換える必要はないでしょう。
実質コストを確認する必要がありますし、eMAXIS Slimシリーズを運用する三菱UFJアセットマネジメントの動きを確認してからでも遅くありません。
投資信託の手数料引き下げ競争を手放しで喜んでいる方もいますが、私は不毛な手数料引き下げ競争は慎むべきだと考えています。
信託報酬を下げ過ぎると、運用会社などが適正な利益を確保できない可能性があります。
私は運用会社や販売会社の経営を心配しているわけではありません。手数料の値下げ競争で最終的に割を食うのは一般投資家だからです。
証券会社や運用会社は営利企業。どこかで利益を削れば、どこかで補填する必要があります。
実際、運用会社は採算の良いアクティブ型投信の開発に力を入れざるを得ないでしょう。
手数料が高くても運用利回りが高ければいいですが、投資家の利益度外視のアクティブファンドがあることも事実。
運用会社や証券会社には適正な利潤を取ってもらって、我々投資家に不利な商品を売りつけなくてもいいようする事が、最終的にはWin-Winの状態だと思います。