持ち家と賃貸のどちらがお得かを議論する際によく聞くフレーズに「賃貸は家賃がもったいない」や「住宅ローンを返済すれば持ち家は資産になる」というものがありますが、本当でしょうか?
家を買った人からも「賃貸は家賃がもったいない」や「住宅ローンを返済すれば持ち家は資産になる」というフレーズをよく聞きます。
「賃貸は家賃がもったいない」や「住宅ローンを返済すれば持ち家は資産」という考え方を完全に信じているかたも多いでしょう。
しかし、上記の考え方は販売者側に都合の良いものである可能性があります。
そこで今回は、下記のポイントについて考えてみたいと思います。これから家を購入しようとしている方は参考にしてください。
- 賃貸と持ち家はどっちがお得?
- 持ち家は資産?負債?
賃貸と持ち家はどっちがお得?|家は買うべきか?
持ち家と賃貸のどちらが得かについては切り口を変えれば、どちらにもメリットとデメリットがあり、価値観の関わる問題でもあるので結論の出る話ではありません。
賃貸と持ち家のどちらが得かという論争は、前提条件によりケースバイケースで損得は異なります。
家を持つことによる心の豊かさなど精神的な面については金銭に換算できないので、家を買うことについての損得は一概には判断できません。
営業トークに騙されていないか?
ただし、「賃貸は家賃を払うのがもったいない」や「持ち家はローンの支払いが終われば資産になる」という常識は販売者側のポジショントークの可能性がある事に気を付けるべき。
上記ような販売者側に都合の良い常識を信じてしまうと後で痛い目に遭う可能性があります。
家を買えば、将来的に貸すこともできるし売ってお金にすることもできるという方がいますが、今後の日本では「借り手もいないし、買い手もいない」状態になってしまう可能性も。
持ち家を資産だと思って買ったら実は負債だった、となりかねません。
持ち家は資産?負債?
家賃を払い続けて賃貸に住むよりも、ローンを支払い終われば自分のものになる持ち家の方が得なような気がします。
しかし、本当に持ち家は資産になるのでしょうか?
持ち家が資産になるのかを考えるうえで参考になる動画あったのでご紹介します。
動画の中でりょうさんは「家を買う時のポイント」として下記の3点を挙げています。
- 新築を買わない
- 身の丈に合った物件を買う
- 引っ越す前提で投資物件として選ぶ
新築を買わない
新築の住宅価格には宣伝広告費などが上乗せされていることや入居した瞬間から中古になることもあり、価格が一気に2割程度下がると言われています。
また、建物の価値は20年~30年後にはゼロに。
動画の中では新築は贅沢品とされていて、中古住宅を買う方が合理的である事は間違いないでしょう。
身の丈に合った物件を買う
銀行の貸してくれる額がローンの適性額というわけではありません。
銀行やハウスメーカーも商売。なるべく大きな額の取引をした方が銀行やハウスメーカーの儲けが大きくなるということは紛れもない事実。
借入限度額は年収の8倍までと言われていますが、それは銀行の貸せる額。
動画の中では、年収500万の方であれば月の返済額は8.3万円程度が適正としています。
35年ローン・金利0.6%であれば、借入額は3150万円となります。
引っ越す前提で投資物件として選ぶ
迷わず持ち家を買えと主張するりょうさんが家を買う際に最も重視すべきポイントとしているのが投資物件として選ぶという点。
投資物件として選ぶということは、リセールバリューが高い物件を探すということになります。
リセールバリューが高い物件であれば、必要な時に「貸せるし、売れる」ということになります。
しかし、一般人が動画の中で語られているようなシビアな投資家目線で資産価値の高い物件を探すことなどできるのでしょうか?
野村総合研究所によると、2013年の総住宅数は6,062万9千戸、空き家数は819万6千戸、空き家率は13.5%。
既存住宅の除却や住宅用途以外への有効活用が進まなければ、2033年には総住宅数7,106万7千戸、空き家数2,146万6千戸、空き家率30.2%に上昇するとのこと。
人口減少が進み、空き家が増加している日本ではほとんどのケースで持ち家の資産価値は下がると思った方が無難。
資産価値が上がるのは、都心で駅近の物件くらいでしょう。
日本の平均年収500万円程度の方が身の丈に合った物件を買うという意味では予算は3,000万円程度。
この価格帯で資産価値の上がる物件を探すのは至難の業。
不動産投資をしている方であれば低予算でも資産価値の高い物件を選べるかもしれませんが、自宅を買うだけの一般人が投資家目線で物件を選ぶ事はほぼ不可能。
そもそも、資産価値の上がる優良物件は不動産投資のプロが押さえ、一般人に優良物件が回ってくることはないでしょう。
今後の日本を考えると「ローンを払い終えたら持ち家は資産になる」という考え方は幻想で、ローンを払い終わって残るのは「貸せないし、売れない」負債と考えるくらいがちょうどいいかもしれません。
これから日本で家を買うのであれば、家は資産ではなく負債になる可能性が高いということを受け入れるか、資産価値の高い物件を選び抜くという強い意志が必要でしょう。
因みに私はどちらでもないので、賃貸に住み続ける予定です。
返済期間35年の住宅ローンは危険?
また、現在の低金利の影響で住宅ローンが借りやすくなっている中、無理な住宅ローンの危険性についても考える必要があります。
家を買う際に頭金なし、35年のフルローンという方も少なくありません。
35年間も借金を返済するとなると今の仕事が継続するのか、今の収入が維持できるのか、など不確実な部分が多々あります。
ローンを返せなくなれば途中で売ればいいという方もいますが、フルローンを組んでいる方は債務超過(家の資産価値<ローン残高)の状態になっている可能性も。
債務超過(オーバーローン)の場合、家を売ってもローンだけは残るという悲惨な状況に陥る可能性があり、最悪、自己破産ということになります。
頭金なしのフルローン・35年返済だと、このオーバーローンの状態が解消されるまでに20年~30年かかることに。
35年ローンを頭金なしで借りるなどということは、経済が右肩上がりの時の考え方。
昭和型の考え方といっていいでしょう。
右肩下がりの可能性のある昨今の経済情勢を考慮すると、昭和型の考え方でローンを組むのは非常に危険と言わざるを得ません。
また、家を買うと固定資産税や修繕積立金、管理費、火災保険料などの賃貸ではかからない経費がかかります。
住宅ローンの返済が終わっても月2~5万円程度のランニングコストはかか点にも注意が必要です。
まとめ
家を買うべきかどうかは価値観も絡む問題なので、一概にどちらが正解かは言えないというのが結論。
賃貸と持ち家のどちらがお得かという論争については、損得だけでなく、主観の絡む問題なので結論は出せません。
しかし、持ち家が資産になるのかという点については、ほとんどのケースで資産にはならず負債になる可能性が高いということが言えます。
最も避けるべきなのは、営業トークに騙されてマイホームが資産になると勘違いし、ムリな住宅ローンを組む事。
持ち家が資産になると考えて、必死に35年間かけてローンを返してみたら、手元に残ったのは負動産だったということが、今後の日本では起こり得ます。
また、無理をして不動産を買うと資産運用にお金が回らなくなり、老後資金の準備がほとんどできないというケースも考えられるので、注意が必要です。