現役投資家FPが語る

20年以上の投資経験がある現役投資家FPが「人生100年時代」の資産運用や公的年金など「お金」の知恵について語ります

【年金月5万円・紫苑さん】低年金でも老後破産は回避できる?


将来、受け取れる公的年金の額の少なさを知って愕然する方は少なくありません。

 

「受け取れる年金だけで生活していけるのか?」「老後破産してしまうのではないか?」と心配になる方も多いでしょう。

 

低年金の方はどのような生活をしているのか気になって手にしたのが紫苑さんの本。

『71歳、年金月5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活 紫苑』

 

紫苑さんは毎月5万円という公的年金の範囲内で生活すべく節約に励んでいます。

 

今回の記事では紫苑さんの本を参考に下記ポイントについて開設したいと思います。

  • 毎月5万円の年金で生活できるのか?
  • 低年金にならないためのポイント
  • 低年金を乗り切るためのポイント

 

公的年金だけで生活できるか不安を感じている方は参考にしてください。

 

 

低年金は節約で乗り切れる?

紫苑さんは地方新聞社勤務を経てフリーで仕事をしていたそうです。

 

企業年金を数年間払っていたが、会社を辞めた際に一括で受け取り、その後はフリーランスだったこともあり年金は月5万円。

 

2020年3月から「月5万円年金生活」を実行しはじめ、その内容をブログで発信。

 

紫苑さんは節約という言葉が嫌いだったそうです。「節約生活」は苦手で、今も苦手とのこと。

 

更に数字に弱く、お金の計算も苦手だそう。

 

しかし、紫苑さんの節約生活は全くマイナスのイメージがなく、料理やファッションなどを工夫して楽しんでいる点が好感が持てます。

 

「節約は知的な行為」として前向きに節約する姿は、多くの方にとって参考になるでしょう。

 

しかし、誰もが紫苑さんのように月5万円の年金で生活できるかというと、それは難しいと思います。

 

そもそも、それぞれの方にそれぞれの前提条件があります。例えば、持ち家なのか賃貸なのかなど。

 

また、誰もが紫苑さんのように節約を「知的な行為」として楽しめるとは思えません。

 

下記記事で解説した通り、過度な節約は避けた方がいいでしょう。貧乏マインドを引き寄せてしまいます。

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多くの方にとって節約は固定費の削減程度に抑えた方が無難。変動費を節約するのであれば、その労力を稼ぐことに使った方がいいでしょう。

 

インフレ時代に低年金は厳しい

現在の紫苑さんは出版や取材などで年金以外にも収入があるでしょう。

 

仮に収入が年金5万円のみであったら現状のインフレを乗り越えるのは厳しいと思います。

 

公的年金は物価が上昇すれば支給額が上がる仕組みになっていますが、完全には連動しません

 

マクロ経済スライドが導入されているため、物価上昇に年金額は追い付かない仕組み。

 

デフレ時代ならまだしも、インフレ時代に年金が月5万円では持ち家だとしても非常に厳しいでしょう。

 

 

低年金に陥らないためのポイント

物価が上昇する時代に月5万円の年金では、持ち家で節約上手だったとしても非常に厳しい生活を強いられるでしょう。

 

やはり、低年金に陥らないように注意することが重要です。

 

紫苑さんが低年金に陥ってしまった原因をヒントに、低年金に陥らないためのポイントを解説したいと思います。

 

お金を考えることから逃げない

低年金に陥らないためのに注意すべきポイントの1つは、目の前のことだけに精一杯にならないこと。

 

紫苑さんは母子家庭でフリーランス。更にお金について考えるのが苦手ということで、お金と向き合うことから逃げていたそうです。

 

仕事と子育てが大変だとしても少し冷静に自分の状況を観察する時間を確保する。

 

毎日忙しくして稼ぐよりも、冷静に自分のお金の状況を客観視できる時間を意識的に確保することの方が重要です。

 

プロに相談する

自分では客観的に考えられないのであれば、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談するのも一つの手段。

 

保険や証券などの金融商品を売らない独立系のFPに相談するのがおすすめ

 

独立系のFPであれば、保険や投資だけでなく下記のような公的な上乗せ制度もすすめてくれるでしょう。

 

公的な上乗せ制度の活用

紫苑さんはフリーランスで収入が不安定でありながら、まとまった収入が入ったこともあったそう。

 

しかし、その資金を使った投資で失敗。典型的な投資初心者が失敗するパターン。

 

収入が増えたのであれば、まずは公的な上乗せ制度を活用するべきです。

 

例えば国民年金基金iDeCo小規模企業共済

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公的な制度を活用すれば、掛金が所得控除になるので節税にもなります

 

なお、紫苑さんの収入が多かったであろう頃の国民年金基金は予定利率が高かったので加入してれば、年金が月5万円という事態は避けられたはず。

 

しかし、現在の国民年金基金は予定利率が低い点には注意が必要

 

現在のような低金利時代はiDeCoで運用する方が将来の受取額が多くなる可能性があります。

 

収入が不安定で掛け金の支払いが続けられるか心配という方は、まとまった収入が入った際にその資金をプールしておいて、国民年金基金や小規模企業共済に入れていく方法もあります。

 

例えば100万円の収入があった場合、その資金を一気に投資などに回すのではなく、プールしておいて毎月の収入で足りない場合の掛金用に貯蓄しておく。

 

毎月3万円の掛金であれば、100万円の資金で約3年間の掛金支払が可能です。

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見栄で消費しない

紫苑さんは家賃24万円のタワマンに8年間も住んでいたそうです。

 

