「資産運用はよくわからない」「面倒だから誰かに任せたい」という方も少なくないでしょう。
そのような需要がある中で、運用をプロに任せられるファンドラップの残高が増えています。
難しいイメージのある資産運用をプロに任せられるところがメリットで、資産残高を増やしているファンドラップですが、おすすめできる商品ではありません。
資産運用を金融機関に「お任せ」すると、大切な資産を減らしてしまう可能性すらあります。
今回は、ファンドラップをおすすめできない理由について解説します。
今後、銀行の窓口などでもすすめられることが増える可能性がある商品なので、今回の記事を参考にしてください。
ファンドラップとは?
ファンドラップとは、まとまった額の資産を金融機関(証券会社や銀行)に預けて投資一任契約を結び、資産管理・運用をプロに任せるサービス。
ファンドラップは、もともとは富裕層向けの商品で最低投資金額が数千万円程度必要でした。
しかし、近年では最低投資金が300万円程度となり、オンラインで完結するものであれば最低1万円から利用可能になるなど、一般の人にとっても身近なサービスになりつつあります。
(出典:大和証券)
一見、資産運用がよく分からない初心者にとっては、プロに運用を任せられるありがたいサービスに思えます。
しかし、本当に顧客にとってありがたいサービスなのかを見極めることが重要。
ファンドラップの基本的な仕組みは、顧客に合わせたオーダーメイドのすごい運用をしてくれるというよりは、投資信託を代わりに売買してくれるという形のサービスです。
投資信託の「乗り換え営業」自粛後の手数料を稼ぐ手段
以前は乗り換え営業といって顧客に次々と投資信託を乗り換えさせ、銀行や証券会社が手数料を稼ぐという手法が横行していました。
顧客が投資信託を長期保有すると、金融機関には信託報酬の一部しか入りません。
しかし、乗り換え営業により顧客が投資信託を売買する度に販売時手数料が入ります。
売買の回数が多いほど金融機関は儲かることになり、顧客は手数料分だけ投資の収益が削られます。
収益がマイナスでも手数料を取られるので、顧客の資産は大きくマイナスになる可能性も。
頻繁な乗り換え営業をされると、儲かるのは銀行や証券会社ばかりで、顧客は資産を減らすことになる可能性大。
「乗り換え営業」は金融庁から問題視され、やめるようにお達しが出ました。
しかし、証券会社や銀行は「乗り換え営業」自粛後も新たな手法で手数料を稼いでいます。
それがファンドラップ。
証券会社や銀行が「乗り換え営業」の自粛後に手数料を稼ぐ手段の1つとして力を入れているのがファンドラップということです。
それでは、次項でファンドラップのデメリットについて解説します。
ファンドラップのデメリットとは?
ファンドラップのデメリットは下記の通りです。
手数料が高い
ファンドラップの手数料は分かりにくく、ある証券会社のファンドラップの手数料(投資顧問料+取引等管理手数料)は「預かり資産に対して1.54%(年率)」となっています。
しかし、取られる手数料はそれだけではありません。
購入する投資信託の信託報酬が必要で、二重で手数料を取られることになります。
信託報酬は0.6%~1.49%となっていて、この証券会社のファンドラップを利用した場合、かかる手数料は最大で3.03%(1.54%+1.49%)。
ファンドラップを利用するだけで毎年3%もの手数料を差し引かれてしまい、約3%を超える運用成果を出せなければ、手数料負けして元本割れの可能性もあります。
高い収益や元本が保証されているわけではない
他人に運用を任せるということを考えれば、手間賃(手数料)を払うのは当たり前のことでしょう。
証券会社などの金融機関はボランティアではなく営利企業なので、手数料を取ること自体は問題ではありません。
問題なのは、顧客が高い手数料を払ったからといって元本が保証されるわけではありませんし、高い収益が保証されているわけでもありません。
投資顧問料を取られたうえに、信託報酬が高い商品を買わされる可能性もあります。
ファンドラップは証券会社や銀行が儲けるための仕組みであって、顧客にメリットがあるわけではない点が問題。
