株式や投資信託などで資産運用を行えば、元本割れのリスクを避けることはできません。
投資初心者の方が元本割れのリスクを乗り越え、資産運用を始めるのは大変なことだと思います。
「老後2000万円問題」なども話題になったので資産運用を始めたいと考えているが、どうしてもリスクを負うのが怖い。
極力元本割れのリスクがない商品で運用したいと考えている方も多いでしょう。
そのような方に私がおすすめしているのが、個人向け国債(変動10年)です。
今回は、元本割れリスクを負いたくない方に個人向け国債(変動10年)をおすすめする理由と注意点について解説します。
1.個人向け国債とは?
個人向け国債とは、個人の国債保有を促すための商品で1万円から購入できます。
毎月募集、発行が行われていて発行から1年経過すれば、 購入金額の全部または一部を途中換金することもできます。
金融機関(銀行、証券会社など)の窓口で、個人の方のみ購入可能。
個人向け国債には、変動10年、固定5年、固定3年の3種類がありますが、私がおすすめするのは変動10年。
現状のような金利の低い状態の時に金利を固定する「固定5年」や「固定3年」はおすすめできません。
金利については、固定型だけでなく変動型についても最低保証があり、年利0.05%が保証されています。
2.個人向け国債(変動10年)をおすすめする2つの理由
私が、どうしても元本割れリスクを負いたくない方に個人向け国債(変動10年)をおすすめする理由は下記の通りです。
おすすめの理由①:インフレへの備え
個人向け国債(10年変動)は、半年毎に適用する利率が変わる「変動金利」を採用しています。
適用利率は「基準金利×0.66」。市場の金利の動きに応じて適用される利率が半年ごとに変動します。
つまり、市場金利が上がれば、受取利子も増えることになり、インフレへの備えが可能。
なぜ、インフレへの備えが必要なのでしょうか?それは、インフレが起こると、お金の価値が目減りしてしまうから。
インフレでモノの値段が上がった場合、お金の価値は相対的に目減りします。
例えば、インフレで物価が2倍になった場合、お金の価値は半分になってしまいます。
日本人は元本保証が好きですが、元本保証は額面の保証であって価値の保証ではないということを認識すべきです。
重要なのは、お金の額面ではなく、価値。
元本保証で額面が減っていなくても実質的に価値が目減りし、買えるモノが減ってしまうことは避けるべき。
額面を減らさないようにするだけでなく、インフレによってお金の実質的価値を目減りさせないようにするという考え方も重要です。
資産運用には資産を増やすという側面だけでなく、資産の価値を守るという側面もあり、資産の価値を目減りさせないためにも資産運用は必要になります。
おすすめの理由②:元本割れのリスクなし
個人向け国債は、購入してから1年が経過すれば途中換金も可能。
途中換金時は、 直前2回分の利子がペナルティーとして差し引かれます。
直前2回分の利子を差し引かれても、既に受け取った直近2回分の利子を返すような形になるので、元本割れすることはありません。
一方、一般的な国債は途中で換金する場合、売却額が額面を割り込む可能性があります。
なお、変動10年の場合、金利上昇中の解約だと「最も利息が高い2回分」を失うことになる点には注意が必要です。
個人向け国債(変動10年)のおすすめポイントをまとめると、インフレへの対応が可能な点と、途中換金時にも元本割れしないという2点。
つまり、個人向け国債(変動10年)は、元本割れリスクを避けながら、インフレへの備えもできる金融商品です。
3.個人向け国債を購入する際の2つの注意点
元本割れリスクを避けたい方には、個人向け国債はおすすめなのですが、購入する際には下記2点に注意する必要があります。
注意点①:購入後1年間は換金できない
1年経過すれば途中換金も可能ですが、1年間は換金できない期間がある点には注意が必要です。
個人向け国債は、一般の国債と違って市場で売買ができないので、1年間は原則、換金することはできません。
よって、最低でも1年間は絶対に使うことのない資金で購入する必要があります。
注意点②:現在のような低金利では運用成果は低い
実は、私も個人向け国債(変動10年)を50万円ほど所有しています。
しかし、その利金は微々たるもの。
半年に1回、利金を受け取りますが、その額は、なんと425円(税引き前)です。
更にその微々たる利金には源泉徴収で20.315%の税金がかかります。つまり、実際に受け取れる利金は税引き後で339円・・・。
受け取ったか受け取ってないか分からないくらいの利金で、全く喜びはありません。
個人向け国債は、どんなに市中金利が下がっても年利0.05%は最低保証されるので、金利が0.001%の普通預金に預けるよりはマシといったレベル。
個人向け国債を購入する資金で元本割れリスクのある投資信託などを購入していれば、大きな収益を上げられる可能性があるかもしれませんが、その可能性を失ってしまうことになります。
なお、令和5年11月15日発行の変動10年の適用利率は年率0.51%(税引前)。
日本銀行(日銀)が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)を修正しているので適用利率が上がってはいますが、物価上昇に全く追い付いていない状態です。
インフレ対応が可能といっても日銀が金融緩和を完全に終了しない限り、物価上昇率に対して適用利率が大きく劣後する状態が続くでしょう。
4.購入を避けるべき金融商品とは?
元本割れリスクを嫌う方が加入を検討しがちな金融商品の中で、現状、おすすめできないものについても解説します。
それは、円建ての定額保険。
例えば、養老保険、終身保険、個人年金保険などの積立型の生命保険です。
最近、個人年金保険への加入について相談されることが多いのですが、下記記事で解説した通り、積極的におすすめできる商品ではありません。
現在のような低金利の状況で、金利を固定するような商品に資金を入れるのはリスクがあります。
なぜなら、金利が上昇する局面になった際に、金利上昇の恩恵を受けることができないから。
定額の保険は、契約時にいつ解約するかで受け取れる解約返戻金が決まっています。
変額保険のように解約返戻金が変動することはないので、リスクがないようにも思えます。
しかし、途中解約時には元本割れのリスクがあることを忘れてはいけません。
払い込んだ保険料を解約返戻金が上回るまで解約を待たないと、支払った保険料よりも受け取る解約返戻金が少ない元本割れが発生してしまいます。
よって、金利上昇局面で他の有利な金融商品に乗り換えたくても、生命保険は簡単に解約できないというデメリットがあります。
現在は極端な金利上昇局面ではありませんが、超低金利状態で、金利が下がるよりも上がる可能性の方が高い状態。
そのような時に長期間金利を固定するような定額の生命保険にお金を入れるのは得策ではありません。
また、個人向け国債でおすすめなのは「変動10年」であって、「固定3年」や「固定5年」は定額の生命保険と同じで現在の低い金利を固定することになるため、おすすめできません。
まとめ
個人向け国債(変動10年)をおすすめする一番の理由はインフレへの備えができる点。
安全性の高さでは普通預金や定期預金も同じですが、インフレ対応でいうと個人向け国債の方が勝っています。
なお、個人向け国債(変動10年)は、全ての方に積極的におすすめできる状況ではありません。
現状の金利情勢では、受け取れる金利は微々たるものであることに注意が必要です。