家賃の総額はなんと2,304万円(24万円×12ヶ月×8年間)。

 

見栄と体面があって家賃が安い所に引っ越すのが遅れたとのこと。

 

見栄による消費は危険

 

紫苑さんのように家賃で見栄を張ってしまうと将来的には何も残らない状態になってしまいます。

 

24万円も家賃を払えるのであれば、その一部を国民年金基金や小規模企業共済の掛け金に回しておくべきでした。

 

また、毎月2万円の保険料が高いということで積立型の生命保険を解約したそうですが、24万円の家賃を払うくらいであれば、その一部で保険料を払い続けた方が良かったかも。

 

紫苑さんが加入していた保険は予定利率が高いお宝保険だった可能性もあります。

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お金を貯められない方は、生命保険の強制貯蓄機能を使うのも一つの方法です。

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低年金からの脱出法

現在、現役世代の方は先述のポイントを確認して低年金になることを避けるべき。

 

しかし、既に低年金が確定してしまっている場合は、どうのように対処すべきでしょうか。

 

解決策としては、長く働くこと。収入が年金のみになる老後を短くできれば、低年金の問題を小さくすることができます

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また、70歳まで厚生年金に加入できれば、年金額を増やすことも可能。

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また、働ける間は年金は受け取らず繰り下げをして年金額を上げる

 

年金額を上げることにより老後破綻を避けることができるかもしれません。

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個人の努力では限界

低年金であれば、働ける間は働くしかない。

 

しかし、それも限界があります。健康面などの理由から働けない場合は、国(政府)からの援助に頼るべき。

 

生活保護公的年金や労働収入があっても基準額に満たなければ、申請できます

 

個人的には低年金の場合、生活保護から無条件で上乗せを出してもいいと思います。

 

月5万円の年金で生活できている紫苑さんの事例を美談にしてはいけません

 

紫苑さんの家計簿によると食費と水道光熱費が合計で月2万円。これが日本国憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」レベルなのでしょうか。

 

毎月5万円の年金では健康で文化的な最低限度の生活ができる人の方が少ない

 

紫苑さんは特別。

 

個人の努力には限界があり、今の円安・物価高は個人で抗えるものではありません。

 

そもそも現在の不況下の物価高の原因は国(政府)の失政。よって国(政府)が苦しんでいる人を助けるべきです。

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自己責任論で切り捨てない

低年金は本人の努力が足りなかったからと指摘する人がいます。確かにそうのような側面があることは否めません。

 

しかし、人間は機械ではありません。

 

誰もが合理的に努力し続けられるわけではない。どこかで選択をミスすることもあります。

 

それを助け合えるのが人間。

 

同じ日本人同士、困った時は助け合うのが当たり前ではないでしょうか。情けは人のためならず。

 

今は豊かな生活ができている人でも、人生何があるか分かりません。誰かに助けてもらう場面が発生する可能性もゼロではありません。

 

現在の日本のように国(政府)が国民に自己責任を強要すると貧富の格差が開きます

 

このままの政策が続けば、日本に一部の勝ち組と大多数の負け組という格差の構図ができてしまいます。

 

こういう話をすると、私はエリートで勝ち組だから問題ないと考える方もいるでしょう。

 

しかし、少数の勝ち組になったとしてもメリットを上回るデメリットが発生する可能性があります。 

 

弱肉強食の世界では、一部の強者が多くの富を手にし、多数の弱者が残り少ない富を分け合うことに。

 

以下の勝間さんの動画にあるように、貧富の差が拡大し過ぎると日本は住みにくい国になってしまいます。

 

格差が拡大すれば、同じ日本人同士でムダな憎しみの感情も生まれて住みにくい社会になります。

 

日本が安全なのは日本人の人間性もあると思いますが、総中流で格差が無かったからではないでしょうか。

 

その安全が格差の拡大や安易な外国人労働者の受け入れで崩壊しつつあります。

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安定財源である国債を活用する

低年金の方を支援するという話をすると、「その財源はどこにあるのか?」と心配になる方もいるでしょう。

 

財源はあります。

 

現役世代が支払う社会保険料や税金で足りなければ、国債を発行すれば済む話

 

社会保険料や税金のみが財源だと勘違いするから話がおかしくなる。

 

「私達の払った社会保険料や税金を低年金者などに配るな」などと怒る方がいますが、現役世代の払った社会保険料や税金ではなく国債を発行して低年金者を支援すればいいのです。

 

下記記事で解説した通り、自国通貨建ての国債を発行できる日本がデフォルト(財政破綻)することはありません

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少子高齢化が進む日本では、年金生活者もお金を使ってくれた方が日本経済は回ります。

 

低年金の方を国(政府)が支援して気持ち良くお金を使ってもらい、消費者として日本経済を支えてもらう

 

その方が日本の景気が良くなることは間違いありません。

 

景気が上向けば、現役世代の収入も上がるようになり、国(政府)から支援を受けていない方にも恩恵があります。

 

 

まとめ

紫苑さんの節約術は本当に素晴らしいと思います。

 

月5万円の年金で暮らしてく努力には頭の下がる思い。

 

しかし、誰でもできることではありません。

 

多くの方にとって月5万円の年金では健康で文化的な最低限度の生活は送れません

 

ムリせずに必要であれば生活保護を受け取るべきですし、国(政府)が積極的に支援していくべき。

 

国には国債という安定財源があるわけですから低年金の人を救うことは難しくありません。

 

低年金の方を支援し、その方たちが消費者として日本経済を支えてくれる方が現役世代の生活も豊になります。

 

現役世代が豊かになれば、国の社会保険料収入や税収も上がります。