インデックス型の投資信託を自分で買って運用した方がリターンが高くなるケースの方が多いでしょう。
最低投資額が高い
ファンドラップの最低投資額が下がってきているとはいっても、投資初心者の方にとって大きな額であることは間違いありません。
ある証券のファンドラップは最低500万円から。
一括投資は相場急落時に大きな損失を被る危険性があり、大きな下落は資産運用に慣れていない方にとっては精神的に耐えられない可能性があります。
一括投資後の相場が良好で有ればいいですが、直後にリーマンショックやコロナショックという大暴落相場に見舞われる可能性も。
資産が50%近く減る可能性もある中で、そのような暴落を初心者が耐えられでしょうか。
投資初心者の方は少額の積立投資から始め、資産価格の変動に慣れるのがベター。
ネット証券であれば100円から投資信託の購入が可能で、少額から積立投資が始められます。
マネーリテラシーを上げるためにも自分で運用する
投資は自分の判断で行うことにより、金融リテラシーが上がるというメリットもあるので、自分で資産運用を学んで行う方がベター。
短期売買を繰り返すような投機ではなく、投資をしたいと考えるのであれば、運用期間は長期になります。
長期の運用では、好調な状況が続くわけではありません。
10年に1回程度は、リーマンショックやコロナショックのような大きな下落相場を経験せざるを得ません。
保有している資産の評価額が大きくマイナスとなるケースもあります。
投資の知識がないと、下落局面で焦って判断を誤ってしまう方もいるでしょう。
例えば、ドルコスト平均法を活用して積立投資をしているのに下落局面で積み立てを止めたり、資産を売ってしまうという最大の愚を犯してしまう可能性もあります。
長期間、心を乱されることなく資産運用を継続しようと思えば、ある程度の知識(金融リテラシー)が必要になるのは間違いありません。
老後に向けて金融リテラシーの向上が重要
お金を稼ぐには下記の2つの方法があります。
1つは人的資本を労働市場に投資すること。つまり、働いてお金を稼ぐことです。
もう1つは、金融資本を金融市場に投資すること。すなわち資産運用。
現役を引退すると人的資本はゼロとなり、お金を稼ぐ方法が金融資本のみになることを考えると、若い時から金融リテラシーを上げる訓練をしておいた方がいいことは間違いありません。
誰かに頼るのではなく、自分の頭で考えて運用を始める事が金融リテラシー向上につながります。
今はいくらでも無料で優良な情報にアクセスすることができるいい時代。
資産運用について学びたいという気持ちがあれば、金融機関の窓口に行かなくても無料でいくらでも学ぶことができます。
昭和型モデルは崩壊寸前!?
以前の日本では「終身雇用で退職金を受け取り、公的年金と貯蓄を取り崩して老後を過ごす」という昭和型モデルで、人生を乗り切る事ができました。
しかし、既に昭和型モデルは崩壊寸前。
我々、現役世代が引退する頃には、老後資金を退職金や公的年金に過度に頼ることはできないため、金融リテラシーが低いと下流老人や老後破綻に陥る可能性大です。
自分で資産運用をするといっても、初めから目標を高く設定する必要はありません。
証券口座を開設し、100円や1000円でもいいから投資信託を買ってみることを目標にしてみてはいかがでしょうか?
一歩目のハードルを低くした方が物事を始めやすいことは間違いありません。
そして、一歩目さえ踏み出せれば、二歩目以降が続いていく可能性が高くなります。
まとめ
ファンドラップは手数料が高く、顧客ではなく銀行や証券会社が儲かる仕組みになっているため、おすすめできません。
個人の預金を狙って地方銀行がファンドラップの取り扱い始めているという報道もありました。
銀行の窓口でファンドラップをすすめられる機会も増える事が予想されので注意が必要。
資産運用をお任せしたいという気持ちがあるのはわかります。しかし、お任せする相手を選ばないと、大きな損失を被る可能性があります。
自分の頭で考える事を放棄してしまうと、金融機関などのカモになり大切な資産を溶かされてしまうことになるでしょう。